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くりはら訪問クリニック

スタッフブログ

ポリファーマシー

老衰からの復活!2018年07月05日 

症例:96歳女性

既往歴:アルツハイマー型認知症、狭心症、慢性心不全、高脂血症、右大腿骨転子部骨折術後

当院初診までの経過:H30年2月中旬頃から徐々に歩行器歩行が難しくなってきていました。H30年3月末頃より、食欲不振、歩行困難となり、通院が困難となったため、当院を紹介されました。H30年4月初めに当院を初診した際には、寝たきり状態で、呼びかけに対する反応も希薄、食事も1食あたり数口程度の摂取量でした。診察の結果、老衰状態と考えられ、当院で介入してもどこまで回復するのか分かりませんでしたが、できる限りの事をしてみることにしました。もちろん、回復しない可能性は高いこと、急変もあり得ることは説明しました。前医の処方薬は以下になります。

ラニラピッド錠0.05mg  1錠
ダイアート錠30mg 1錠
プラバスタチン錠5mg 1錠 
リスパダール内用液1mg
エディロールカプセル0.75μg 1C
L-アスパラギン酸Ca錠 分1 朝食後
メマリーOD錠20mg 1錠 分1 夕食後
ペルサンチン錠25mg 3錠 
マグミット錠500mg 3錠
カロナール錠200mg 6錠 分3 毎食後
アストミン錠10mg 2錠 分2 朝夕食後

11剤の薬がでていました。まず、必要最小限の薬とすることで、食欲が回復することを期待しました。また、濃厚流動食による栄養補給と訪問リハビリを導入しました。

初診時に以下の処方薬に切り替えました。11剤→6剤への減薬。

ラニラピッド錠0.05mg 0.5錠
フルイトラン錠1mg 分1 朝食後
エディロールカプセル0.75μg 1C 
メマリーOD錠10mg 1錠 分1 夕食後
シグマート錠5mg 2錠 分2 朝夕食後
エンシュア・H750ml 分3 毎食後

その後、食欲は少しずつ回復してきました。しかし、せん妄が現れるようになり、ジプレキサ2.5mgを追加しました。フルイトランは中止し、メマリーも漸減、中止しました。エンシュアは飲むと下痢になるためほとんど摂取できませんでした。

その後、昼夜逆転がみられるようになり、ジプレキサをセロクエルに変更。現在は以下の処方薬になっています。

ラニラピッド錠0.05mg 0.5錠 分1 朝食後
エディロールカプセル0.75μg 1C 
セロクエル25mg錠 1錠 分1 夕食後
シグマート錠5mg 2錠 分2 朝夕食後

現在、食事は3食を全量摂取でき、夜も眠れています。また、訪問リハビリによりADLも改善し、見守りの上で歩行器歩行もできています。バーセルインデックス(ADLを評価する指数。点数が高いほど自立している)も2か月半で5点→65点に大幅に回復しました。ここまでうまくいくことも珍しいですが、こういった症例もありますので取り上げてみました。

(投稿者:斉藤 揚三)

当院での減薬の1例2018年05月25日 

症例:94歳 女性
経過:平成30年1月に転倒して左肩を骨折してから寝たきり状態となり通院が困難となったため当院の訪問診療を希望された。

平成30年3月から当院の訪問診療が開始されました。初診時の状態ですが、認知症により意思疎通はできませんでした。食欲不振もあり、1食あたり数口程度の摂取量でした。また頻尿があり、診察中もポータブルトイレに移るような状態でした。ADLはほぼ寝たきり状態で、全介助でポータブルトイレに移るレベルでした。仙骨部に褥創がありました。

