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スタッフブログ

認知症治療

ガッテン!「認知症の人が劇的変化!”アイコンタクト”パワー全開SP」2018年10月27日 

10/24(水)、NHK『ガッテン!』で当院でも取り組んでいるユマニチュードが取り上げられていました。

ユマニチュードとは認知症の方に対するケアの技法です。

ユマニチュードは4つの柱に、「見る、話す、触れる、立つ」があり、これらを使って認知症の方をケアするのですが、番組では主に「見る」ことに焦点を当てていました。

番組では、ユマニチュードによって劇的に変化した患者さんが取り上げられており、スタジオでは驚きの声が上がっていました。

京都大学の研究で、ユマニチュードの創設者である、イヴ・ジネストさんの視線を解析するというのも出ていましたが、ジネストさんは、あらゆる状況でも視線が患者さんの目をとらえていた点が印象的でした。

こういった番組を通して、ユマニチュードが広く一般の方にも知られることはとても良いことだと思います。

ちなみに先日、寝たきりで暴力的な患者さんにユマニチュードを使って接したのですが、顔を近づけて診察しようとしたら、マスクを引きちぎられ、胸を引っかかれました。自分はまだまだ、研鑽が必要なようです。

(投稿者:斉藤 揚三)

レビー小体型認知症2018年09月10日 

厚生労働省の推計では、2025年に認知症の人の数は700万人に増え、高齢者の5人に1人は認知症になると言われています。そういった時代においては、どの科の医師であっても、認知症に対する理解が必要です。

今回は、日本の認知症占有率第2位(約20%)を占める、レビー小体型認知症についてまとめてみました。

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)は意識障害系の認知症で、記憶障害より意識レベル低下による幻視や妄想、せん妄が問題化しやすくなります。また、パーキンソニズムによる転倒、誤嚥で介護が難しくなります。

診察時の様子

パーキンソン病のように足を閉じての小刻みではなく、ゆっくり緩慢に腕を振らずに歩く。
振戦はあまりみらない。
座位で体幹が左右に傾斜する。
非常に暗く硬い顔。声が小さい。弱々しい。
性格はまじめで誠実。

問診

生々しい幻視が特徴的!60~70%の患者にみられる。幻視は人、子供、動物が多い。

DLBは抗精神病薬、コリンエステラーゼ阻害薬、パーキンソン病治療薬、抗ヒスタミン薬に対して薬剤過敏性が強く出るので、これらの薬で副作用が強く出たことがないか聞く。具体的には、「風邪薬のせいで昼間から寝てしまった、睡眠薬が効きすぎて起きられなかった、パーキンソン病治療薬のせいで食べられなくなった、アリセプトで歩行できなくなった」などがなかったか。

夜間の寝言(=REM睡眠行動異常)、日中の眠気はないか。

原因不明の意識消失発作がある。救急搬送されたが、問題なく帰されたというエピソードがあるか。

嚥下障害があるか。食事中にムセるか。

認知機能が毎日変動していないか。

診察

肘関節に歯車様筋固縮あり(=ドパミン不足を示す)。

改訂長谷川式簡易知能評価スケールにおいて、計算や数字の逆唱が不得意で遅延再生が得意。

治療

リバスタッチパッチ、ドパコール、抑肝散がDLB治療の3種の神器。DLBでは脳内でアセチルコリンとドパミンが低下しているため、それを少量のリバスタッチパッチとドパコールで補い、抑肝散で幻視を消す(ドパコールは後発品の薬剤だが、50㎎錠があるので少量投与に向いている)。

処方例:

リバスタッチパッチ4.5mg 1日1枚
ドパコール50mg 2錠 分2 朝夕食後
抑肝散5g 分2 朝夕食前
(フェルガード100M 2包 朝夕食後 余裕があれば服用を勧める)

DLBの治療において最も重要なことは、アリセプトを規定量で処方しないこと。
DLBの場合、薬剤過敏性があることから、アリセプトを処方するとしたら、かなり少ない量を処方しないと容易に症状が悪化します(2016年6月1日に少量投与が認められました)。DLBに対して、添付文書どおりにアリセプトを処方すると効きすぎて、歩けなくなったり、食事が摂れなくなることもあります。嚥下機能が低下することで誤嚥し肺炎を起こせば、死に至ることすらあります。前医でDLBに対してアリセプトが処方されていた場合、まずは中止するところから始めます。抗精神病薬も同様に、使うとしたら少量を注意深く処方します。

