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リハビリ

NEAT(ニート)について2018年08月27日 

ニートと聞くと、仕事をしないでぶらぶらしている人を想像しますが、ここで取り上げるのはNEATです。

NEAT(ニート)とは、Non Exercise Activity Thermogenesis(非運動性活動熱産生)の略で、家事や通勤などの日常生活における動作によって産生される熱量のことを言います。

健康のために運動をすることはとても大事ですが、いざ運動しようとして、いきなりランニングなどの激しい運動をすることは勧められません。心筋梗塞を起こすリスクがあったり、膝関節を痛めるかもしれません。

そこで勧められるのは、日常生活の中で上述したNEATを意識的に増やすことです。例えば、エレベーターを使わずに階段を使う、出社や帰宅時に一駅前で降りて歩くなどはよく言われています。スーパーに買い物に行く場合は、わざと遠くに車を止めて歩く距離を増やすなども考えられます。

このように、日常生活の中でいかにこまめに体を動かせるかが大事になってきます。そう考えると、家事も筋トレだと思えてくるので、家事をすることが楽しくなってきます。特に男性は家事を積極的にしたほうがいいです。

アメリカの研究で、女性は結婚すると家事の時間や負担が増え、これが女性のストレスやうつ病に結びついていることが分かったそうです。そして、女性のストレスを減らすためには、男性が女性と同じくらい家事を分担していると女性が感じることが大切なのだそうです。

男性が家事をすることは、運動にもなり、妻の満足度も上がり、いいことずくめなのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

ねころんで読める新しいリハビリ2018年08月10日 

『ねころんで読める新しいリハビリ 上月正博 メディカ出版』

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筆者は東北大学大学院医学系研究科内部障害学分野教授の上月正博先生です。

この本は、猫のイラストなどがあり、気楽に読める本にも関わらず、とても内容が濃く勉強になります。

副題には、「内部障害リハビリテーションの驚くべき効果」とあります。内部障害とはあまり聞きなれない言葉ですが、心臓、腎臓、肝臓、肺、膀胱、腸などに障害があることを言います。たとえば、心不全、腎不全、呼吸不全などが内部障害にあたります。高齢者は内部障害を有する方が多く、高齢化社会とともに、必然的に内部障害のある方の数も増えてきています。当院が在宅医療で診ている患者さんも、ほとんどが内部障害を持っています。

今まではリハビリというと、脳卒中で麻痺が起きた方、または整形外科の手術後の方に行っているというイメージがありましたが、高齢化社会になるに伴い、内部障害の方のリハビリが増えてきています。本書では、内部障害リハビリテーションの驚くべき効果について書かれています。生活機能予後、さらには生命予後も改善します

本書にでてくるリハビリのプログラムを見てみると、まず量がすごいことに気が付きます。東北大学病院リハビリテーション科病棟では、心臓リハビリテーションで入院した患者は毎日1万歩を歩いてもらうそうです。また、認知症の方に対する下肢運動プログラムでは、エルゴメータ(自転車)運動を1日1時間行うそうです。以前、ブログで取り上げた「間違いだらけのリハビリテーション」でも起立ー着席運動を1日400~600回行うことを勧めています。やはり、リハビリで結果をだすには圧倒的な量が必要なのでしょう。

これだけの量をやってもらうには、医療スタッフの熱意がなによりも必要です。本書にも書いてあるように、患者にリハビリを勧める前に、「まず隗より始めよ」の言葉どおり、医療スタッフ自身が運動することが重要なのかもしれまん。

ちなみに、本書で、透析中にエルゴメータを用いて運動療法をしている写真が載っていましたが、これなら在宅で寝たきりの方にも応用できるかなと思いました。
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(投稿者:斉藤 揚三)

転倒しても歩かせる同意書2018年06月25日 

施設で歩かせない理由として、「勝手に歩いて転倒して、骨折でもして歩けなくなったら大変だ」というものがあります。しかし、歩かせないで座りっぱなしでいると、足腰が弱くなって歩けなくなってしまいます。「歩けなくなったら大変だ」から始まったのに、結果として歩けなくなるわけです。これでは本末転倒ではないでしょうか。「転倒して骨折し歩けなくなる」ことと、「歩かせないことで廃用が進み歩けなくなる」ことは、歩けなくなるという点では同じです。

