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在宅医療専門
くりはら訪問クリニック

スタッフブログ

在宅医療・訪問診療

訪問診療における医師と患者の位置関係2018年10月24日 

訪問診療では、患者さんが暮らしているところに出向いて診察するため、あらゆる場所で診察することになります。

その際には、患者さんとの位置関係に注意する必要があります。

心理学において、真正面に対面して視線が合うと、緊張や圧迫感を与えてしまうと言われています。一方、横や斜めからだと、直接的に視線が合いにくいため、緊張や圧迫感を与えにくく、親密な関係を築くことができます。

外来の診察室では、最初から患者さんと真正面に対面しないように設計されているので、このようなことは考えなくてもいいのですが、訪問診療では気をつけなければなりません。

これはとある有料老人ホームの診察前にセッティングされたイスと机の位置関係を示しています。左が患者さんのイス。手前が医師の机とイスになります。この位置関係は正しい位置関係となります。

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万が一、下のようにセッティングされていた場合、上のようにイスと机の位置を直さなければなりません。

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診察スペースの関係で、なかなか難しいこともありますが、できるだけ真正面にならないように、横や斜めからの診察を心がけています。ただし、認知機能が低下している患者さんでは、視界が狭くなっていて、正面しか認識できないため、正面から近づいていく場合もあります。

(投稿者:斉藤 揚三)

老衰からの復活!2018年07月05日 

症例:96歳女性

既往歴:アルツハイマー型認知症、狭心症、慢性心不全、高脂血症、右大腿骨転子部骨折術後

当院初診までの経過:H30年2月中旬頃から徐々に歩行器歩行が難しくなってきていました。H30年3月末頃より、食欲不振、歩行困難となり、通院が困難となったため、当院を紹介されました。H30年4月初めに当院を初診した際には、寝たきり状態で、呼びかけに対する反応も希薄、食事も1食あたり数口程度の摂取量でした。診察の結果、老衰状態と考えられ、当院で介入してもどこまで回復するのか分かりませんでしたが、できる限りの事をしてみることにしました。もちろん、回復しない可能性は高いこと、急変もあり得ることは説明しました。前医の処方薬は以下になります。

ラニラピッド錠0.05mg  1錠
ダイアート錠30mg 1錠
プラバスタチン錠5mg 1錠 
リスパダール内用液1mg
エディロールカプセル0.75μg 1C
L-アスパラギン酸Ca錠 分1 朝食後
メマリーOD錠20mg 1錠 分1 夕食後
ペルサンチン錠25mg 3錠 
マグミット錠500mg 3錠
カロナール錠200mg 6錠 分3 毎食後
アストミン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後

11剤の薬がでていました。まず、必要最小限の薬とすることで、食欲が回復することを期待しました。また、濃厚流動食による栄養補給と訪問リハビリを導入しました。

初診時に以下の処方薬に切り替えました。11剤→6剤への減薬。

ラニラピッド錠0.05mg 0.5錠
フルイトラン錠1mg 分1 朝食後
エディロールカプセル0.75μg 1C 
メマリーOD錠10mg 1錠 分1 夕食後
シグマート錠5mg 2錠 分2 朝夕食後
エンシュア・H750ml 分3 毎食後

その後、食欲は少しずつ回復してきました。しかし、せん妄が現れるようになり、ジプレキサ2.5mgを追加しました。フルイトランは中止し、メマリーも漸減、中止しました。エンシュアは飲むと下痢になるためほとんど摂取できませんでした。

その後、昼夜逆転がみられるようになり、ジプレキサをセロクエルに変更。現在は以下の処方薬になっています。

ラニラピッド錠0.05mg 0.5錠 分1 朝食後
エディロールカプセル0.75μg 1C 
セロクエル25mg錠 1錠 分1 夕食後
シグマート錠5mg 2錠 分2 朝夕食後

現在、食事は3食を全量摂取でき、夜も眠れています。また、訪問リハビリによりADLも改善し、見守りの上で歩行器歩行もできています。バーセルインデックス(ADLを評価する指数。点数が高いほど自立している)も2か月半で5点→65点に大幅に回復しました。ここまでうまくいくことも珍しいですが、こういった症例もありますので取り上げてみました。