前医で処方されていた薬は以下になります。
problem listを作成し、どのように減薬したのかを書いていきます。

ベシケアOD錠5mg 1錠
バルサルタン錠80mg 1錠
ルーラン錠4mg 1錠 分1 朝食後
ラシックス20mg 1錠 分1 朝食後 隔日
メマリー錠20mg 1錠 分1 夕食後
メチコバール錠500μg 2錠 分2 朝夕食後
ロゼレム錠8mg 1錠
ベルソムラ錠10mg 1錠 
プルゼニド錠12mg 2錠 分1 就寝前
リスパダール内用液1mg/ml 0.5ml 不穏時頓用

problem list
#1 認知症
前医より精神科に紹介されており、精神科では、脳血管障害を伴うアルツハイマー型認知症の診断で、ルーラン4mg、メマリー20mg、メチコバールが処方されていました。ルーランは非定型抗精神病薬です。介護者より、ルーランの処方前後で精神状態に変化はなかったとのことだったので中止としました。メマリー(メマンチン)はNMDA受容体拮抗薬で、中等度および高度アルツハイマー型認知症における症状の進行を抑制する薬です。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」ではコリンエステラーゼ阻害薬、メマンチンの終了基準として、①意思疎通が図れない、寝たきり状態または身体障害が悪化した患者、②明らかに薬物の効果が認められなくなった場合、③何らかの有害事象を発生した場合、があげられています。当症例は①および③に該当していると考えられたため、20→10→5mgと診察の度に減薬し、最終的に中止しました。また、採血でビタミンB12は足りていたのでメチコバールは中止しました。

#2 頻尿
前医では過活動膀胱治療薬のベシケアが処方されていました。しかし効いている感じはなく、また抗コリン作用により認知症を悪化させている可能性もあるため中止しました。中止しても頻尿の悪化はありませんでした。また、メマリーの副作用に頻尿があり、メマリーも止めたことで結果的に頻尿は改善しました。

#3 食欲不振
多剤併用やメマリーにより食欲不振となっている可能性がありました。当院ではラコールを処方しました。その後、食欲はありすぎるくらいに改善し、ラコールは不要となりました。

#4 仙骨部2度褥創
寝たきり状態になっているため褥創ができたと思われました。初診時にケアマネージャーに高機能エアマットレスの導入を指示しました。ワセリンの塗布を指示しただけですが、エアマット導入により1か月で上皮化しました。

#5 高血圧症
バルサルタン80mg、ラシックス20mgが処方されていました。ラシックスは隔日投与のため服薬コンプライアンスに不安があります。初診時採血でCr0.88、eGFR44.8mL/minと腎機能が中等度~高度低下していました。腎保護作用のあるARBのミカルディス20mgの1剤の処方としました。

#6 不眠症
ベルソムラ10mg、ロゼレム8mgが処方されていました。ベルソムラは10mgが処方されていましたが、添付文書どおりの15mgを処方しました。ロゼレムは止めましたが、内服していたほうが眠れるようだとのことで、途中で再開しました。

#7 便秘症
ベシケア、メマリーの副作用に便秘もあります。中止により便秘はやや改善しました。前医から処方されていた下剤も大量に余っていたので、調整して使ってもらうようにしました。

#8 左肩関節脱臼骨折後
初診時より左肩痛はなく、なにもしていません。

2か月後の当院の処方
ミカルディス20mg 1錠 分1 朝食後
ベルソムラ錠15mg 1錠 
ロゼレム錠8mg 1錠 分1 就寝前

結果的に8剤から3剤に減薬しました(下剤は除く)。初診から2か月くらい経過しましたが、服薬調整によって、食事摂取量、頻尿、BPSD(認知症の周辺症状)ともに改善しました。 

訪問診療のいいところは、総合的に診ることで、処方の優先順位をつけて減らすことができる点です。疾患の数だけ専門科にかかっている場合は、このような減薬は難しいはずです。超高齢化社会を迎える日本では、今後、このような診療が求められているのではないかと考えています。

 (投稿者:斉藤 揚三)

厚生労働省によるポリファーマシーの指針2018年02月21日 

薬剤の多剤併用により薬剤有害事象が起きていることをポリファーマーシーといい、社会問題にもなっています。当院ではできるだけ、薬を減らせないかを考えて診療しています。