参考資料:コウノメソッド流臨床認知症学(日本医事新報社)

(投稿者:斉藤 揚三)

抑肝散の介護者同服2018年01月15日 

抑肝散はもともと小児の夜泣きやひきつけなどに使われていましたが、その応用で、最近は認知症の高齢者のBPSDに対してよく使われるようになりました。

抑肝散には「母子同服」という飲ませ方があり、これは子供が夜泣きをしているときには、母親も同様にイライラしているものであり(母親がイライラしているので子供が夜泣きをしているという可能性もあり)、文字通り母と子が一緒に飲むという飲ませ方です。そうすることで、子供は眠り、母親もイライラが治まるという双方に効果が期待できます。子供が内服できないくらい小さいときは、母親が内服し、母乳を与えることで子供にも飲ませることができます。

さらに抑肝散の「母子同服」の応用として、「介護者同服」という飲ませ方があります。

これは認知症の高齢者のBPSDがひどいときには、介護者も同様に精神的に不安定になっているものです。そこで抑肝散を患者さんと一緒に介護者にも飲んでもらうと、双方の心が落ち着くというものです。

診療においては、どうしても認知症の患者さんだけに注目してしまいがちですが、介護者に対する気遣いも大事だと思っています。

(投稿者:斉藤 揚三)

クローズアップ現代+「認知症でしばられる!?~急増・病院での身体拘束~」2018年01月13日 

1月11日にNHKで放送された、クローズアップ現代+「認知症でしばられる!?~急増・病院での身体拘束~」を興味深く見ました。

精神科病院における身体拘束はここ10年で倍増していて、現在、1日あたり1万件を超えているとのことです。その背景には精神科病院に入院する認知症の人が増えてきているからとのことです。

入院で身体拘束される理由として考えられるのは、入院すると環境の変化についていけずにせん妄を発症しやすいこと、また病院では患者さんの安全を第一に考えられており転倒や点滴抜去などを起こさせないようにするためだと思われます。

番組では、身体拘束によって廃用がすすみ介護度が大きく下がった例、長期間の拘束により肺塞栓を発症し死亡した例などがでていました。

一方、都立松沢病院で6年間で身体拘束を9割減らした取り組みが紹介されました。院長は、「我々は人の精神をケアするプロなんだから、力で患者さんを制圧するような治療手段を持たない方がいい。患者さんを人としてきちんと対応するということ。」と述べていましたが、まさにその通りだと思いました。具体的な対策としては、

・スタッフの意識改革…拘束された患者へのアンケートをみせ、拘束が患者の心を深く傷つけていることに向き合う。

・拘束の原因を解決する…経鼻経管栄養を外し経口摂取にする。転倒リスク高い人は部屋中にクッションをしきつめるなど。

・家族に拘束しない同意書をとる…怪我をするリスクに同意してもらう。怪我をするリスクはあっても患者の尊厳は守られる。

ゲスト出演していた、山梨学院大学教授の竹端寛先生は、「本人が言うと精神症状だと思われさらに拘束される、家族が言うと退院させられるということで、身体拘束に異議をとなえづらい雰囲気ができている。そのため、第三者による訪問や、情報公開、ビデオに録るなどのが可視化が必要。」「認知症が増えてきているが社会の中で支える仕組みが不十分なため精神科病院に入院することが多くなっている。そもそも、認知症になっても精神科病院に入らなくてもいいような仕組みを作ることが大切。」と述べていました。この意見もその通りだと思います。

これからは、精神科に入院しないで自宅や地域で暮らし続けられるように、医療者が自宅などを訪問して症状の悪化を防ぎ地域や社会で支えることが大事で、これはまさに訪問診療そのものです。

身体拘束しないことで転倒して怪我をしてもいいじゃないか、点滴を抜いてしまうなら点滴をしなくてもいいじゃないかという社会の方が健全だと思います。転倒して怪我をしたら病院を責めるというような社会では、拘束はなくならないものと思います。