(投稿者:斉藤 揚三)

施設への「訪問薬剤管理指導」について2018年06月19日 

「訪問薬剤管理指導」は、薬を届けてもらえるサービスと誤解されがちですが、それは業務の一つにすぎません。実際は、薬剤師が自宅に行って、飲み残しの薬ははないか、副作用はでていないかなどを確認し、問題があった場合には処方医に報告し、指導するのが主な仕事になります。また、夜間や休日などに急な調剤が必要になった場合の対応も含まれています。

ですから、認知症のある独居の方、あるいは老々介護で介護者もしっかりしていないなどで、服薬がしっかりできていないと思われる方、あるいは時間外の調剤が必要になりそうなくらい病状が安定していない方に「訪問薬剤管理指導」の指示をだすのはとても良いと思われます。

ちなみに、「訪問薬剤管理指導」というのは正確には「薬剤師による居宅療養管理指導」のことで、患者さんが介護認定されていれば、介護保険を使ってのサービスとなります。

さて、施設における「訪問薬剤管理指導」ですが、施設ではスタッフが服薬管理しているところがほとんです。そのため、薬を間違って内服したり、内服しなかったりすることはまず起こりません。さらに、当院ではこれまでに様々な薬局に「訪問薬剤管理指導」を依頼しましたが、ほとんどが薬を施設に届けるのが主のサービスになっています。患者さんに会わずに施設のスタッフに、患者さんの状態や残薬などを聞き、医師に報告しているケースもありました。

そういうわけで、施設においては「訪問薬剤管理指導」を入れる優先度は低いと言わざるを得ないのが現状です。

「施設のスタッフが薬をとりに行くのが大変なので訪問薬剤管理指導を入れる」というのは誤った考えなので取り上げてみました。

(投稿者:斉藤 揚三)

入院のメリット・デメリット2018年05月14日 

本日の訪問診療で、患者さんの家の前のフジがきれいだったので写真を撮ってみました。

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さて、「入院する(させる)と安心だ」という言葉はよく聞きますし、その心情は良く分かります。

確かに入院すればなにかあってもすぐに何かしらの対応が受けられますし、家族は介護から解放される、精密検査や場合によっては高度な治療を受けることができるなど、そのメリットは大きいものがあります。

しかしデメリットがあることも忘れてはいけません。

特に高齢者では、入院するとそれまでの環境とガラッと変わってしまうため、その変化についていくことができず、せん妄が誘発されることが多々あります。それによって、身体拘束されベッドに縛り付けられれば、廃用が進んで寝たきりになってしまうかもしれません。また、せん妄のため、ご家族が1日中付き添わなければならないこともあります。

また、疾病の治療だけを考え「生活機能の維持」という基本的なことをないがしろにする医師がいることも事実です(内科系の医師に多いと思われます)。疾病が治ったのはいいが、寝たきりになってしまったというのはよくあることです。そのような医師にあたった場合、予防的なリハビリの指示もでないということもあります。また、意味のない安静が指示されていることもあります。

仮に、リハビリが指示されていたとしても、リハビリの時間は1日に20分くらいです。入院中は、看護師が手厚くケアしてくれるので、その結果活動量が低下し、退院時にはADLは低下していたという報告もあります。もしリハビリの時間以外をベッド上で過ごす状況であれば、寝たきりへの移行を防ぐことはできないかもしれません。

さらに、入院のデメリットとして自由が奪われることもあげられます。口に合わない病院食も我慢して食べるしかなく、消灯時間も決まっており、タバコもお酒も禁止です。

それに対して、在宅医療では住み慣れた場所で医療を継続できることが最大のメリットになります。環境変化によるせん妄も起こりにくく、好きな時間に起きて、好きなものを食べて、タバコやお酒を楽しむことも可能です。大がかりな検査や治療は難しいですが、血液検査や尿検査などの基本的な検査、点滴や酸素療法も受けられ、入院に準じた医療を受けることもできます。

