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在宅医療専門
くりはら訪問クリニック

スタッフブログ

緩和医療

痛い在宅医2018年09月25日 

『痛い在宅医 長尾和宏 ブックマン社』

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今までの在宅医療の本と言えば、「住み慣れた我が家で穏やかな最期を迎える」といったような、在宅医療を賛美するような内容の本ばかりでしたが、本書は在宅医療の闇に触れた本と言えます。

この本に登場するのは、在宅医療を受けながら、末期がんの父親を自宅で看取ったある娘の話です。そして担当した在宅医の対応に様々な問題のあったケースだったのです。

その娘との対話を通して、在宅看取りとは、アドバンス・ケア・プランニングとは、鎮静とは、平穏死とはなど、様々なことを考察し、問題提起をしています。

どういった症例だったのかは本書を読んでいただきたいのですが、我々在宅医は、この症例を反面教師として、本書のタイトルのような「痛い在宅医」にならないように、自らの診療を見つめなおさなければならないと思いました。その意味で、この本は、これから在宅医療を申し込もうとしている患者さんやご家族だけでなく、在宅医こそ読むべき本だと思います。

筆者の長尾先生は、本の最後で、「この症例の在宅医の対応は確かに悪かったが、それでも平穏死を迎えられたのではないか」と考察しています。この言葉で、残された家族が少しでも救われるのではないかと思いましたし、長尾先生の優しさが感じられました。

(投稿者:斉藤 揚三)

がん治療における緩和ケアの重要性2018年07月20日 

栗原市医師会学術講演会 2018.7.19

「がん治療における緩和ケアの重要性」

東北大学大学院医学系研究科 緩和医療学分野 教授 井上 彰 先生

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講演では、早期に緩和ケアを導入するメリット、過剰輸液の問題、基本を押さえることの大切さなどを教えていただきました。また、在宅医療についても取り上げられました。「在宅医療の医療機関によっては、緩和ケア病棟と同レベルの高度な緩和ケアも可能」とのお話もあり、当院もさらに高度な緩和医療を提供できるように精進してしていきたいと思います。

講演の内容を箇条書きにしてまとめてみました。

・2007年に施行された「がん対策基本法」が2016年に改定され、従来のがん治療3本柱(手術、放射線療法、化学療法)と同列に緩和ケアが位置づけられた。緩和ケアはがんをたたくわけではないが患者を楽にする立派な治療。

・2010年に発表された進行肺がん患者に対する臨床研究によれば、早期に緩和ケアをうけた群では標準治療群よりもQOLが高く維持され、抑うつの発症頻度は明らかに少なかった。さらに驚くべきことに、緩和ケア群の生存期間が延びた(両群とも抗がん剤の量に差はなかったが、緩和ケア群では終末期に抗がん剤治療をうけなかった=適切な時期に適切な治療がうけられた)。

・常に重要なのは症状緩和とコーピング支援(精神的サポート)。

・適切な治療選択とACP(アドバンスケアプランニング、家族を含めて患者と先々の話をする)が患者のQOL維持に役立つ。

・日本での遺族調査では、2/3が亡くなる1か月前まで抗がん剤治療を受けていたと答えている=日本でも不必要に長く抗がん剤が使われているケースが多いと推測できる。

・10年前まではどんな標準治療をしても肺がんの余命は1年前後だったが、最近は分子標的薬がでてきて2-3年、さらに免疫療法がでてきて3-4年になってきている。新しい治療により劇的な効果が出る方もいるが、いずれ再増悪することは伝えなければならない。

・固形がんは抗がん剤では治らない(病勢を抑えるだけ)と話していても、患者にアンケートをとると約半分が抗がん剤で治ると思っている。

・抗がん剤だけを引っ張りすぎて緩和ケアの話が先送りになると、患者は見捨てられ感を味わうことになる。治療中の段階から、抗がん剤治療の先にあるものを適切に伝えるのも、がん治療医の役目。

・緩和ケアを受けるタイミング:予後6-12か月の段階。予後1年未満と診断されてから1か月以内。初回または2次治療がうまくいかない時。

・基本的な緩和ケアで8割の問題は解決する。

・NSAIDsやアセトアミノフェンを軽視しない(オピオイドだけ処方されているケースがある)。

・オピオイドの増量ペースが速いときは現治療の妥当性を疑う。

・フェンタニルをつかっているから自動的にレスキューはアブストラル舌下錠(1日4回の制限がある)とはしない。

・点滴を少なくする。
呼吸困難でゼコゼコしているひとに点滴は天敵!緩和ケア病棟にくる方の半分以上は輸液が多すぎる。残り1か月では点滴はいらない。500mlでも多いことがある。東北大学病院緩和医療科では皮下輸液をしている。当然高カロリー輸液はいらない。口の渇きは点滴で良くならないことは証明されている。口の渇きには口腔ケアが一番良い。終末期の脱水は(適切な口腔ケアがなされていれば)苦しくない。どんどんドライにするほうが患者さんにとっては楽。点滴が多くなるのは家族の希望という側面が強いが、家族にきちんと説明すれば理解してくれる。

