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バイタルサイン

バイタルサインの勉強会2018年10月19日 

本日はとあるグループホームからの依頼で、「バイタルサインの見方や考え方」についての勉強会をしてきました。

昨年度、当院が主催して行った勉強会とほぼ同じ内容です。明日からの仕事に少しでも役立つ事があればと思い、話してきました。

さて、本日の救急対応についての話を一つ。

本日夕方、当院で訪問診療していて、施設に入居している80歳台の患者さんについての報告がありました。今朝から頭痛があり、昼食後に嘔吐。夕方になって38.1℃の発熱と寒気がみられるとのことでした。

至急往診して、まずはバイタルサインを確認しました。
バイタルサインは、意識清明、呼吸数30回/分、血圧144/70mmHg、脈拍118回/分、SpO2 94%、体温38.6℃でした。悪寒戦慄もみられました。

SIRSの診断基準より、①38℃以上②呼吸数20回/分以上③脈拍90回/分以上に当てはまっているため敗血症が疑われました。

敗血症では、頑張り切れなくなってくると血圧低下や意識障害がみられます。この症例ではその症候はなく、むしろ、頑張っている症候である頻脈や高熱がみられました。

しかし、この状態を放置していると、いずれ頑張り切れなくなってきて、血圧低下や意識障害をきたしてきます。その時点で対応すると後手後手に回ってしまいます。

また、80歳以上で悪寒戦慄があると菌血症を強く示唆します。有名な格言に「患者が震えていれば、医師も震えなければならない」というものがあります。

私も震えるような気持ちで、感染源を検索しました。右上腹部に圧痛があり、エコーで胆のうや総胆管に拡張がみられたことから、急性胆管炎を疑いました。

胆道ドレナージなどの治療が必要になる可能性も考え、病院へ連絡し紹介状を作成、救急車を手配しました。

敗血症が疑われるため、また勉強会の時間も迫っていたため、ここまでを20分くらいの超高速で終わらせました。

しかし、週末の仕事終わりの時間帯に紹介してしまい、病院の先生には大変なご迷惑をおかけしたことと思います。もう少し早い段階で施設から連絡があれば、もっと落ち着いた対応ができたのではないかと思います。

熱が上がる前の早い段階で異常に気付くには、呼吸数を測らなければなりません。

本日の勉強会でもさんざん言いましたが、バイタルサインの中では呼吸数が最も重要!なのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

SIRS診断基準の実臨床での使い方2018年08月13日 

施設スタッフに、「患者さんが何℃以上であれば連絡したほうがよいですか?」と聞かれることがよくあります。

一応、「38℃以上になれば連絡してください」などど答えていますが、実際は、医師は熱だけで重症度を判断しているわけではありません。他のバイタルサインと合わせて、重症度を判断しています。

38℃以上の熱がでている方がいた場合、脈拍や呼吸数に注目してください!

脈拍が90回/分以上だったり、呼吸数が20回/分以上の場合は、重症の可能性があります。

この根拠はSIRS(全身性炎症症候群)の診断基準です。

SIRS
①体温>38℃または<36℃
②心拍数>90/分
③呼吸数>20/分またはPaCO2<32 torr
④白血球数>1,2000,<4000/mm3または未熟顆粒球>10%
の2項目以上をみたす病態と定義される。

SIRSは敗血症の診断に古典的に用いられていた指標(現在はqSOFAを使う)ですが、熱が出ている際の重症判断のスクリーニングに使うのが良いです。

冒頭の質問には、「体温が38℃以上でなおかつ、脈拍が90以上、あるいは呼吸数が20以上であれば連絡してください」と本来は答えたいのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

高齢者救急2018年08月08日 

高齢者救急が難しいのは、高齢者は症状が非典型的であったり、認知症があるとうまく症状を訴えられないなどの点にあります。

例えば、高齢者の肺炎では約1/3で咳や発熱がなかったりします。咳や熱がないからと言って、肺炎は否定できないのです。

今回は、高齢者を介護する際に、どういった点に注意してみていけばよいのかについてあげてみます。

なんとなくいつもと違う。様子がおかしい。

これは軽度の意識障害の可能性があります。高齢者の感染症では、初期に、このような軽度の意識障害が現れることがあります。

急にぼけた。

通常、認知機能は徐々に低下します。しかし、急にぼけたとなると、これは、せん妄の可能性があります。せん妄は通常、急に環境が変わったりした場合や夜間に起こることが多いです。環境の変化もなく、日中に起きたりした場合は、内科疾患(感染症、心血管疾患、低血糖など)が隠れているかもしれません。