(投稿者:斉藤 揚三)

認知症、その薬をやめなさい2018年01月05日 

 『認知症、その薬をやめなさい 高瀬義昌 廣済堂出版』

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筆者は東京都大田区で在宅医療中心のクリニックを開いており、約300人の患者さんの訪問診療を行っています。その中で認知症の患者さんが9割以上を占めるそうです。

初回の訪問診療で着手するのが薬の整理で、薬を減らすだけで認知症の周辺症状が劇的に改善した実例が載っています。

抗認知症薬が悪いわけではなく、大切なのはさじ加減で、適量を見極めるのがとても難しいです。そのため、在宅医療のメリットを存分に生かし、訪問看護師、介護スタッフ、家族と密に連絡を取り、抗認知症薬の作用と副作用を見極めているようです。

筆者は、認知症の治療は薬が1.5割、ケアが8.5割と考えています。そのため、認知症の治療で成果を上げるためには、薬による治療だけではなく、患者さんと家族の生活全般をサポートする必要があると述べています。

薬でどうにかできるのは1.5割ですので、薬だけでどうにかしようとするのは間違っています。さらに、薬が増えれば増えるほど薬剤有害事象が出現しやすくなります。

認知症患者さんは通院が難しい方が多いですし、在宅医療では生活環境も見ることができ、医療介護連携によって副作用がでていないかも細かく見ることができるので、認知症治療と在宅医療は相性がいいと思います。

当院でも認知症治療に力をいれて取り組んでいますので、認知症でお困りの方がいましたらお気軽にご相談いただければと思います。

(投稿者:斉藤 揚三)

認知症にプレタール2017年11月06日 

シロスタゾール(プレタール®)は抗血小板薬で、血栓をできにくくし、脳梗塞の再発を予防する薬剤です。

プレタールが他の抗血小板薬と違う点は、血管壁に作用し、血管を拡張させ、脳血流を増加させる作用があります(これによってアミロイドβの排出効果があるとも言われています)。

さらに、脳神経細胞内にあるCREB(cAMP応答配列結合蛋白)のリン酸化を促進させ、神経伝達を促進させ、認知機能を改善させる可能性があるといわれています。

当院でも認知機能の改善も期待してプレタールを処方しますが、「挨拶をしない方が挨拶するようになった」り、「帰宅願望が強い方が、帰ると言わなくなった」りと、効果を実感しています。

コウノメソッドでは先発でないと効果が落ちるとのことなので、先発で処方しています。

プレタールOD錠50mg 2錠 分2(通常の半分の量)で処方することが多いです。

さらに、誤嚥性肺炎の予防効果も期待できます。

しかし、いろいろな副作用があるため、処方には注意が必要です。

一番多い副作用には、頻脈があります。脈拍数が100を超えるようなら中止を検討します。ついで、頭痛やほてり感もあります。

また、心臓の仕事量を増やすことで、狭心症、心不全、不整脈を悪化させることがあるため、循環器系のリスクが高い方には使えません。

下肢の浮腫や胃潰瘍にも注意が必要ですし、食欲が低下する方もいるので、食欲が低下している場合には本剤の副作用を疑う必要があります。

(投稿者:斉藤 揚三)

デパス依存について2017年09月08日 

デパスはベンゾジアゼピン系抗不安薬です。

精神科の先生が言うには、デパスは依存を作る最悪な薬なのだそうです。

デパスは短時間型で半減期が6時間と短いです。
よく効いてすぐに効果が切れるために依存を作ってしまいます。

そのため、デパス依存が社会問題にもなり、向精神薬に指定されることになり、2016年11月1日から30日間の処方制限がつけられるようになりました。

これまでは抗不安薬としてだけではなく、催眠作用があるため眠剤として、また筋弛緩作用があるので肩こりなどにも処方されてきました。

しかし依存の問題に加えて、高齢者には特に問題で、筋弛緩作用が強いので転倒や誤嚥のリスクが上がります。

また、当ブログでも取り上げていますが、ベンゾジアゼピン系なので、認知機能の低下、せん妄のリスクも上げてしまいます。

依存を防ぐ一番の方法はデパスを新規で処方しないことだと考えています。

(投稿者:斉藤 揚三)

