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くりはら訪問クリニック

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整形外科

在宅医療におけるPTH製剤の使い方2018年09月19日 

当院ではPTH製剤を在宅医療でも使っています。在宅医療におけるPTH製剤の使い方について書いていきます。

PTH製剤とは、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)を間欠的に注射することで、骨形成が促進され、骨密度を上昇させる薬です。現在の骨粗鬆症治療においては、一番効果の高い治療法と言われています。

当院では、骨粗鬆症がひどく圧迫骨折を繰り返している方、または、転倒を繰り返しており骨折リスクが非常に高い方に使っています。

PTH製剤には、連日皮下注射製剤のフォルテオと週1回皮下注射製剤のテリボンがあります。どちらも、使えるのは、一生のうちの2年間という制限があります。

フォルテオとテリボンの選択ですが、まずは、フォルテオができないかを考えています。しかし、フォルテオは自己注射のため、かなりしっかりとした人でないとできません。在宅医療を受けているような患者さんには、自己注射ができるような人はなかなかいません。

そこで、介護者がしっかりしていれば介護者に注射してもらうか、看護師がいる施設に入所している方は看護師に注射してもらいます。

また、フォルテオの話をすると、注射時に痛みがあるのではないかと不安になる方がいますが、針は非常に細いため、痛みで脱落する方はまずいません(自分でも、製剤見本を注射してみましたが、痛みはほとんどありませんでした)。

フォルテオが難しい方には、テリボンを選択します。

テリボンにする場合は、毎週訪問診療にして、こちらで注射します(訪問看護では点滴はできても皮下注射はできません)。

テリボンの注意点としては、週1回の注射製剤のため、1回あたりの製剤の量が単純にフォルテオよりも多いので、より副作用がでやすいことがあげられます。

よく経験するのは、注射後の一過性の血圧低下です。これを予防するためには、注射前にコップ1杯の水を飲んでもらうと良いです。

また、PTH製剤には、どちらも高カルシウム血症の副作用があります。活性型ビタミンD3製剤と併用しないように注意しなければなりません。

※算定に関して
フォルテオの場合、在宅自己注射指導管理料 月28回以上の場合 750点が算定できます。これには、「在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定する。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること。」という条件があります。また、導入初期加算580点は3か月間算定できます。

(投稿者:斉藤 揚三)

大腿骨近位部骨折の保存療法2018年05月18日 

高齢者が増加するにつれて、高齢者に発生することが多い大腿骨近位部骨折を受傷される方の数も増加しています。

大腿骨近位部骨折は一般的に手術となるのが普通ですが、全身状態が悪かったり、もともと歩いていない、認知症で脱臼肢位が理解できない方(人工骨頭挿入術では)などは「手術適応がない」と言われて、自宅や施設に戻されることがあります。入院用のベッドは手術が必要な方で埋まっていますので、仕方ないとあきらめるしかありません。

今後、超高齢化社会を迎える日本においては、こういった例が多くなってくると思われます。

そこで今回は、大腿骨近位部骨折を受傷したが手術適応がない方を、自宅や施設でどのような点に注意してみていけばよいかについて書いていきます(これから手術を受ける方には当てはまらないので注意して下さい!)。

まず、大腿骨近位部骨折は、骨折が起こる場所によって大きく2種類に分かれ、そのタイプによって若干方針が変わってきます。

①大腿骨頸部骨折
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大腿骨頸部骨折は大腿骨の頸部という場所に起こる骨折です。このタイプの骨折は、保存療法で治ることはほぼなく、そのため偽関節になりやすい骨折として有名です。偽関節とは、骨折がくっつきそこねる事を言います。骨折した側の下肢に荷重をかけないからと言って治るわけではないことから、荷重制限は不要です(とは言っても実際は痛みで荷重をかけられない方がほとんどです)。

②大腿骨転子部骨折
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大腿骨転子部骨折は大腿骨の転子部という場所に起こる骨折です。大腿骨転子部骨折の場合は、3か月くらい経てば骨癒合することがほとんどです(骨折は治ります)。それまでは骨折した側の下肢は免荷(荷重をかけないようにする)とし、3か月経ったら荷重を許可します。しかし、3か月も歩かない状態でいると廃用が進み、荷重を許可しても結果的に歩けるようになる方はほとんどいません。