急に立てなくなった。歩けなくなった。

老化はゆっくりと進行するので、徐々に歩けなくなるのが普通です。急に歩けなくなる場合は、感染症、心血管疾患などが背景にある可能性があります。

・しきりにあくびをしている。

あくびは脳に酸素が足りていないというサインです。循環がうまくいかなくなってきているのかもしれません。

不安を訴える。多弁になる。

これも脳血流低下のサインかもしれません。

このようなサインにうまく気づくことができれば、悪くならないうちに早めに対応することができます。しかし、こういったサインに気づかずに様子をみていると、急変する場合もあります。

こういったサインを見た場合は、まずはバイタルサインをチェックするのが基本です。その中でも、最も重要なのは呼吸数です。呼吸数が20回/分以下ならひとまず安心してよいでしょう。

(投稿者:斉藤 揚三)

呼吸評価のまとめ2017年05月30日 

5月19日から6回にわたってバイタルサインと呼吸のことについて書いてきました。

丁寧に説明したつもりですが、多少くどかったかもしれませんので、一度、簡単にまとめてみます。

①バイタルサインとは「 生命兆候 」のことであり、「生きているのか?」「死んでいるのか?」「死にそうなのか?」の指標です。具体的には「呼吸数、呼吸様式、動脈血酸素飽和度(SpO2)、チアノーゼ所見、血圧、脈拍、不整脈の有無、意識レベル、尿量、体温」のことです。

②その中で一番大切なバイタルサインは呼吸数と呼吸様式です。

③呼吸はパルスオキシメーターで判断するものではなく、「規則正しく呼吸をしているか?」「呼吸は正常(速くも遅くもない)か?」「唇や指先が紫がかっていないか?」という「身体所見」で評価します。

④呼吸を評価するときは、まず患者の脈(橈骨動脈)を触って「いかにも脈をみています」をいう雰囲気をだしつつ、実は呼吸をみるという方法がおすすめです。

⑤10秒くらい呼吸を観察し、規則正しい呼吸になっていることを確認。「1回の呼吸が何秒かかっているか」を判断します(仮にx秒/回とします)。60(秒/分)をx(秒/回)で割れば呼吸数(回/分)となります。

(投稿者:斉藤 群大)

呼吸を数える方法②2017年05月29日 

ではいよいろ私が実践している呼吸の数え方を公開いたします。

以下①~④の通りです。

①10秒くらい呼吸を観察します。

②規則正しい呼吸になっていることを確認します。

「1回の呼吸が何秒かかっているか」を判断します(仮にx秒/回とします)。

④60(秒/分)をx(秒/回)で割れば、あら不思議(?)。 60/x=呼吸数(回/分)となります。

 

この式に当てはめれば約10秒で、時計も使わずに、呼吸数を評価することができます。

 1回の呼吸が2秒 → 30回/分(かなりの頻呼吸 → 死にそう?)

 1回の呼吸が3秒 → 20回/分(頻呼吸 → 危機意識をもって診察する)

 1回の呼吸が4秒 → 15回/分(速めの呼吸)

 1回の呼吸が5秒 → 12回/分(正常な呼吸)

 1回の呼吸が6秒 → 10回/分(ゆっくりめな呼吸 穏やかな呼吸)

 1回の呼吸が10秒 → 6回/分(徐呼吸 → 止まるかも?)

 っていう感じです。

ちなみに1回の呼吸が2秒以上3秒未満であれば、24回/分でも、25回/分でも、26回/分でもいいです。

そこにこだわることに何の意味もないからです。

 

(投稿者:斉藤 群大)

呼吸を数える方法①2017年05月26日 

 

呼吸数とは1分間の呼吸回数のことです(単位は 回/分 )。

生体情報モニターの中には呼吸数を表示するものもあります。

モニター

呼気中の二酸化炭素や心電図の電気抵抗の変動から呼吸数を解析して表示しているのです。

ところが、そのようなモニターを装着している患者はICU(集中治療室)の患者など、ごく一部です。

つまり、多くの場面では測定機器を用いずに呼吸数を評価しなくてはなりません。

ではどのようにして呼吸回数を数えればいいのでしょうか?

