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くりはら訪問クリニック

スタッフブログ

月別アーカイブ:2018年10月

在宅医療におけるエコーガイド下膝関節穿刺2018年10月30日 

訪問診療の際に、左膝を痛がり、左膝関節が腫れている患者さんがいました。

エコーを見ながら、膝関節穿刺をしました。

プローブは膝蓋骨の頭側に置きます。膝蓋上嚢に貯留した関節液である低エコーのスペースがみえます。平行法で穿刺します。

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ポケットエコー(Vscan)であっても、針の先端のべベルの向きまで分かります。

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エコーを使わなくても穿刺くらいできるじゃないかという意見もあると思いますが、エコーを使うメリットとしては、

①針の先端が見えるので安心感がある。大腿骨や大腿四頭筋腱に当てずに確実に針を進めることができる。
②関節液がどこにどのぐらい溜まっていて、関節液が抜けていく様子が視覚的に分かります。

この症例では15mlくらいの淡黄色透明の関節液を採取しました。

(投稿者:斉藤 揚三)

ガッテン!「認知症の人が劇的変化!”アイコンタクト”パワー全開SP」2018年10月27日 

10/24(水)、NHK『ガッテン!』で当院でも取り組んでいるユマニチュードが取り上げられていました。

ユマニチュードとは認知症の方に対するケアの技法です。

ユマニチュードは4つの柱に、「見る、話す、触れる、立つ」があり、これらを使って認知症の方をケアするのですが、番組では主に「見る」ことに焦点を当てていました。

番組では、ユマニチュードによって劇的に変化した患者さんが取り上げられており、スタジオでは驚きの声が上がっていました。

京都大学の研究で、ユマニチュードの創設者である、イヴ・ジネストさんの視線を解析するというのも出ていましたが、ジネストさんは、あらゆる状況でも視線が患者さんの目をとらえていた点が印象的でした。

こういった番組を通して、ユマニチュードが広く一般の方にも知られることはとても良いことだと思います。

ちなみに先日、寝たきりで暴力的な患者さんにユマニチュードを使って接したのですが、顔を近づけて診察しようとしたら、マスクを引きちぎられ、胸を引っかかれました。自分はまだまだ、研鑽が必要なようです。

(投稿者:斉藤 揚三)

訪問診療における医師と患者の位置関係2018年10月24日 

訪問診療では、患者さんが暮らしているところに出向いて診察するため、あらゆる場所で診察することになります。

その際には、患者さんとの位置関係に注意する必要があります。

心理学において、真正面に対面して視線が合うと、緊張や圧迫感を与えてしまうと言われています。一方、横や斜めからだと、直接的に視線が合いにくいため、緊張や圧迫感を与えにくく、親密な関係を築くことができます。

外来の診察室では、最初から患者さんと真正面に対面しないように設計されているので、このようなことは考えなくてもいいのですが、訪問診療では気をつけなければなりません。

これはとある有料老人ホームの診察前にセッティングされたイスと机の位置関係を示しています。左が患者さんのイス。手前が医師の机とイスになります。この位置関係は正しい位置関係となります。

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万が一、下のようにセッティングされていた場合、上のようにイスと机の位置を直さなければなりません。

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診察スペースの関係で、なかなか難しいこともありますが、できるだけ真正面にならないように、横や斜めからの診察を心がけています。ただし、認知機能が低下している患者さんでは、視界が狭くなっていて、正面しか認識できないため、正面から近づいていく場合もあります。

(投稿者:斉藤 揚三)

バイタルサインの勉強会2018年10月19日 

本日はとあるグループホームからの依頼で、「バイタルサインの見方や考え方」についての勉強会をしてきました。

昨年度、当院が主催して行った勉強会とほぼ同じ内容です。明日からの仕事に少しでも役立つ事があればと思い、話してきました。

さて、本日の救急対応についての話を一つ。

本日夕方、当院で訪問診療していて、施設に入居している80歳台の患者さんについての報告がありました。今朝から頭痛があり、昼食後に嘔吐。夕方になって38.1℃の発熱と寒気がみられるとのことでした。

至急往診して、まずはバイタルサインを確認しました。
バイタルサインは、意識清明、呼吸数30回/分、血圧144/70mmHg、脈拍118回/分、SpO2 94%、体温38.6℃でした。悪寒戦慄もみられました。

SIRSの診断基準より、①38℃以上②呼吸数20回/分以上③脈拍90回/分以上に当てはまっているため敗血症が疑われました。

敗血症では、頑張り切れなくなってくると血圧低下や意識障害がみられます。この症例ではその症候はなく、むしろ、頑張っている症候である頻脈や高熱がみられました。

しかし、この状態を放置していると、いずれ頑張り切れなくなってきて、血圧低下や意識障害をきたしてきます。その時点で対応すると後手後手に回ってしまいます。

また、80歳以上で悪寒戦慄があると菌血症を強く示唆します。有名な格言に「患者が震えていれば、医師も震えなければならない」というものがあります。

私も震えるような気持ちで、感染源を検索しました。右上腹部に圧痛があり、エコーで胆のうや総胆管に拡張がみられたことから、急性胆管炎を疑いました。

胆道ドレナージなどの治療が必要になる可能性も考え、病院へ連絡し紹介状を作成、救急車を手配しました。

敗血症が疑われるため、また勉強会の時間も迫っていたため、ここまでを20分くらいの超高速で終わらせました。

しかし、週末の仕事終わりの時間帯に紹介してしまい、病院の先生には大変なご迷惑をおかけしたことと思います。もう少し早い段階で施設から連絡があれば、もっと落ち着いた対応ができたのではないかと思います。