なにかあったらすぐに入院ではなく、在宅医療という選択肢があっても良いと思います。

 (投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療におけるゴミの問題2018年05月07日 

開院した当時は、在宅医療ででたゴミはクリニックに持ち帰って医療用廃棄物として処理していました。

しかし、ゴミの量も馬鹿にできず、においやコストの問題もありました。

そんな折、在宅医療廃棄物の処分に関する指針を調べてみたところ… 

環境省、日本医師会の指針では、

家庭からでる医療ごみは市町村に処理義務がある。

医療機関が持ち帰って処分しなくてはならないものは鋭利なもの(注射針、点滴針など)だけで、それ以外は一般廃棄物(家庭ごみ)として処分できると書いてあります。

つまり、在宅医療で出る大部分のゴミ(点滴バック、輸液ライン、膀胱留置カテーテル、針なしの注射器、ガーゼなど)は家庭ごみで良いということになります。一度ポリ袋などに入れて封をしてから、各地方自治体の指定のゴミ袋に入れて出します。

最終的には、お住いの自治体の規定に沿わないといけないとは思いますが、基本的な考え方は上記のとおりだと思います。

とういうわけで、現在、当院では在宅医療ででたゴミはその家庭で処分してもらうようにお願いしています。この方針にしてからはクリニックから出るゴミの量は激減しました。

(投稿者:斉藤 揚三)

寝たきり高齢者の便秘時の漢方薬2018年01月17日 

井齋偉矢先生の漢方薬の講演の中で、最近は特養に入所しているような高齢者の便秘には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)が喜ばれるので、麻子仁丸(ましにんがん)から桃核承気湯に変えているというお話がありました。
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便秘に対する漢方薬で有名なものに麻子仁丸がありますが、麻子仁丸は自立している高齢者にはいいが、特養に入っているような人には使えないとのことでした。麻子仁丸では腸管の蠕動運動を亢進させる作用が弱いとのことです。

その話を聞いて、当院でも施設入所中で、頑固な便秘のある高齢者に桃核承気湯を何例か試しましたが、下剤や浣腸を使わなくても自力排便があるようになり、確かにその効果がはっきりありました。

そのため、現在、桃核承気湯を寝たきりの高齢者の頑固な便秘に使っています。

摘便しなければ排便がないような方にお勧めです。

処方例:桃核承気湯7.5g 分3 毎食前 (1日1包や2包でも良い人もいる)

※7.5g中、甘草が1.5g入っているので、偽アルドステロン症には注意が必要です。

(投稿者:斉藤 揚三)

新年あけましておめでとうございます。2018年01月04日 

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新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

上の写真は、施設に入所していて当院の訪問診療をうけている患者さん(元大工さん)が作った神棚です。全て段ボールと割りばしで作ったとのことですが、すごい出来ですね。軽いため、画鋲で壁に貼っているとのことです。

さて、当院では今日から通常の訪問診療開始ということになりますが、年中無休ですので、年末年始(12/29~1/3)も診療はありました。

結果的に看取り1名、往診5名(内入院2名)、定期診療3名ということで、お正月をゆっくり過ごすというわけにはいきませんでしたが…。

今年も患者さんのために頑張っていきます!

(投稿者:斉藤 揚三)

中心静脈栄養からの離脱2017年12月27日 

病院に肺炎などの急性疾患で入院し、その後食事が摂れなくなり、中心静脈栄養で管理されるようになる方は多いです。

また、訪問診療をしていると、入院中は食事がなかなか進まなかった人が自宅に戻ってから食べられるようになるということをよく経験します。

病院の食事が口に合わない、家庭の味が一番というのはあると思いますが、住み慣れた自宅の環境が良かったり、家族のサポートによって食べられるようになるというのもあると思います。