どちらの骨折も、骨折部がある程度安定してくるまで3週間くらいはかかり、その頃になると、痛みは徐々に治まってきます。痛みのためおむつ交換も大変な場合には、一時的に尿道カテーテルを留置することもあります。痛み止めは内服すると多少痛みが緩和されるくらいで、痛みを完全にとることはできません。最終的には車イスレベルのADLになることがほとんどです。

注意点としては、療養中は痛みのため寝たきり状態に近くなるので、褥創のリスクが高くなることです。そのため高機能エアマットレスの導入を検討しなければなりません。さらに、ベッドに寝た状態で食事を摂ったりするとムセやすく、誤嚥性肺炎のリスクも上がりますので、食事の際はギャッチアップをして、ムセに注意して食事を摂らせないといけません。また、寝たきり状態になっていると深部静脈血栓症にも注意が必要です。足関節の運動ができれば予防になります。

介護者によく聞かれるのが、「骨折した側の下肢をどれくらい動かしてもよいのか?」ですが、どちらのタイプの骨折も「痛みの範囲内で動かしても良い」となります。おむつ交換の際などは、骨折していることを意識しながら、愛護的に下肢を動かすようにします。車イスにも痛みに応じて離床しても良いです。むしろ上述の寝たきりに伴う合併症を防ぐためにも、不必要な安静を避け、積極的に離床させるべきです。

(投稿者:斉藤 揚三)

高齢者のcommon disease:リウマチ性多発筋痛症2018年03月20日 

リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)は、急性発症の頸部、肩、臀部などの著しい痛みとこわばりを特徴とします。

発症年齢は60歳以上に多いとされています。

当院はほとんどの患者さんが高齢者なので、リウマチ性多発筋痛症の患者さんをよくみます。

他院に通院していて、リウマチ性多発筋痛症を発症し、寝たきり状態になり当院に訪問診療の依頼がされることがあります。

他院では、原因不明のまま、抗生剤やNSAIDsが処方されているだけのことが多いです。

今まで普通に生活していた高齢者が突然、全身の痛みで起床できなくなって、微熱がでて、食欲も低下するというのが典型的な経過です。

以前は、対称性の近位筋の把握痛で診断されていましたが、現在、肩や大腿の滑液包炎がこの疾患の病態であることが分かってきたので、診察時はエコーで滑液包炎を探すようにしています。

治療はステロイドの内服です。少量のステロイドに劇的に反応します(逆にステロイドに反応しなければこの疾患は否定的です)。

上記のようなひどい状態から劇的に改善するので、患者さんやご家族からはとても感謝されます。

(投稿者:斉藤 揚三)

リリカに関する告発について2017年11月15日 

m3.comのカンファレンス内にリリカに対する告発が載っていました。

非常に重要な告発だと感じたので全文を以下に添付します。

巨大な製薬メーカーを相手に、患者を守るために立ち向かおうとしている医師がいることはすごいことです。

自分自身、これまでたくさんリリカを処方してきましたが、今後は適応をよく考えて処方していきたいと思います。

また今後、学会などが新しい指針をだすのかどうか注視していきます。

私は現在、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の専門委員をやっています。リリカのPMDA新薬担当部署での承認のプロセス、それに次ぐ製薬メーカーのプロモーションのやり方が、PMDA内でも問題視されています。整形外科医療の現場で多くの適応外処方・患者被害が広がっています。私の患者にも、副作用のふらつきで骨折をした人、救急車で搬送されてきた人が数人います。まず、当局の審査・管理の下で、リリカの適応症である「神経障害性疼痛」に対しての適正化が必須です。内部告発の様な形になりますが、あまりに酷い前代未聞の状況なので、この場を借りて整形外科の先生方に周知します。