・ひどい便秘がせん妄の因子になることもある。

・予後が週単位=PPI>6.5になったら
①輸液を極力しぼる(1000ml/日以下)
②薬は最低限にする
③侵襲的な検査や処置はしない

・ほとんどのことは在宅でできる。在宅を希望する患者・家族に「この状態では帰れない」は禁句。

在宅緩和ケアのメリット
・住み慣れた環境で精神的に落ち着く
・生活のリズム(食事、睡眠)が患者中心
・家族にとっても生と死を考える良い機会

在宅緩和ケアのデメリット(多くは認識不足から懸念される)
・急変時に対応できない
 →終末期の急変は慌てることなのか?
・必要な検査、治療が受けられない
 →そもそも終末期に必要なものは僅か
・子供に悪影響を及ぼす
 →死から遠ざける方がよほど死生観を歪める
・人手がない
 →その通りかも(まずは介護サービスをフル活用するべし)

・臨床経験年数と緩和ケアの知識は優位に逆相関がみられる=緩和ケアに関しては若い医師が変えていかなければならない!

・東北大学病院では、STAS-J(苦痛のスクリーニング)を全がん患者に週1回は看護師がスクリーニングすることになっており、3以上であれば緩和医療科に連絡が来るようなシステムを作っている。攻めの緩和ケアを実践している。

(投稿者:斉藤 揚三)

がん患者さんに対する頻回訪問2018年07月02日 

看護師による系統的な身体症状のモニタリングが倦怠感を緩和することを示した研究があります。

Systematic monitoring and treatment of physical symptoms to alleviate fatigue in patients with advanced cancer: a randomized controlled trial. J Clin Oncol. 2013;31:71623.

倦怠感のある152名の進行がん患者を、看護師による定期的なモニタリングを受ける群と対照群に分けて倦怠感が改善するかどうかの研究。

看護師は身体症状だけに対応し倦怠感そのものには焦点を当てなかったが、看護師によるモニタリグを受けた群では、対照群に対して有意に倦怠感が改善していた。

『緩和治療薬の考え方、使い方 森田達也 中外医学社』より抜粋

この研究では看護師によるモニタリングでしたが、看護師に限らず、あらゆる職種でも同じ結果が出るのではないかと考えています。

この研究を応用すれば、末期がん患者さんには、医師でも看護師でも頻回に訪問したほうが、倦怠感が緩和される可能性があるということだと思います。さらに、医師、看護師に限らず、ヘルパー、訪問入浴、薬剤師、リハビリなどあらゆる職種の人が介入し、「調子はどうですか」と声を掛けるだけでも違うと思います。

また、この研究では倦怠感に関しての調査ですが、もしかすると頻回訪問の方が生命予後も変わってくるかもしれない?とも考えながら診療に当たっています。

(投稿者:斉藤 揚三)

がんと命の道しるべ 余命宣告の向こう側2018年06月15日 

『がんと命の道しるべ 余命宣告の向こう側 新城拓也 日本評論社』

無題

新城先生のご著書はどれも、訪問診療医がどのように生きていけばよいのかの指針を与えてくれます。また、文章から、患者さんに真摯に向き合っている姿勢が伝わってきます。

この本も、ところどころにハッとさせられる文章がちりばめられています。私が気になった文章を抜粋してみます。

p23 健康で力のある私たち医療者は、時に大きな力で患者の苦悩を解決しようとしてしまう。また、医療者は他人の人生、運命に不当な干渉をしてしまう傾向もある。しかし、本来患者の苦悩は、彼ら自身の大事な人生の課題だ。彼らの課題を奪うことなく、じっくりと苦悩することが出来る環境をさりげなく整えることが、医療者の役割なのだ。患者がしっかり課題に取り組むことができるように肉体の痛みをとり、清潔な環境と身なりを整え、そして静かな時間を用意する。決して、医療者自身が何か妙案で彼らの苦悩を解決しようとしてはいけない。