今日のニュースで、厚生労働省によるポリファーマシーの指針がでていました。

今後は「厚生労働省の指導で薬を減らすようにしているのです」と患者さんには説明しようと思います。

記事にもあるように、薬の副作用を薬でカバーしていくと訳の分からないことになってしまいます。これを「処方カスケード」と言います。

例として挙げると…

高齢者が食欲不振となる

→食欲増進効果があるスルピリド(ドグマチール®)が処方される

→ドグマチールの副作用である薬剤性パーキンソニズムが出現する(50mg/日以上だと出現しやすいです)

→抗パーキンソン病薬が処方される

→抗パーキンソン病薬によってドーパミンが増えると相対的にアセチルコリンが減り認知機能が低下する

→コリンエステラーゼ阻害薬が処方される

→コリンエステラーゼ阻害薬の副作用である食欲不振が生じ、ますます食欲不振に

このように、食欲不振のために処方したはずなのに、真逆の結果となってしまっているのです。

厚労省「高齢者の薬、減らして」 医師ら向け使用指針

2/21(水) 20:06配信

朝日新聞デジタル

 薬はなるべく減らして――。厚生労働省は21日、高齢者に適正に医薬品を使うための指針案を有識者会議に示し、おおむね了承された。お年寄りは複数の病気を持つことが多く、多くの薬を使いがちだ。指針案は医師や薬剤師向け。主な副作用を示し、薬の減量や中止で症状が改善することもあると指摘して減薬を促す。厚労省によるこうした指針は初めて。

 厚労省によると、薬局で薬をもらっている75歳以上の4割が1カ月間で5種類以上、25%は7種以上を一つの薬局で受けている。65~74歳でも3割弱は5種類以上という。複数の薬局を利用する人もいて、1人あたりの薬の数はさらに多いとみられる。その一方、高齢になると体内で薬の濃度が上がりやすくなり、成分が体外に排出されるまでにかかる時間も延びる。薬の副作用に薬で対処する悪循環もみられる。

 指針案は、のんでいる薬による治療が有効なのか、薬以外の方法はないか、検討することを勧める。さらに、複数の医療機関・薬局を利用して1人が同じ種類の薬を複数のんでいないかを確認することを求めている。ただし機械的に薬を減らすと、持病が悪化する恐れがあるので減量や中止は慎重に行い、経過観察することを推奨する。

 主な副作用とその原因とみられる薬の例示もした=表。ふらつきや転倒は降圧薬によることがある。食欲の低下は非ステロイド性抗炎症薬、便秘は睡眠薬が原因になりうるという。案の作成に関わる秋下雅弘・東京大教授(老年病学)は「3種類以上の薬ののみ合わせに関するデータはなく、どんな相互作用があるのかがわからない。薬はなるべく少ないほうが副作用は少ない。ただし患者の自己判断で薬を減らすのは危険なので、医師や薬剤師に相談してほしい」と話した。

 一般の意見を聞いたうえで、4月以降に指針を正式に決める。厚労省の担当者は「これまでも各学会のガイドラインはあったが、それぞれの内容を横断的にまとめ、使いやすい指針をめざした。医療現場に浸透させたい」と話す。(福地慶太郎)

■副作用症状と原因となる主な薬

【症状】原因となる主な薬の種類

【ふらつき・転倒】中枢性などの降圧薬、睡眠薬、抗不安薬

【記憶障害】中枢性などの降圧薬、睡眠薬、抗不安薬

【抑うつ】中枢性降圧薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬

【食欲低下】非ステロイド性抗炎症薬、緩下剤、抗不安薬

【便秘】睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬

※厚労省の指針案から

「高齢者の薬物療法」の講演2018年02月01日 

薬剤の多剤併用により薬剤有害事象が起きていることをポリファーマーシーといい、社会問題にもなっています。当院ではできるだけ、薬を減らせないかを考えて診療しています。ポリファーマシーの問題で最も有名な東京大学 秋下雅弘先生の講演をまとめてみました。