一方で、立つ・歩くのには、体の様々な器官に生理的に多くのメリットがあり、人としての尊厳を守ることにもつながります。また、認知機能にもよい影響を及ぼします。つまり、「歩かせない→廃用が進み歩けなくなる」よりも「転倒→骨折→歩けなくなる」方がマシとも言うこともできます。

そういうわけで、「転倒のリスクがあっても歩かせる」という選択肢があってもよいのではないかと思っています。

しかしそうは言っても、「転倒して怪我をした場合、責任を負わなければいけない」と考えるとなかなか歩かせられないので、入所前に、「転倒しても歩かせる同意書」をとるのがいいのではないかと思います。

同意書の文面を勝手に考えてみました。

当施設は、その人がその人らしくあるために、身体拘束はせず、自由に歩いてもらうという方針で運営しています。転倒には十分注意を払いますが、常に見守れるわけではないので、転倒して怪我をしてしまう可能性があります。怪我の程度によっては歩けなくなる可能性もありますが、当施設では転倒の可能性をゼロにすることよりも人間の尊厳の方を重視しています。転倒によって生じた損害に関しては補償できかねますのでご了承ください。

こういった同意書にサインしてもらっていれば、ある程度安心して歩かせることができます。もちろん、転倒予防は大事ですし、医師としてもできることはいろいろとあります(→転倒を予防するためにできること)。医師としてはそれを最大限行い、施設としては転倒しないように注意するのは当然ですが、転倒を完全になくすというよりも、ある程度の転倒リスクはご理解いただいたうえで、積極的に立たせる・歩かせる方針の施設が増えてくれればいいなと思っています。

(投稿者:斉藤 揚三)

ユマニチュードにおけるリハビリ2018年06月21日 

以前このブログで、入院すると手厚いケアを受けたり安静が指示されたりで、ベッドに寝ている時間が多くなり、廃用が進むことが多いと書きました。

入院中にリハビリが指示されていたとしても、それ以外の時間をベッドで寝ていれば、寝たきりへの移行を防げないかもしれないのです。

さて、認知症ケアの技法であるユマニチュードでは、4つの柱の中の「立つ」において、リハビリについても言及しています。立つことはその人の誇りと尊厳を保つことにつながり、「1日20分立つことができれば寝たきりにならない。その20分は細切れでよい」としています。

ケアの際にいかに、立つという場面を作っていけるかが重要です。ユマニチュード認定施設では、40秒間立位が取れる人であれば、立位と座位を組み合わせることによって、臥位のまま清拭することはないようにするそうです。

ユマニチュードではケアのレベルを3つに分けています。

①回復を目指す
②現状を維持する
③最期までよりそう

例えば、病棟からレントゲン室までレントゲンを撮りに行く場面を想定してみます。患者さんのADLによってケアの仕方も変わってきます。

レントゲン室まで歩いていってもらう。
歩けなくなってきている方にとっては、①回復を目指すケアになるかもしれません。
もともと歩ける方にとっては、②現状を維持するケアになるかもしれません。

ベッドサイドから少し離して車イスを置き、車イスまで歩いてももらう。
もともと車イスレベルの方であれば、①回復を目指すケアになるかもしれません。
少し歩ける方にとっては、②現状を維持するケアになるかもしれません。

車イスを押してレントゲン室まで連れて行く。
寝たきり状態の方にはこれしかできませんが、これは③最期までよりそうケアになります。

このように、自分が今しているケアは3つの内のどのレベルを目指しているのかを常に意識することが重要です。間違ったレベルのケアをしてはいけません。歩ける方に、車イスに乗せてレントゲン室まで行ったとしたら、それは機能を失わせるケアということになります。

リハビリ以外のスタッフがリハビリに関して少し意識するだけでも、患者さんの状態は変わってくると思っています。「リハビリはリハビリスタッフに任せて、あとは何もしなくても良い」というのは間違いなのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

訪問リハビリの考え方2018年05月16日 

訪問診療が病院での診療を在宅に持ち込めばいいのではないのと同様に、訪問リハビリも、病院でのリハビリを在宅に持ち込めばよいわけではないと考えています。病院でのリハビリと在宅でのリハビリの違う点を考えてみます。

大きく違うのがリハビリの時間です。病院(入院)では毎日リハビリができますが、訪問リハビリではマンパワーの問題などで週1、2回くらいしかできないのが普通です。その少ない時間で結果をだしていかなればならないのが難しいところです。週1回、訪問リハビリの時間だけ関節可動域訓練や筋力強化訓練をしただけで関節可動域や筋力を維持することはできないと思います。つまり訪問リハビリでは、リハビリの時間だけリハビリをすればよいのではなく、その時間以外のリハビリをどうしていくのかを考えないといけないのです。