 まず基本的なことですが、呼吸をしているかどうかは、前頸部~前胸部の動き(上がり下がり)で判断することが多いです。

救急医療では「見て、聞いて、感じて」という標語が有名で、口元に耳を近づけつつ胸の動きを目で見るという方法が推奨されていますが、一般診療の場面ではそこまでしなくてもいいと思います。

次にいよいよ呼吸数(1分間に何回呼吸をしているのか)をカウントすることになります。

「 時計で1分間を計測しその間に何回呼吸をしているか数える」というのは、間違いではありませんが、時間がかかりすぎて現実的ではありません。

時間短縮のために30秒の呼吸数を2倍したり、20秒の呼吸数を3倍したり、15秒の呼吸数を4倍したり、10秒の呼吸数を6倍したり・・・、というのが一般的な方法かもしれません。

しかし私の方法は少し違います。

次回、私の方法をご説明しますが、それまでにそれがどういう方法か、余裕がある方は考えてみてください。

(投稿者:斉藤 群大)

呼吸を評価する前の準備2017年05月25日 

呼吸数や呼吸様式をみるために、患者に向かって「これから呼吸状態をみます」とか「呼吸数を数えるのでふつうに呼吸していてください」とか説明するのはおかしなことです。

患者さんが呼吸を意識すると、変に速くなったり遅くなったりして「不自然な呼吸」になってしまうからです。

かと言って、何も言わずにじっと患者の息遣いをみていると、「この人はいきなり黙りこんで何をしているのだろう?」と患者に不信感を抱かせることになります。

また、その沈黙に耐えられず、患者が何かを話し始めるかもしれません。

それでも呼吸の評価はできなくなります。

では呼吸を評価するにはどうすればよいのでしょうか?

私の実践している方法は、まず患者の脈(橈骨動脈)を触って「いかにも脈をみています」をいう雰囲気をだしつつ、実は呼吸をみるというものです。

同時に、本当に脈の診察も行うことができ、一石二鳥です。

さらに、手指の皮膚温や指先の色合い、冷や汗の有無、皮膚の張りなどもさりげなく確認できれば、さらに「所見とり名人」に近づけます。

「脈をみられているんだな」と患者が思えば、沈黙も不自然ではありませんし、患者がしゃべりだすということもまずありません。

 この事前準備により、スムーズに落ち着いて呼吸を評価することができます。

次回は、呼吸の数え方について説明する予定です。

(投稿者:斉藤 群大)

「 呼吸 」 をどう評価するか?2017年05月24日 

看護師に「呼吸状態はどうですか?」と聞くと、「サーチ(SpO2)は98%です」のような回答が返ってくることが多いです。

しかし、もし測定機器(パルスオキシメータ―)がなかったら、呼吸状態をどのように評価するのでしょうか?

ちなみにパルスオキシメータ―は指先の皮膚を流れる動脈血酸素飽和度を測定するものなので、指先の血の巡り(末しょう循環)が悪い患者さんではしばしば「 測定不能 」となります。

パルスオキシメータ―は確かに便利で素晴らしいものですが、そのような欠点(末しょう循環が悪いと信頼できない)もあるわけですし、機器に頼り切った呼吸の評価法はプロとしてふさわしいものではありません。

私からすると、パルスオキシメーターの数字はあくまでも参考データという認識です。

呼吸は

「規則正しく呼吸をしているか?」という呼吸様式

「呼吸は正常(速くも遅くもない)か?」という呼吸数

「唇や指先が紫がかっていないか?」というチアノーゼ所見

という「身体所見」で評価します。

測定機器からではなく、「 生の患者 」から所見を取るクセをつけるようにしましょう。

 次回は、実際に所見を取る方法を詳しく説明する予定です。

(投稿者:斉藤 群大)

「 呼吸数・呼吸様式 」というバイタルサイン2017年05月23日 

5月19日のブログでは「バイタルサインとはなにか?」について書きました。

そこでは「バイタルサインとは、呼吸数、呼吸様式、動脈血酸素飽和度(SpO2)、チアノーゼ所見、血圧、脈拍、不整脈の有無、意識レベル、尿量、体温のことだ」とやや断定的に書きました。