せん妄の薬物治療2017年09月06日 

せん妄の予防・治療として薬物治療は勧められないようですが、そうも言ってられないのが現状です。

せん妄に対する薬物治療で最も大事なことはベンゾジアゼピン系を使わないことです

というのもベンゾジアゼピン系は意識レベルを低下させる薬物なので、せん妄を誘発させたり、せん妄をより悪化させてしまうからです。
すでにベンゾジアゼピン系を内服している場合は止めます。

ガスターも止めます。

また、抗ヒスタミン薬(アタラックスPなど)も抗コリン作用によりせん妄を誘発させるため使用してはいけません。

せん妄を起こしそうな患者さんに眠剤を処方する場合には、
デジレル、レスリン25mg
抑肝散1包
ベルソムラ15mg
セロクエル25mg(糖尿病では禁忌)
などにしています。

現にせん妄を起こしている場合には、
①リスパダール内用液0.5ml口腔内投与(錐体外路症状に注意)
②セレネース5mgかコントミン10mg 筋注
が良いと思われます。

(投稿者:斉藤 揚三)

せん妄の非薬物的対応2017年09月04日 

勤務医の時は整形外科の病棟をみていましたが、術後にせん妄になる患者さんが多く、頭を悩ませていました。
精神科に紹介できればよかったのですが、なかなかそういった環境にいることがなかったため、自分で指示を出すしかありませんでした(精神科の先生としては、せん妄は身体疾患で精神疾患ではないとのことで、あまり関わりたくないのが現状のようですが)。

現在、認知症治療も勉強しているため、今だったらこのようにするかなということを書いていきたいと思います。

せん妄治療の第一選択は非薬物的治療のようです。

「トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 仲田和正 CBR」より抜粋します。

・複数薬剤(ポリファーマシー)でせん妄の相対危険率は2.9倍となる。
→できるだけ減薬する。

・向精神薬を使うと4.5倍。睡眠薬を使うと4.5倍。
→できるだけ向精神薬、睡眠薬は使わない。

・身体拘束をすると3.2~4.4倍。
→なるべく身体拘束をしない。

・膀胱留置カテを入れると2.4倍。
→膀胱留置カテは適応を考える。間欠導尿で対応する。入れても早期に抜去する。

・BUN高値があると5.1倍。
→脱水を改善させる。

・血糖、Na、K異常で3.4倍。
→電解質バランスの補正。

・視力障害があると2.1~3.5倍、難聴があると1.3倍。
→メガネ、補聴器、義歯をつけてもらう。

・お気に入りのもの(家族写真、毛布、数珠、お気に入りの本、音楽など)を持ってきてもらう。

・せん妄中は家族がシフトを組んで24時間一緒にいてもらう。

・患者さんには、静かに落ち着いた声で今どこに何のためいるのか繰り返して説明する。

・指示を出すときは一度に一つ。

・マッサージは落ち着かせるのに有効なこともある。

・疼痛コントロールや早期リハビリも重要。

次回はせん妄の薬物治療について書いていきます。

(投稿者:斉藤 揚三)

運動量を増やしても認知症予防に疑問2017年07月29日 

積極的に運動をしている人の認知症リスクが低いことを報告した研究は複数あったが、それらは逆の因果関係を見ていた可能性が指摘された。仏INSERMのSeverine Sabia氏らは、35~55歳の人々を平均27年追跡して、中年期の運動量とその後の認知機能の低下や認知症発症リスクに有意な関係は見られなかったと報告した。しかし認知症患者は、最長で診断の9年前から運動量の減少が起こっていた。結果は、BMJ誌電子版に2017年6月22日に掲載された。

 現在のところ認知症の治癒は叶わないため、予防や進行を遅らせるための介入の標的になる危険因子の探索が、精力的に行われている。観察研究を対象としたメタアナリシスでは、望ましい量の運動が認知機能の低下と認知症発症のリスクを低減することが示唆されている。しかし、運動量を増やす介入研究では、長期的な認知症予防効果は見られなかったものが多い。