そうなると、ホームプログラムを作成し患者さん自身や家族の協力のもと、リハビリを続けてもらう必要があります。このホームプログラムのメニューを考え、管理することも訪問リハビリの大切な仕事になります。しかし、せっかくプログラムを作っても、認知症の患者さんだとメニューが理解できない、本人のやる気がないなどでできないことがあります。また、家族にリハビリをしてもらう方法もありますが、ただでさえ介護で疲弊している家族をさらに疲弊させてしまう可能性もあります(そのため、介護者の疲労度などを考慮してプログラムを調整する必要があります)。

そこで考えられるのが、ヘルパーや訪問看護師にリハビリをしてもらう方法です。指導する手間はありますが、リハビリの時間を確実に増やすことができます。

(投稿者:斉藤 揚三)

寝たきりよりも座りきり2017年09月22日 

2016/11/17 日本慢性期医療協会の武久会長が、寝たきりの患者を半分に減らすために、10カ条のスローガンを発表しました。

その8に「寝たきりよりも座りきり」というスローガンがありました。
座ることにより心肺機能に負荷がかかり、身体機能の回復につながるとしています。

これはとても良いスローガンだと思います。

当院でも寝たきりの患者さんを多く診ていますが、その方のリハビリをどうするのかというのが問題になります。

しかし、ベッドをギャッチアップするだけでも、あるいは車いすに移乗するだけでも立派なリハビリになります。

座ることさえできれば、デイサービスにも行けて、寝たきり状態よりも行動の幅が広がっていきます。

患者さんのご家族があきらめてはいけません。

寝たきり状態にしないために「寝たきりよりも座りきり」をスローガンにして、起こしていってほしいです。

※寝たきり状態が長い方を急に起こすと、血圧が下がることがあります。
※座ることで、臀部の褥瘡のリスクは高まります。

(投稿者:斉藤 揚三)

高齢者の転倒予防2017年09月15日 

転倒に対する運動介入の効果

Sherrington C, Whitney JC, Lord SR, Herbert RD, Cumming RG, Close JC. Effective exercise for the prevention of falls: a systematic review and meta-analysis. J Am Geriatr Soc 56: 2234-2243, 2008.

この論文は、高齢者の転倒予防に関するRCTのメタアナリシスです。

結論として、運動により転倒を17%減らせるようです。

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上の表を見てもらうと分かるように、転倒予防に最も効果が高かったプログラムは、
高強度の運動介入(50時間を超える)でかつウォーキングを含めないバランス訓練を含むプログラムでした。(RR 0.58)

バランス訓練が転倒予防に効果的なのも分かりますが、驚くことに、バランス訓練をしないでウォーキングをすると逆に転倒が増えるのです。(RR 1.20)

すなわち、転倒リスクの高い高齢者に、安易に「歩け」というのは無責任な対応になるのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

間違いだらけのリハビリテーション2017年05月13日 

『間違いだらけのリハビリテーション』(三好正堂、経営者新書)

この本はすでに絶版になっているのか入手が困難ですが、筆者が会長を務める浅木病院さんに連絡し、ご厚意で定価で譲っていただきました。
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リハビリは30年前と比べて治療成績が悪くなっているようです。筆者はその理由は、額に汗する地道な治療が少なくなってきたためではないかと言います。患者さん自身が筋活動を伴う訓練を行わなければならないとし、その訓練として起立―着席運動を勧めています。起立―着席運動とは、手すりと椅子さえあればでき、手すりに捕まって立っては座わるというのを繰り返す簡単な訓練です。筆者の病院では2時間近くかけて起立―着席運動を1400600回も!行っているそうです。このリハビリによって、目覚ましい治療成績を上げた症例が本書で何例も紹介されています。また、副次的な効果として、嚥下・呼吸機能の改善、麻痺側の改善、排尿・排便障害の改善などもあるようです。

面白いと思ったのは、筆者の病院では、運動能力の改善のために肥満の人は低カロリー食で減量をします。起立―着席運動+減量で成果を上げた症例も取り上げられていました。

いままで起立訓練の効果は知っていたのですが、今後さらに患者さんに啓蒙していきたいと思っています。

(投稿者:斉藤 揚三)

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