第19回 日本在宅医学会大会 名古屋 2017.6.17

『高齢者の薬物療法 東京大学 秋下雅弘先生』の講演のまとめ

〇高齢者の薬物有害事象発生頻度
年齢が高くなればなるほど副作用がでやすい傾向
後期高齢者(75歳以上)では15%超に発生
高齢者の緊急入院の3~6%は薬物が原因

〇高齢者で薬物有害事象が増加する要因
複数の疾患を有する→多剤服用
臓器予備能の低下(薬物動態の加齢変化)→過量投与
認知機能・視力・聴力の低下→アドヒアランス(服薬率)低下、誤服用、症状発現の遅れ

〇薬物動態に関連した生理機能の加齢変化
消化管の機能は低下するのに、薬物吸収は変化しないのがポイント!つまり、血中濃度が上がりやすい。

〇薬物動態からみた対処法
少量投与から開始する(急性期疾患は例外)
長期的には減量も考慮

〇ポリファーマシーの定義
薬物有害事象、アドヒアランス不良など多剤に伴う諸問題を指すだけでなく、最近では、不要な処方、あるいは必要な薬が処方されない、過量・重複投与など薬剤のあらゆる不適切問題を含む概念へ発展。

〇何剤からポリファーマシー?
単純に数だけで決まるわけではないが…
薬物有害事象の頻度↑ 6剤以上
転倒の発生頻度↑ 5剤以上
5~6剤をカットオフとしてもよい

ポリファーマシーは栄養・ADL・認知機能低下に寄与するという報告あり

〇年齢階層別にみた処方薬剤数
75歳以上 5剤以上40%超える、7剤以上25%
ポリファーマシーのピークが80~85歳のところにあるのが驚き!

〇多疾患併存がポリファーマシーの主因
疾患数が増えれば増えるほど薬剤数が増える
複数科受診もポリファーマシーの要因→在宅医療を導入するメリット

〇ポリファーマシーを避けるために
予防薬のエビデンスは妥当か?高齢者に当てはめてよいか
対症療法は有効か?
薬物療法以外の手段は?
優先順位は?

〇要介護高齢者は管理目標が違う?
低血糖は認知症のリスク
逆に認知症は低血糖の発生リスク
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標はゆるくなっている

JSH2014 75歳以上の降圧目標 150/90mmHg未満
血圧が低すぎると認知機能が低下する

〇特に慎重に投与を要する薬物は
認知機能低下を理由とした「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」の代表的薬剤
抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系、抗コリン作用のある薬剤(三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬、オキシブチニン、H1受容体拮抗薬、H2受容体拮抗薬)

抗コリン系薬剤の累積投与により認知症発症リスクが増える

〇アドヒアランス(服薬率)をよくするための工夫
介護者が管理しやすい服用法 出勤前、帰宅後などにまとめる
秋下先生は高齢者には昼の薬はほとんど出していない

〇医師以外の職種だからできること
1薬を飲む様子から、服薬に困難がある状況が分かる
2飲むと体調が悪い、本当は飲みたくない、実際に飲んでいないといった訴えは医師以外の職種に伝えられることが多い
3医療環境の変化に伴い処方調剤の誤りが起きやすい
4疑問を感じたらとにかく確認を。医師以外のメディカルスタッフがエラーを防ぐ最後の砦

(投稿者:斉藤 揚三)

高齢者「薬漬け」適正指針の記事2017年12月24日 

12/24の産経新聞の一面(スマートフォンから無料で見ることもできます)にポリファーマシーの医療記事が載っていました。こういった記事によって、ポリファーマシーの問題が一般の方にも広まっていくといいですね。