自分が癌にならなければ、患者さんの気持ちは本質的には分からないと思います。医療者が何かを教えるなどということは、おこがましいことであると考えています。医療者ができることは、薬などを利用して痛みなく穏やかに過ごしてもらえるようにすること。それもできない場合は、そばにいること、ぐらいだと思います。

p107 ホスピスでは、医師と看護師がきちんと時間を決めて集まり、そのカンファレンスの場で患者のことを話し合うようにした。それぞれが思いついた時に、ところ構わず口々に相談するのではなく、きちんと話し合う機会をもつようにした。…そして普段自分が感じている、カルテにも書かないようなことまで含めて話し合うようにした。私が患者に接している時に何を感じているのか、何をつらいと感じたのか。…自分の強すぎる責任感に、自分がつぶされそうになっていた。問題を周囲とシェアし、同僚に相談できるようになってから、徐々に自分を取り戻すことができた。

当院では、毎日カンファレンスをしています。また、医師2人で患者さんを診ており、気になる患者さんについては日常的に議論しています。普段は意識していませんでしたが、そのことが一人で抱えこまないことにつながり、ひいては良い方向に向かっているような気がします。

p110~112 長くホスピスで仕事を経験していた私は、どの患者とも「特別な一日」があるということを知っていた。…本当に些細な呼び出しから、苦痛をともないすぐに駆けつけなければならない事態まで状況はさまざまだ。とくかくその「特別な一日」を丁寧に対応し、患者や家族と過ごすと、その後の時間の流れ方が全く変わる。お互いの心がつながる特別な感覚にいつも心が震える。医者と患者という立場を超えた人間同士のたしかなつながりが、「特別な一日」には生まれるのだ。

たしかに、今ままで意識したことはありませんでしたが、亡くなった患者さんとの関係を振り返ってみると、「特別な一日」となった日があったと思います。その日を逃さないように感覚を研ぎ澄ましていきたいと思います。

p146 「住み慣れた自宅で最期まで過ごす」「家族に囲まれて最期の時を過ごす」といった美辞麗句は、やはり死のもつ本質的な真実を覆い隠そうとしているように思える。それでもなお、恐怖と怯えを乗り越えて、自宅で最期を迎えたいと望む患者と、最期を自宅で看取りたいという家族を、私は支え続けている。

「家で最期を迎えることは幸せである」というような単純なことでないことは確かです。家で最期を迎えるまでには、患者さんやご家族の様々な葛藤があるのです。

p186 先天性疾患を抱えた子どもの育児を通じて、私の仕事の仕方はずいぶん変わっていった。「治らない病気がある」という医療の限界を知り、診断・治療を柱とした医学では支えきれないことに意識的になった。ケアの重要性、とくに身体のケアの仕方を、医療者が患者・家族に教えていくことを大切に考えるようになった。患者の生活を支援するとはどういうことなのかを追求することになり、「治らない病気になった」患者にどう向き合い、彼らにどう説明すればよいのかを模索した。こんな心境の自分にとって、がん患者に対する治療としての緩和ケアは、一つの希望となった。治らない患者に何をすべきなのか、がんを告知するにはどうしたらよいのかは、自分自身の苦悩と同一平面上にあった。

新城先生がなぜ緩和ケア医になったのかについても書かれています。自身の経験から、ケアを担う人のケアをどうするのかまで考えていらしゃるようです。

p194 二四時間対応について…ゴルフ、ウインドサーフィン、スキー、ハングライダーは向かない趣味だと思う。反対に、庭・ベランダ園芸、盆栽、プラモデル、パソコン、ブログは二四時間対応に向いた良い趣味だ。

すぐに患者宅に駆けつけるには、遠出を必要としない、どちらかというとインドアな趣味をもつに限ります。とはいっても盆栽は今後もしないとは思いますが…。ちなみに、開業前にいろいろとアドバイスをもらいお世話になったI先生は、訪問診療をしながらサーフィンもするというすごい先生でした。

p196 自分のプライベートを犠牲にして駆けつけた時…相手に「ありがとう」と言ってもらうだけで、自分の生活の一部を差し出したことが十分に報われる。「ありがとう」と言われた途端、負担に感じていた心は晴れて、むしろ、自分が相手にとって大事な存在であること、自分の一挙一動が相手にとって光明になっていることをはっきりと感じる。つまり、相手を通じて自分の存在の意義をはっきりと意識するのだ。この実感が医師にとっては大きな力になる。

夜間の往診は大変ですが、このように考えれば頑張れます!