バイタルサインについての明確な定義というのはありませんので、異論のある方もいると思います。

「尿量はバイタルサインじゃないでしょ!」とか、「血糖値もバイタルサインじゃないの?」とか・・・。

ただ、「○○はバイタルサインか?××は違うか?」などというのは、はっきり言ってどうでもいいと思っています。

大切なことは「患者が死にそうなのか、死ななそうなのかを判断するためには何をみるべきなのか?」「なにが一番重要なバイタルサインか?」ということです。

いきなり結論を言うと

「一番大切なバイタルサインは呼吸数・呼吸様式」

です。

なぜならば

「生命が危機的な状況なのに穏やかに普通に呼吸をしているなどということは考えられない」

からです。

しかも

「呼吸数や呼吸様式を診るのに、特別な測定機器などは一切不要」

です。

慣れてくれば時計すら不要で、約10秒で判断できます(その方法は後日説明する予定です)。

 

私は医師という立場上、患者の容体について報告を受けることが非常に多いです。特に、患者の緊急性を示す指標としてバイタルサインは極めて重要ですので、真っ先に報告されます。

しかし、その報告の中で「呼吸数」が報告されることは極めてまれです。

カルテ、報告書、紹介状などにバイタルサインの記録をよくみますが、そこにも呼吸数が記録されていることはほとんどありません。

いかに「呼吸数」というバイタルサインがないがしろにされているかがわかるかと思います。

 

(投稿者:斉藤 群大)

バイタルサインとはなにか?2017年05月19日 

医療の現場では「バイタルサイン」という言葉がよく使われます。単に「バイタル」と略されることも多いです。

医者が「バイタルは?」と看護師に聞くと、看護師から「血圧は120の74、プルスは82、サーチは98です」などの返事が返ってくるといった具合です(ちなみにプルスとは脈拍(心拍数)、サーチとは「動脈血酸素飽和度(経皮的に測定した予測値)」のことです)。

時折、「バイタルは?」と聞くと、「120の74です」のような答えしか返ってこないこともあり、「バイタルって血圧のことだと思ってるの?」とツッコミを入れたくなり、正直ガッカリした気持ちになります(当院での話ではありません)。

では、そもそもバイタルサインとはなんなのでしょうか?

血圧、脈拍、動脈血酸素飽和度の3つのことなのでしょうか?

これは、医学生や看護学生でも知っているような基本的な事だと思われがちですが、この本質的な問いにしっかり答えることのできる人は少ないと思います(医療者でも正答率は高くないと思います)。

バイタルサインは英語では「 Vital Sign 」と書き、和訳すれば「 生命兆候 」となります。つまり

「生きているのか?」

「死んでいるのか?」

「死ななそうなのか?」

「死にそうなのか?」

死にそうだとすれば、どの程度死にそうなのか?」

の指標というわけです。

ところで、人が生命を維持するためには、なにがなくとも、以下の①~⑤が必要です。

 ①呼吸ができていること。

 ②呼吸によって、体に酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出すことができること。

 ③酸素を全身に送り届けるための血液(およびその成分)が十分に存在すること。

 ④血液を全身にめぐらせるためのポンプ(心臓)がしっかり機能していること。

 ⑤血液が流れて全身をめぐるためのパイプ(血管)に問題がないこと。

つまりこの①~⑤が正常かどうかを見るためのサイン(身体所見)が、バイタルサインということです。

①は呼吸数・呼吸様式をみればわかります。②は動脈血酸素飽和度(および呼気二酸化炭素濃度)やチアノーゼ所見の有無をみればわかります。③~⑤は直接みるのは難しいですが、血圧・心拍数・不整脈の有無をみれば大体わかります。

さらに、①~⑤に問題がない結果として、脳や心臓、肺、肝臓、腎臓などの重要臓器が正常に働くことができます。それが、意識が正常であったり、尿が十分にでているという結果につながります。つまり、意識レベルや尿量もバイタルサインです。

さらに生命を脅かすような感染症が起これば、炎症の結果として熱がでますし、異常な温熱環境・寒冷環境への暴露によっても生命活動は脅かされます。そういう意味では体温も重要なバイタルサインということができます。

 以上のことから「バイタルサインとは(現在の臨床医学では)、呼吸数、呼吸様式、動脈血酸素飽和度(SpO2)、チアノーゼ所見、血圧、脈拍、不整脈の有無、意識レベル、尿量、体温のことである」と言えるでしょう。

バイタルサインについては、さらに言いたいことがあるので、近いうちにつづきを書く予定です。

 

(投稿者:斉藤 群大)

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