リリカが「神経障害性疼痛」の適応を得た経緯は、PMDAのwebsite内のインタビューフォーム(http://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1190017F1029_1_02/の左下にリンク)に明記されています。要旨は、下記の2ステップによる三段論法です。

1) 当局PMDA審査部署による非学術的な言葉のすり替えによる適応拡大
リリカの臨床治験で効能が実証されているのは「帯状疱疹後神経痛」と「脊髄損傷後疼痛」の2疾患だけです。ところが上記審査部(整形外科以外の医師が中心です)は、それぞれを何の追加試験もしないで「末梢性神経障害性疼痛」と「中枢性神経障害性疼痛」という病名にすり替え、更にこの2つを纏めて、非常に曖昧で何とでも解釈できる「神経障害性疼痛」という病名へと適応拡大しました。
2) 製薬メーカーによる不公正な情報操作
製薬メーカーはリリカと言う薬剤名を出すことなく「疾患啓発」という形で、学会、講演会、公共メディアでは武田鉄也氏を起用して「すべての疼痛の中で『神経障害性疼痛』を占める割合は大きい」という学術的に根拠のないことを日本中に喧伝し、あたかもリリカが、整形外科一般疾患の疼痛(腰痛、坐骨神経痛、神経根症、そして関節痛、etc.)にも効能があるかのような情報操作を行って、現場の医師、保険審査員、更には患者さんの誤解を誘発しました。製薬メーカーのwebsiteの「疼痛.jp」(http://toutsu.jp/cm/)には、「神経障害性疼痛はさまざまな原因によって神経が異常な興奮をすることで起こる痛み。代表的なものは、坐骨神経痛、腰痛症、頸椎症」という不正確な情報が先日まで明記されていました。ところが、このサイトは最近になって何の説明もなく無責任にこっそりと削除されています(アクセスしてみてください)。

「神経障害性疼痛」という馴染みのない病名が適応症になっているのはリリカだけなので、上記の2つの三段論法によって医療現場に誤解が誘導されて、整形外科の多くの疾患に対してリリカが多量に処方され、莫大な国民医療費が充填されています。結果は、多くの整形外科の患者さんが、効能が実証されていない薬を飲まされ、副作用(めまい、傾眠、ふらつき)に苦しんでいる、という現状です。

内容をわかりやすくするために架空の例え話にすると下記と同様です。
1) 当局が学術的根拠もなく「糖尿病薬」を「生活習慣病」へと適応拡大した。
2) メーカーが「生活習慣病の代表的なものに高血圧がある」と情報操作した。
3) 誤解誘導された現場では、その糖尿病薬を高血圧の患者に多く処方した。
4) 血圧は下がらず、低血糖になる患者被害が拡大した。

もし、上記の架空話が現実に起これば、まず率先して循環器学会が抗議するでしょう。ところが今回のリリカの件は架空話ではなく、実際に整形外科の現場で起こっています。他科の医師たちによる当局審査部署と製薬メーカーの両者が学術的根拠もないままに推進したことによって、何の関与もしていない整形外科の多くの患者さんが被害を受けています。日本中の整形外科の患者さんを守る義務がある日本整形外科学会の姿勢が問われていると思います。

リリカは米国のファイザー社が開発した薬剤ですが、FDAでの適応症はあくまで学術的根拠に基づいており、鎮痛剤として認可しているのは「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、糖尿病性神経痛、線維筋痛症」だけです(https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2012/021446s028lbl.pdf)。また、ヨーロッパの審査当局(EMA)のリリカの添付文書にも、「末梢性神経障害性疼痛」として「糖尿病性神経障害と帯状疱疹後神経痛」、「中枢性神経障害性疼痛」として「脊髄損傷後疼痛」と明記されています(http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/EPAR_-_Summary_for_the_public/human/003880/WC500166174.pdf)。具体的な疾患名を出さないで「神経障害性疼痛」などと有耶無耶にしているのは日本のPMDAだけです。