 そこで著者らは、認知症患者は症状発現前から運動量が減少する特徴がある、という仮説を設定し、それらについて検証するために、ロンドンにオフィスがある英国公務員が参加して現在も継続中のコホート研究「Whitehall II」から、約30年にわたるデータを調べることとした。それらを利用して、運動量とその後の認知機能の変化や認知症発症率の関係を調べ、次に認知症と診断された患者の診断前28年間の運動量を、認知症を発症しなかった人と比較することにした。

 Whitehall IIは1985~88年に35~55歳だった参加者を募集し、応募した1万308人(男性6895人、女性3413人)の健康状態を追跡している。参加者は5年ごとに受診して診察を受け、直近の評価は2012~13年に実施していた。

 参加者の運動量の評価は質問票を用いて行い、28年超の間に7回実施した。家事や草むしりといった軽度の作業から、ランニングやスカッシュなどのスポーツまで様々な強度の運動を、どのくらいの頻度でどのくらいの時間実施したかを回答してもらい、運動量を推定した。MET(Metabolic Equivalent)換算で3未満は軽強度の運動とし、3以上は中~高強度として、それらの合計を総運動量とした。中~高強度運動を週に2.5時間以上行っていた場合に「望ましい運動量」と判断した。

 認知機能の評価は1997年(参加者の年齢は45~69歳)から2013年(60~84歳)までの間に最大4回行った。記憶力は20個の単語を2秒間隔で提示された後、2分間でできるだけ多くの単語を思い出す方法で評価した。実行能力はAlice Heim4-I テストにより評価した。音素流暢性は「sから始まる単語を書く」といった方法で、意味流暢性は「できるだけ多くの動物の名前を書く」といった方法で評価した。それらの生スコアを平均値0、標準偏差1の分布にzスコア化して、さらにそれらの合計を再標準化して認知機能の全般スコアとした。

 認知症の発症者は、2015年3月31日までのNational Health Surviceの医療記録や死亡記録を調べて同定した。共変数として、社会人口学的要因(年齢、性別、人種、配偶者の有無、就労状態と年収、学歴など)、ライフスタイル要因(飲酒、喫煙、食習慣など)、併存疾患などに関する情報を得た。

 平均値で26.6年の追跡期間中に329人が認知症と診断されており、診断時の年齢は平均75.0歳(四分位範囲72.0~79.2歳)だった。運動量と認知機能の低下の関係は、1997~99年の1回目の認知機能評価を受けていた7424人を対象に行った。うち、3144人(42%)は4回の認知機能検査を完了しており、2168人(29%)は3回、1091人(15%)は2回、1021人(14%)は1回検査を受けていた。

 「望ましい運動量」を実施していた参加者としていない参加者を比べても、認知機能の全般スコアに有意な差はなかった。1997~99年から15年間で全般スコアは平均で0.61(95%信頼区間0.59-0.63)減少していたが、運動量とスコアの減少に有意な関係は見られなかった。

 1985~88年の運動量と2015年まで追跡した認知症患者の発症率の関係を調べたが、それらの間にも有意な関係は認められなかった。望ましい運動量を実施していた人をリファレンスにした、実施していない人のハザード比は1.00(95%信頼区間0.80-1.24)だった。

 認知症を発症した患者とそれ以外の参加者の間で、追跡期間中の1週間あたりの総運動時間、低強度の運動をした時間、中~高強度の運動をした時間を比較すると、診断の9年前から認知症患者の運動時間は減少し始め、認知症と診断されなかった人々との差は、それ以降有意になった。診断の9年前の、両群の中~高強度の運動時間の差は-0.39時間/週(P=0.05)で、診断時点ではその差は-1.03時間/週(P=0.005)に拡大していた。

 これらの結果から著者らは、望ましい運動量を行っている人でも認知機能を保護する効果はなかった。認知症患者では症状が明らかになる前から運動量が低下しているため、運動に認知症リスクを減らす効果があるように見えたことが示唆されたと結論している。

原題は「Physical activity, cognitive decline, and risk of dementia: 28 year follow-up of Whitehall II cohort study」

2017/7/18 日経メディカルより

これはおもしろい論文です。卵が先かニワトリが先かという議論と一緒ですね。
つまり、認知症になると運動しなくなるので、運動しない人が認知症になるようにみえるということです。
先日紹介した大崎市での研究とは相反する結果です。
運動で認知症が予防できると思いたいのですが・・・。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

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