内服薬が多くなる原因としては、記事にもあるように患者側が薬を欲しがるということもあるのですが、医療側からは足し算の医療をしていることが原因です。

足し算の医療とは、患者の訴えに全て薬で対応しようとするところから始まります。医師は薬を出すことだけが仕事ではありません。訪問診療では患者さんの生活背景を直接見ることができるので、薬に頼らない、より総合的なアドバイスをすることができます。

高齢者「薬漬け」適正指針 国が初 副作用の有害性明記

高齢者が多くの薬を服用する「薬漬け」について、厚生労働省が、医師や薬剤師らを対象に服用の適正指針案(骨子)をまとめたことが23日、分かった。国レベルで高齢者の内服薬に関する指針を作成するのは初めて。薬の多種類の服用は副作用などのリスク増が指摘されている。日本では「患者がとりあえず薬をもらいたがる」といわれ、医療費の削減も期待される。指針は来春にも完成し公表、一般国民向けも来年度に考案するという。

厚労省によると、60歳を超えると高血圧や骨粗鬆(こつそしょう)症など複数の疾患を抱えることから、服用する薬の種類が増加し、75歳以上でさらに多くなる傾向にある。レセプト(診療報酬明細書)調査によると、70歳以上の患者で平均6種類以上服用している。

 東京大などの患者調査では、薬を6種類以上服用している場合に副作用が出やすくなったりするケースが急増。転倒の発生頻度が2倍近くに増え、認知障害のリスクが増加するというデータもある。

 このため指針案では「医療の質を向上させ、患者の健康に資すること」という目的を記載。高齢者が薬を服用することで生じる物忘れや目まい、失神など「有害事象」を列挙した。

 安全性確保の観点から、単に薬の数を減らすのではなく、適正な処方内容への見直しが重要であることを明記。複数の医師にかかっている場合は「お薬手帳」を活用してかかりつけ薬剤師にチェックしてもらうことも念頭に、「医師、薬剤師、看護師などが一元的に情報を集約し、連携すること」とした。

 NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」が今秋、約5千人の高齢者に調査したところ、処方された薬を飲み残す患者も多く、47%が飲み残しの経験があると答えた。

 同法人代表で東京家政大の樋口恵子名誉教授(家族関係学)は「服薬を不安に思う高齢者は増えている。『人生100歳時代』になり、いずれ自分で薬が管理できなくなる。薬は“命のもと”であり、薬の適正なあり方を考え直さなければならない」と話した。

(投稿者:斉藤 揚三)

当院での減薬の1例2017年12月20日 

薬剤の多剤併用により薬剤有害事象が起きていることをポリファーマーシーといい、社会問題にもなっています。当院ではできるだけ、薬を減らせないかを考えて診療しています。

今回は当院で行った減薬の1例を載せてみます。

症例:87歳 女性

既往歴:左大腿骨転子部骨折で手術歴あり、高血圧、不眠症

前医での処方
アムロジピンOD錠2.5mg 1錠
リバロOD錠1mg 1錠
ベタニス錠50mg 1錠
エディロールカプセル0.75mg 1C 分1 朝食後
レバミピド錠100mg 2錠
エブランチルカプセル15mg 2C 分2 朝夕食後
ハルシオン錠0.125mg 2錠 分1 就寝前

 アムロジピンOD錠
Ca拮抗薬です。高血圧治療の第一選択薬であり、処方していても問題ないと考えます。薬剤性の浮腫に注意が必要ですが、本症例ではみられませんでした。

リバロOD錠
スタチンです。心血管疾患の2次予防ではエビデンスはありますが、当症例は心血管疾患の既往もなく、積極的な内服の適応はないと考え中止とします。

ベタニス錠
過活動膀胱の薬です。抗コリン作用があります。抗コリン作用により、便秘、口渇、せん妄などの副作用が生じる可能性があります。現在、頻尿の症状はありませんでした(薬が効いていて症状がない可能性もありますが)。長期で漫然と使っていると認知機能の低下を起こす可能性もあるため、一度中止して、頻尿が再発するかどうかみてみることにします。