しかしながら、米国においては、ファイザー社のプロモーションによる医療の現場での疼痛全般への適応外処方が従来より問題になっており、2009年にはアメリカ司法省の指示で、ファイザー社は和解賠償を行っています。ところが、その後もファイザー社は懲りることなく、国民に向けてのメディアを使ってのコマーシャルを続けて、適応症に関する誤解を誘発し、売り上げを着実に伸ばしています(2016年には2012年の倍以上に伸びています)。この経緯は、ごく最近のN Engl J Medの誌説(N Engl J Med 377:411,2017)において批判されるに至っています。ここで重要なのは、「米国における適応外処方・患者被害については、学術的根拠に基づいて適応認可を行ったFDAには責任なく、不公正なプロモーションを行ったファイザー社のみの責任。一方、日本においては、学術的根拠を逸脱した適応拡大を認めたPMDAと、それを巧妙に利用して不公正なプロモーションを行った製薬メーカーの両者の責任」ということです。

そもそも、「神経障害性疼痛」の定義・病態・疾患の特定が学術的に不可能であることは、ペイン科(日本ペインクリニック学会)自身が認めています。証拠としては、日本ペインクリニック学会が作った「神経障害性疼痛 薬物療法ガイドライン – 日本ペインクリニック学会」の初版(平成23年:https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/kaiin_guideline05.html)と改訂版(平成28年:https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0246/G0000896)の明らかな違いです。初版では、「神経障害性疼痛に包括される一般的な疾患・病態」を表2(P13)として明記してあります。出典は海外の2003年の英文論文(文献19)です(これもかなり怪しい論文ですが)。当然、この中には、腰痛も坐骨神経痛も関節痛も入っていません。ところが、改訂版では、初版にあった「神経障害性疼痛に包括される一般的な疾患・病態」は消えています。そのかわりに、「一般疾患の痛みの病態分類(神経障害性疼痛となりうる疾患一覧)」を表1(P22~23)に示しています。つまり、痛みのあるメジャーな疾患全てを単に羅列して、「この中にひょっとしたら神経障害性疼痛も入っているかも知れませんよ」という逃げのスタンスに変わっています。出典も初版と違って日本語の2013年の文献です(文献1)。すべての疼痛疾患の中に坐骨神経痛や腰痛症が入るのは当然で、これらを神経障害性疼痛に含める学術的根拠がないことを日本ペインクリニック学会が認めた、ということです。整形外科一般疾患に対するリリカの効能を否定する論文や批判する誌説が続出して、肯定する論文がゼロなのは当然の帰結でしょう。

私は、ここまで整形外科医療の現場を侮辱した悪質なケースを経験したのは初めてです。リリカの前例を意識したのかどうかは不明ですが、最近、リリカと類似の作用機序を持つ新たなα2δリガンドが、第一三共社から申請されていて、もうすぐPMDAでの承認審査が始まる、と聞いています。この新薬の第3相治験で効能が証明されているのは、「帯状疱疹後神経痛」と「糖尿病性疼痛」だけです。当然、この2つでの申請・承認が公正と考えます。しかしながら、リリカの「神経障害性疼痛」の前例が残ったままだと、この新薬も学術的根拠のないままに「神経障害性疼痛」の適応にすり替えられる可能性は否定できません。第二のリリカが整形外科の現場に登場し、適応外処方、患者被害、そして「薬害」が拡大することに強い懸念を覚えます。

以上より、リリカは「帯状疱疹後神経痛」と「脊髄損傷後疼痛」にしか効能が実証されていません。ところが現実には、その効能が学術的に立証されていないどころか、否定されている一般整形外科疾患の多くの患者さんに処方されています。関係者は、患者さんやその支持団体、更には納税者である国民から、背任罪の提訴、薬害訴訟を受けても逃れられない、前代未聞の事態であると思料します。関係者とは、製薬メーカーだけではなく、PMDA、保険審査員、そして私を含む不勉強な現場の整形外科医を指します。