(投稿者:斉藤 揚三)

死亡直前の徴候について2018年06月11日 

患者さんが看取りの時期に入った時に、いつごろ亡くなりそうなのかを予測することは大事です。なぜなら、最期に合わせたい方がいる場合に合わせることが出来きますし、御家族の心の準備もあります。

診察時には、毎回バイタルサインを測定しますが、亡くなる当日までバイタルサインは正常の事が多いので、予測には使えません。

今までの経験による第6感に頼ることもありますが、予測するのはとても難しいです。

森田達也先生が、死亡直前に起こる徴候が出現してから死亡するまでの時間(平均値)を調べています。

死前喘鳴 57時間

下顎呼吸 7.6時間

チアノーゼ 5.1時間

橈骨動脈触知不可 2.6時間

これをまとめると、下顎呼吸・チアノーゼ・橈骨動脈触知不可がみられる場合には、その日の内に亡くなる可能性が高いということになります。

しかし、こういった徴候がみられないからと言って、「今日は大丈夫」と言うこともできません。というのも、死亡直前に必ずこういった徴候が現れるとも限りませんし、約2割の方は急な病態の変化で亡くなるからです。

(投稿者:斉藤 揚三)

がん患者さんの口内炎の治療について2018年04月11日 

がん患者さんは、抗がん剤や放射線治療などにより、口内炎(口腔粘膜炎)ができやすい状態になっています。

口内炎の治療はというと、一般的に軟膏や痛み止めなどになりますが、効果はいまひとつです。

今回は、当院が勧める2つの治療法を紹介します。

①プロマックD錠を口腔内で溶かしながら舌で口内炎にすり込む。
プロマックD錠は亜鉛含有胃潰瘍治療薬で、粘膜を修復させる作用を持ちます。口腔内も粘膜なのでプロマックD錠により直接修復させることを期待します。また、口内炎の原因に亜鉛不足も関係している可能性もあり、亜鉛の補充も狙います。

②ツムラ桔梗湯エキスを含み飲みする。
含み飲みとは、漢方薬をお湯に溶かして冷ましてから、口腔粘膜や舌になじませながら飲む飲み方です。飲めない方は、うがいをして吐き出しても良いです。口内炎に対する漢方薬で有名なものに半夏瀉心湯がありますが、不味いため、桔梗湯の方がおススメです。甘草の甘みで飲みやすいです。桔梗湯は主に咽頭炎に使われますが、その応用です。

どちらの方法も、内服ができなくなった方でもできますので、試してみて下さい。

ちなみに、イソジンやアズノールなどの消毒薬でうがいをする方もいますが、これらは組織障害性があるため、逆効果になると考えています。

(投稿者:斉藤 揚三)

緩和医療における嘔気時の対応2018年03月28日 

がん患者さんは様々な理由(化学療法、放射線治療、麻薬の副作用、腸閉塞など)で嘔気嘔吐が生じやすくなっています。

制吐剤として、一般的には、プリンペランやノバミンが使われることが多いです。

プリンペランやノバミンの注意点は、どちらもドパミン受容体拮抗薬なので、アカシジアを生じる恐れがあることです。

アカシジアとは、薬剤性パーキンソニズムの一症状で、落ち着かない、じっとしていられない、イライラする、不安感などの症状を言います。

当院でも、初診時にすでにノバミンが処方されていて、1日中家の中を歩き回っている症例を経験したことがあります。

その患者さんにノバミンを止めるなどの薬剤調節を行ったところ、すっかり落ち着いて生活ができるようになりました。

さて、当院では緩和医療における制吐剤に、ジプレキサを使うことが多いです。

ジプレキサは、セロトニン受容体、ドパミン受容体、ヒスタミン受容体、コリン受容体などを遮断する多次元受容体拮抗薬です。もちろんドパミン受容体も遮断するため、前述したアカシジアを生じる恐れもあります。

1日1回の投与で良い(半減期が33時間で作用時間が長い)ことと、OD錠(ジプレキサザイディス)が存在することが緩和医療で使う上での利点になります。また、食欲増進や体重増加の副作用がありますが、その点もがん患者さんには利点になります。

しかし、糖尿病の方には使えないことと、抗コリン作用もあるので、せん妄を生じる恐れがあることには注意が必要です。

処方例:ジプレキサザイディス2.5mg or 5mg 1錠 分1 就寝前

 (投稿者:斉藤 揚三)

フェントステープ×アブストラル舌下錠2018年03月13日 

オピオイド(麻薬)投与時には、痛みの増強や突出痛に備えて、追加(頓用)で使える鎮痛薬(速放製剤)を処方しておきます。

その薬のことを「レスキュー」と呼びます。

レスキューは定時で使用しているオピオイドど同じ種類のオピオイドとすることが一般的です。

当院では、定時でオキシコンチンを使っている場合は、レスキューはオキノームとし、フェントステープを使っている場合は、レスキューはアブストラル舌下錠としています。

レスキューの1回量は、1日量の1/6を目安とします。

例えば、オキシコンチン10mg/日を内服している場合、その1/6量の1.7mgがレスキューの目安になります(実際にはその量のオキノームはないため2.5mgを処方)。