エディロールカプセル
活性型ビタミンD3製剤です。骨粗鬆症ガイドラインでは椎体骨折にはグレードA、大腿骨近位部骨折にはグレードCとなっています。当症例では再転倒により右大腿骨近位部骨折を受傷する危険性があります。それをどうしても予防したければ大腿骨近位部骨折に対するグレードAのビスホスホネート薬かデノスマブを使用します(本症例では使用しません)。また、エディロールには転倒を抑制する効果もあるため継続します。

レバミピド錠
防御因子増強薬です。エビデンスもなく、日本でしか使われてない薬です。意味がないと思われ中止します。

エブランチルカプセル
α受容体遮断薬ですが、高血圧治療の第一選択薬ではありません。起立性低血圧の副作用により転倒のリスクも高くなるため中止します。

ハルシオン錠
入院中は眠れなかったため処方されていたようですが、家に戻ってからは内服しなくても眠れているということです。ベンゾジアゼピン系は転倒のリスクを高め、認知機能にも影響を及ぼします。ハルシオンには逆行性健忘という副作用もあるため中止します。

当院の処方
アムロジピンOD錠2.5mg 1錠
エディロールカプセル0.75mg 1C 分1 朝食後

5剤以上の内服は転倒のリスクが高くなりますが、7剤から2剤にまで減薬できました。また、転倒の原因になりうる、ベタニス、エブランチル、ハルシオンを中止しました。

転倒しても骨折しないように骨を強くするという考え方より、転倒しないようにするという方が大切だと考えています。

(投稿者:斉藤 揚三)

薬を一切使わない管理2017年11月10日 

医学教育の基礎を築いたウィリアム・オスラーは、以下の名言を残しています。

Nickel-in-the-slot,press-the-button therapeutics are no good.You cannot have a drug for every malady.

“スロットにニッケル銀貨を入れてボタンを押すだけ、このような治療は好ましくない。すべての治療に必ずしも薬を使う必要はない。”

この言葉の通り、薬を出すことだけが医者の仕事ではありません。

当院では薬を一切使わないで管理している患者さんが少なからずいます。

内服ができなくなった方、服薬を拒否している方、いらない薬をなくしていったら全てなくなった方など様々です。

不思議と思い切って薬を全てなくしてみると、入退院を繰り返していた人が、安定して入院しなくなったりすることがあります。

究極の減薬は無処方であると考えています。

(投稿者:斉藤 揚三)

ポリファーマシー2017年04月10日 

One of the first duties of the physician is to educate the masses not to take medicines. -Sir William Osler
“臨床医が行うべき責務は、薬を飲まないよう大衆を教育することである。”

ポリファーマシーという言葉が最近言われるようになりました。
ポリファーマシーとは何かというと、薬剤の多剤投与(5~6剤以上)で有害事象が起こっている状態を言います。
東京大学老年病科 秋下教授が、『薬は5種類まで 中高年の賢い薬の飲み方』(PHP新書)という本で、多剤投与による危険性を一般にむけても警鐘されています。
薬は5種類以上で転倒リスクが高まるとも言われています。
当院でもできるだけ処方薬を減らし、必要な薬のみ処方するように心がけています。

以下 パラダイムシフト好き外科医のブログ より抜粋

私は新規の入院患者さんが来た時、ほとんどの内服薬を切ります。

全然自慢にならないけど、切った処方薬の累計数は、日本一だと自負しています。

 10種類とか、一気に切ります。

 処方医に気を使って・・・とか、この薬は必要だから・・・とか、そんな感覚は一切ありません。

 とにかく、切って切って、切りまくる。

 昔の剣豪ですね。

 切って患者さんに具体的に問題が生じたこと、一度もありません。

当院もこの姿勢を見習いたいと思います。

(投稿者:斉藤 揚三)

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