日本には、運動器の基礎研究に従事している整形外科医や医学研究者が大勢おられます。彼らの殆どは、その成果が将来、臨床に還元されて患者さんの福音となることを目標・拠り所として昼夜を惜しんで研究を続けています。画期的な新薬は、彼らの莫大な労力、果てしなく続くワインディングロードの末に生まれることは言を俟ちません。しかしながら、その確率は限りなく低く、殆どの研究者の汗の結晶は患者さんの手に届くことなく、水泡として消えてしまいます。その一方で、学術的根拠もないまま、巧妙で狡猾なプロセスを経て、広く患者さんに届いているリリカのような薬剤が存在しています。

長文になりましたが、以下がまとめです。
1) リリカの効能が学術的に証明されているのは、「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、線維筋痛症」だけです。PMDAでの「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛」から「神経障害性疼痛」への適応拡大の学術的根拠は皆無です。
2) リリカがPMDAにおいて「神経障害性疼痛」を効能・効果として適応症が拡大承認された2013年2月以降に、脊椎神経根性疼痛(2015/1/20)、坐骨神経痛(2017/3/23)、腰痛症(2017/6/6)に対するリリカの鎮痛作用を否定する、学術的に高レベルの臨床試験が報告されました。一方、リリカがこれら整形外科一般疾患の疼痛に有効であることを示した報告は皆無です。
3) このような学術的事実を無視して、製薬メーカーは、「神経障害性疼痛」には、整形外科一般疾患の疼痛をはじめとする多くの疼痛が含まれる、という情報操作を医療関係者や患者さんに対して行なっています。「神経障害性疼痛」の適応症を取得している薬剤はリリカしかないため、上記の情報は、「リリカが整形外科一般疾患の疼痛に効能がある」と現場の医師や保険審査員に受け取られて当然です。
4) 結果として、国内の整形外科疾患の多くの患者さんが効能が実証されていない薬を飲まされ続けて、副作用に苦しんでいます。また、国民医療費が効果のない治療費用に充填されています。
5) 最近、新たなα2δリガンドが申請されており、リリカの前例が残存したままだと、国民の医療被害が更に拡大することが懸念されます。

多くの整形外科の患者さんが長年に渡って効能が実証されていない薬を飲まされ続けて、副作用に苦しんでいます。国民の血税は、その根拠のない医療に注ぎ込まれています。これが日本の整形外科医療の現状であると言われると、我々現場の医師にも反省し改善しなければならない部分もあると思います。しかしながら、整形外科医の与り知らないところで起こってしまった今回のリリカの隆盛は、学術的根拠に基づくフェアな医療、それに真摯に携わっている研究者・臨床医の信義を根本から否定・愚弄するものであり、到底、看過できるものではないと考えます。製薬メーカーも、当局も、そして我々医師も、公正な学術的根拠に基づいて患者さんに対峙していく矜持を忘れるべきではないことを、強く主張したいと思います。まずは当局における、リリカの適応症を、曖昧な「神経障害性疼痛、線維筋痛症」から、あくまで学術的根拠に基づいて具体的な「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、線維筋痛症」への変更が必須です。

川口 浩 2017/11/05

在宅医療で関節リウマチを管理する方法2017年10月06日 

今回は在宅医療で関節リウマチを管理する方法について書いていきます。

関節リウマチの有病率は約1%と言われており、整形外科を標榜していなければ、だいたい訪問診療を受けている100人に1人くらいに関節リウマチの患者さんがいるくらいだと思われます。

在宅医療ではすでに診断がついている方がほとんどだと思いますが、既往のない方が手指のこわばりなどを訴えた場合、診断のため検査が必要になることがあります。
採血項目はリウマチ因子、抗CCP抗体、CRPです。
診断に関しては、ACR/EULAR関節リウマチ分類基準2010に従って、スコアを点数化すればできます。

在宅における関節リウマチの治療に関しては、「在宅整形が得意技になる本 飯島 治 南山堂」にも書いてあるようにステロイドが主体となってきます。

現在のリウマチ治療において中心的薬剤(アンカードラック)となるのはメトトレキサート(MTX)ですが、上述の本にもあるように、間質性肺炎の副作用がでる可能性があり、不調があっても訴えることが難しい方が多い在宅医療で使用するのは危険だと考えられます。(発見が遅れると命に関わります)
友人のリウマチ専門医も同様の意見でした。