しかし、この関係をフェントステープとアブストラル舌下錠に当てはめてはいけません(貼付薬は血中濃度の個人差が大きいことによります)。

そのため、フェントステープを何mg使用していても、レスキューのアブストラル舌下錠は100μgから開始します。

効果がない場合に100→200μgと増やしていき、至適用量を決定します。

前のブログでも書いたように、当院ではフェントステープをよく使っているので、アブストラル舌下錠もよく使います。

フェントステープとアブストラル舌下錠の組み合わせは、在宅緩和医療における最強の組み合わせではないかと考えています。

アブストラル舌下錠の最も良い点は、舌下錠の名のとおり、舌の裏で溶かして使用するので内服できない方でも使用できる点です。

逆に内服してしまうと効果は落ちてしまうので、その点は注意が必要です。

アブストラル舌下錠
効果発現時間:10分
最高血中濃度到達時間:30~60分
効果持続時間:1時間

(投稿者:斉藤 揚三)

フェントステープについて2018年03月07日 

フェントステープはフェンタニル(麻薬)の貼付薬であり、在宅医療の現場では非常に重宝します。

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癌患者さんで、内服できなくなったが痛みが出ている方、そろそろ内服できなくなりそうな方に導入することが多いです。

もちろん、モルヒネの持続皮下注射でもいいのですが、より気軽に導入することができます。

しかし、麻薬は麻薬ですので、注意が必要です。

貼付薬なので、湿布薬のように捉えられてしまい、他の人に渡してしまう、一度に何枚も貼ってしまう(実際に当院で経験しました)などが起こることもあります。また、実際にフェントステープ1mgを開封して貼ってもらうと分かるのですが、かなり小さく、高齢者が開封してしっかり貼ることは難しいと思われます。

そのため導入直後は連日の訪問診療や訪問看護で正しく貼られているかを確認するとより安全です。

日付と時間をテープに記載してもらう。使用済みのテープは粘着面を張り合わせてとっておいてもらうことも必要です。また、お風呂や電気毛布などで貼付部を温めるとより強く効果がでてしまうなどの注意点もあります。

フェントステープ1mgは経口モルヒネの30mgに相当しますので、初回投与量としては多すぎることがあります。フェントステープの欠点としては、一度貼ってしまったら、減量の調整ができないことです。さらに切ることも禁止されています。そのためより慎重に投与するために半面貼付という方法があります。これは先にフィルムを貼っておいて、その上に半分だけかかるように貼る方法ですが、この際、正確に半分にするために以下のように貼ります。

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このように、様々な注意点があるのですが、うまく使えればとてもいい薬ですので、当院ではよく処方しています。

(投稿者:斉藤 揚三)

スインプロイク錠について2017年07月24日 

2017年6月7日に発売されたスインプロイク錠ですが、当院でも何例か処方し、今のところ良い感触をもっています。

スインプロイク錠は消化管のオピオイド受容体に結合して、オピオイド鎮痛薬に拮抗することで、オピオイドによる便秘症を治療します。
この薬のポイントは中枢のμオピオイド受容体には作用しないことで、これによって、オピオイドの鎮痛効果を減弱させることなしに、便秘を治療できます。

いままでは、オピオイドによる便秘症には、大腸刺激性下剤(ラキソベロン、プルゼニドなど)と浸透圧性下剤(酸化マグネシウムなど)を組み合わせるしかありませんでした。
スインプロイク錠によって新しい選択肢が増えましたし、作用機序を考えると本剤の方がより根本的な治療になると思われます。

用法用量は、オピオイドの量に関わらず1日1回1錠(服用時間は何時でもよい)と分かりやすいです。

MRさんによれば、すでに酸化マグネシウムを内服している場合は、併用すると良いようです。それで下痢になってしまった場合は、酸化マグネシウムを止めます。

また、麻薬に限らず、弱オピオイド(トラムセット、トラマールなど)との併用もできますので、便秘のため処方できなかったトラムセットを処方できるようになれば、慢性疼痛患者さんへの応用も可能だと思います。

注意点など

※オピオイドの投与が止まった場合は、本剤も止めます。
※脳腫瘍などで血液脳関門が働かなくなっている場合は、脳に作用してしまい、オピオイドの鎮痛効果を減弱させるため使用できません。

(投稿者:斉藤 揚三)

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