そのため、中心静脈栄養で在宅に帰ってきた方を訪問診療で診ることになった際には、中心静脈栄養を止めることが出来ないかを常に考えています。

当院のやり方としては、中心静脈栄養をしている状態で、まずはゼリーやプリンなどを食べてもらいます。それがムセなく食べられるようであれば、徐々に食事形態を上げていきます。完全に食事が摂れるようになってもヘパロックをして、食事が摂れなくなった場合に備えて中心静脈のラインは数週間は残しておきます。

誤嚥するリスクは常にありますので、十分な説明は必要です。

この方法によって、2017年度は4名の患者さんが中心静脈栄養から離脱することができました。

入院中は食べられなかったわけですから、主治医が選択した中心静脈栄養は間違いではないと思います。

しかし、中心静脈栄養では長く生きられたとしても2年くらいが限界です。やはり食事をして、自分の腸を使うのが一番自然ですしうまくいけばもっと生きられるではないかと考えています。

(投稿者:斉藤 揚三)

栗原市の訪問診療の需要を計算してみました。2017年12月23日 

栗原市高齢者福祉計画・介護保険事業計画(案)が発表されました。

ここに書いてあるデータを元に、現在栗原市で訪問診療の適応になる患者さんは何人くらいいるのか、おおまかに計算してみました。

訪問診療が必要な方というのは一人で通院することが困難な方だと考えると、介護度で考えれば、歩けない目安とされる要介護3以上が当てはまると思われます。

22ページより、平成27年度の栗原市の介護認定者数5610人のうち、要介護3以上の人数は2105人です。

38ページより、平成27年度、介護保険3施設に入所している方が797人であることから、入所者が全て要介護3以上だと仮定すると、2105人-797人=1308人が要介護3以上で在宅にいる人数と思われます。

33ページに、在宅にいて介護認定を受けている人の中で、訪問診療を利用している人の割合が9.6%程度とありました。

介護認定を受けていて在宅にいると思われる4813人(5610人-797人)のうち、9.6%にあたる462人が訪問診療を受けているとして、少なくとも846人(1308人-462人)が無理をして通院している人数と推測できます。

つまり、栗原市にはまだ訪問診療の対象になると思われる患者さんが約1000人ちかくいることが分かりました。

また32ページには、主な介護者が不安に感じる介護として、「外出の付き添い、送迎」が33.7%と最も高くなっています。

つまり、通院の付き添いも、介護者にとっては大きな負担になっていると思われます。

介護者の負担軽減のために、また、在宅で医療を受けられずに放置されているかもしれない高齢者に医療を届ける意味でも、広く市民に訪問診療の存在を啓蒙していく必要があるのではないかと考えています。

ちなみに栗原市では高齢者福祉計画・介護保険事業計画(案)に対するパブリックコメントを実施し、市民からの意見や提案を募集するとのことです。

2018年1月5日まで受け付けているようなので、意見がある市民や事業者の方は提出してみてはいかがでしょうか?

詳しくはココをクリック

※計算に当たっては、入院している方は考慮していません。また、訪問診療を受けている人の多くは要介護3以上と仮定しています。

(投稿者:斉藤 揚三)

吸入の工夫について2017年12月18日 

朝晩寒くなってきたせいか、喘息発作を起こす患者さんが増えてきています。

喘息治療のガイドラインでは、吸入ステロイドが第1選択薬になっています。

しかし、訪問診療を受けている患者さんは高齢の方がほとんどで吸入薬を処方してもうまく吸えない方が多いです。

そこで、マスクタイプのスペーサー(エアロチャンバー)を使うと、呼吸をするだけで確実に吸入させることができます。価格は4000円くらいです。保険収載品ではないため自費で購入してもらっています。

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介護者がしっかりしていれば、確実に吸入させることができます。

使い方としては、

①吸入器を良く振ってからキャップを外し、吸入器、スペーサー、マスクを正しい位置に合わせてセットします。

②薬を噴射します。

③マスクを完全に顔にフィットするようにあて、ゆっくりと呼吸してもらいます。5回程度呼吸したら終了になります。1回2吸入の場合は②→③をもう一度繰り返します。

④吸入後は口に残った薬を洗い流すためにうがいをします。うがいが出来ない方は水を飲みます。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

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