そこで、処方例としてはステロイド性骨粗鬆症の治療を含め、以下が考えられます。

プレドニン錠5mg 1錠 分1 朝食後
セレコックス錠100mg 2錠 分2 朝夕食後
エディロールカプセル0.75μg 1C 分1 朝食後
ボンビバ注 月1回

プレドニンだけでコントロールできなければ、以下の追加も考慮。
アザルフィジン500~1000mg/日(薬疹、発熱、肝障害に注意)
リマチル100~200mg/日(薬疹、腎障害に注意)
リメタゾン2.5mg注 2週に1回

疾患活動性の評価に関しては、在宅では採血の必要のないCDAIが適していると思われます。
CDAI=圧痛関節数(0~28)+腫脹関節数(0~28)+医師の疾患活動性全般評価(VASで0~10cm)+患者の疾患活動性全般評価(VASで0~10cm)
寛解                        2.8以下
低疾患活動性    10以下
中等度疾患活動性  22以下
高度疾患活動性   22以上

(投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療におけるプラリアの使用について2017年10月05日 

プラリア(デノスマブ)はRANKLの受容体RANKへの結合を阻害することで破骨細胞の分化を抑制し、骨吸収抑制効果を示す骨粗鬆症治療薬です。

6か月に1回の投与でよく、骨粗鬆症ガイドラインでは推奨グレードがオールAなので、非常に良い薬であると思います。

しかし効果が高い分、副作用(主に低Ca血症)に注意が必要です。
低Ca血症の発現を防止するためには、カルシウムとビタミンDを経口補充するとともに、定期的に血清カルシウム値をモニタリングしなければいけません。

低Ca血症は約半数が投与後7日以内に起こっているようです。つまり投与後7日間は特にこまめに観察しなければなりませんが、在宅医療で観察していくのは困難であると考えています。

低Ca血症は症状が多彩で見分けにくく、放置すれば死亡リスクもあります。

医学の祖と言われるヒポクラテスの言葉に、「自身の能力と判断に従って、患者に利すると思う治療法を選択し、害と知る治療法を決して選択しない」とあります。

いくら効果が高くても、患者さんに害を生じる恐れのある薬は使用しないスタンスでいますので、当院では使用していません。

(投稿者:斉藤 揚三)

ビスホスホネート薬による顎骨壊死2017年10月02日 

ビスホスホネート薬投与中に顎骨壊死が生じることがあります。

アレンドロネート投与による顎骨壊死のリスクは0.01~0.04%なのですが、抜歯をすると0.09~0.34%に増加したという報告があります。

こういった問題に巻き込まれないためには、ビスホスホネート薬投与前に、現在歯科治療を行っていないか、今後歯科治療の予定はないのかを確認することが必要です。

ビスホスホネート薬をすでに使用している方に侵襲的な歯科治療が必要になった場合はどうするかと言うと…

AAOMS(アメリカ口腔顎顔面外科学会)では、「ビスホスホネート薬投与が4年以内なら、通常通りに治療する。4年以上なら、2か月前後休薬してから治療をする」ことを推奨しています。

だたし、これには根拠がなく、2か月前後の休薬で骨からビスホスホネート薬がwash outされるとは思えません。しかし、現状ではこの基準に沿うしかありません。

確率的には非常に低い(1万~10万人に1人)ですし、悪性腫瘍に対して静脈注射で高容量のビスホスホネート薬を使っている場合に起こることが多いので、そこまで神経質になる必要はないと思いますが、「口臭がひどくなった」「歯がぐらぐらしてきた」などの訴えがあった場合には、休薬し歯科受診を勧める必要があります。

顎骨壊死の治療については自分自身の経験はありませんが、テリパラチドを使用すると良いようです。

より詳しいことが知りたい人は、「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理: 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」を参照してみてください。

(投稿者:斉藤 揚三)

ビスホスホネート薬による非定型大腿骨骨折2017年09月27日 

ビスホスホネート薬というのは骨密度上昇効果・骨折予防効果が高く、エビデンスもある薬ですが注意も必要です。

ビスホスホネート薬は骨吸収を抑制する薬剤です。

ビスホスホネート薬を長期で使っていると、骨密度は上昇し骨は固くなりますが、ビスホスホネート薬により形成されるAGEs架橋によりしなやかさが失われ、結果的に脆い骨になります。

大理石骨病という、破骨細胞に形成・機能障害が起こり易骨折性を起こす病態がありますが、ビスホスホネート薬の長期投与は、人為的に大理石骨病を作っているのと同じと言えます。

実際、ビスホスホネート薬の長期投与により非定型大腿骨骨折を起こす症例が見られます。

専門的な話になりますが、非定型大腿骨骨折は、軽微な外力で、大腿骨転子下~顆上部に、横~斜骨折を生じます↓
また、骨折した反対側の大腿骨に骨皮質の肥厚がみられています。(オレンジの矢印)

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(荻野浩、他.ビスホスホネートによる非定型大腿骨骨折.臨床整外2012;47(8):774-777)

ある報告では、5年以上の投与でOR2.7(95%CI:1.3~6.0)と非定型大腿骨骨折のリスクが高まります。

そのため、ビスホスホネート薬を投与(特に長期投与)している患者さんには、大腿部痛がないか、診察時に必ず確認し、あった場合には大腿骨のレントゲン撮影が必要になります。

その際は、beakingとよばれる外側骨皮質の限局性骨膜反応がないか、骨幹部の皮質骨厚が全体的に増加していないか見なければなりません。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

ビスホスホネート薬の長期投与2017年09月25日 

骨というのは代謝していて、破骨細胞が古い骨を壊し(骨吸収)、骨芽細胞が新しい骨を作っています(骨形成)。

ビスホスホネート薬は骨吸収を抑制する薬剤です。

骨形成はそのままで骨吸収を抑制するので骨は丈夫になります。

つまり、骨形成と骨吸収の差を利用するのがビスホスホネート薬です。

その差が骨折抑制効果として表れるのは、投与後1年たってからと言われています。(そのため一度始めたのであれば、最低1年は継続します)

長期で使っていると、徐々に骨形成も抑制されてきて、骨吸収と骨形成の差がなくなり、骨密度の上昇が頭打ちになってきます。

そのため、長期でビスホスホネート薬を使っていると効果がなくなってくるのです。

一般的には使い始めてから5年で一度、継続するかどうかを検討しなおさなければなりません。

また効果がなくなってくるどころか、長期で使っていると、非定形大腿骨骨折という有害事象が生じる可能性があります。

次回は非定形大腿骨骨折について書きます。

(投稿者:斉藤 揚三)

当院で使用しているビスホスホネート薬2017年09月18日 

骨粗鬆症治療において経口ビスホスホネート薬はよく使われていると思います。
というのも、他の治療薬と比べて治療効果が高いからです。

経口ビスホスホネート薬を処方するのであれば、ガイドラインで推奨グレードがオールAのアレンドロネート(フォサマック、ボナロン)かリセドロネート(アクトネル、ベネット)をお勧めします。

しかし当院では経口ビスホスホネート薬はほとんど処方していません。
それは、経口ビスホスホネート薬を内服すると食道炎・食道潰瘍になりやすくなるため、「起床時に水約180mLとともに内服して30分間横にならず、水以外の飲水ならびに他の薬剤の内服も避ける」という特殊な内服をしなければならないからです。

訪問診療を受けている患者さんは高齢で、認知症が背景にある方が多く、このような内服ができるとも思いません。

そもそも、高齢者で経口ビスホスホネート薬を正確に内服できている患者さんなどめったにいないのではないかと考えています。

そこで当院では骨折や転倒リスクが高く、ビスホスホネート薬を是非とも使いたい患者さんには、確実に投与するためにボンビバ注射を使っています。月1回、診察時に静注しています。

また、ビスホスホネート薬の成績というのは、ビタミンDを併用した条件下での成績なので、必ずビタミンDを併用するようにしています(当院ではエディロール)。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

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