熱が上がる前の早い段階で異常に気付くには、呼吸数を測らなければなりません。

本日の勉強会でもさんざん言いましたが、バイタルサインの中では呼吸数が最も重要!なのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

インフルエンザの予防接種2018年10月17日 

本日はとある介護施設に訪問して、職員の方40名ちかくに一斉に、インフルエンザの予防接種を行いました。

インフルエンザの予防接種には、インフルエンザの発症を防ぐ効果と、発症したとしても肺炎などの重症化や入院、死亡を防ぐ効果があります。

インフルエンザに罹った際に重症化するリスクが高い人は、高齢者、妊婦、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、心不全、腎不全、糖尿病、免疫不全の方などがあげられます。

つまり、これら重症化するリスクが高い方、また、リスクが高い方と一緒に生活している家族や接触する頻度が高い医療・介護職の方は、特にインフルエンザの予防接種をお勧めします。

(投稿者:斉藤 揚三)

ショートステイ先への訪問診療2018年10月12日 

ショートステイ(短期入所生活介護)先に訪問診療に行ってよいのかどうか、ケアマネージャーさんも分からない方が多いようなので、まとめてみました。

2016年度の診療報酬改定でショートステイ先にも訪問診療ができるようになりましたが、それには条件があります。

それは、「サービス利用前の30日以内に患家を訪問し、在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料(在総管)、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)、在宅がん医療総合診療料を算定した医療機関の医師(配置医師を除く)が診察した場合に限り、サービス利用開始後30日までに訪問診療料や施設総管を算定できる」というものです。

つまり、自宅で定期的に訪問診療をしていた場合、ショートステイ利用開始後30日までは、ショートステイ先に訪問診療に行くことができます。ただしその場合は、在総管ではなく施設総管での算定になります。

また、ショートステイ中に体調不良になった場合などは、ショートステイ先に往診することもでき、往診料も算定できます。

しかし介護保険と医療保険を同時請求できないからなのか、施設の決まりなのか、上記を説明しても、ショートステイ先に診察に来てもらっては困ると言われ、ショートステイから自宅に戻って診察することもよくあります。

当院としては、患者さんが診察のためにいちいち自宅に戻るというのは不便だと思うので、施設がよければ、ショートステイ先にも診察に行っています。

(投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療における不適切な処方2018年10月09日 

Onda M,et al.Identification and prevalence of adverse drug events caused by potentially inappropriate medication in homebound elderly patients: a retrospective study using a nationwide survey in Japan.BMJ Open. 2015 Aug 10;5(8):e007581.

この論文によると、日本で在宅医療を受けている高齢者4815人(平均82.7歳)を調査したところ、不適切な処方(PIM;Potentially Inappropriate medication)がされていたのが48.4%にものぼり、実際に薬剤有害事象(ADEs;adverse drug events)が起きていたのは8%だったそうです。

すなわち、2人に1人は不適切な処方がされ、そのうちの約1割に実害が生じていたのです。

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論文の表をみると、不適切な処方数と薬剤有害事象の数が圧倒的に多いのはベンゾジアゼピン系で、薬剤有害事象の比率が高いのは抗ヒスタミン薬(抗コリン薬)だと分かります。

特に日本では、ベンゾジアゼピン系の処方数が諸外国に比べて多く、それだけ有害事象も多く起きており、社会問題にもなっています。

他には、ジゴキシンスルピリド(ドグマチール®)、刺激性下剤の慢性使用H2ブロッカーにも注意が必要です。

このブログでもたびたび、これらの薬の問題を取り上げてきましたが、再度まとめてみます。

ベンゾジアゼピン系は、認知機能低下、せん妄誘発、筋弛緩作用により転倒→骨折のリスクがあがります。

抗コリン薬には、認知機能低下、せん妄、口腔乾燥、便秘などの副作用があります。

ジゴキシンは、ジギタリス中毒(嘔吐、食欲不振など)の原因となります。高齢者に使う場合は0.125mg/日以下にし、血中濃度は0.5~0.8ng/mLの低めで維持します。

スルピリド(ドグマチール®)は薬剤性パーキンソニズムの原因となります。高齢者に使う場合は50mg/日以下にします。

H2ブロッカーはせん妄を誘発します。

(投稿者:斉藤 揚三)

破天荒フェニックス2018年10月03日 

『破天荒フェニックス 田中修治 幻冬舎』

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たまには医療と関係のない話。

この本は、絶対に倒産すると言われていたメガネチェーン「オンデーズ」を買収した筆者が、様々な困難を乗り越え、会社を再生していく物語です。

何度も倒産の危機を迎えますが、その都度なんとか乗り越えていく場面は、ハラハラドキドキの連続です。中でも、最期の最期でどうにも立ち行かなくなった時、鯖江のメガネ工場の社長が数億円をポンと融資した場面が特に感動的で、社長の男気に涙しました。

筆者の行動力はとにかくすごいのですが、会社の再生は周りの人材があってこそだったと思います。特に資金繰りに奔走し、会社の財務を支えた奥野さんなくしては成し遂げられなかったと思います。

物語は圧倒的なスピード感で展開します。夜から読み始めましたが、時間がたつのも忘れ朝までに一気に読んでしまいました。お勧めです。

(投稿者:斉藤 揚三)

傷のきれいな治し方2018年10月02日 

H30.9.29に行われた第16回宮城手の外科セミナーに参加してきました。

1日かけてみっちり手の外科を勉強しました。どの先生の講演も大変勉強になり、刺激を受けました。特に印象に残ったのは、日本医科大学形成外科教授 小川令先生の創傷・瘢痕治療の講演でした。物理的な力によって細胞が影響をうけるメカノバイオロジーという概念を、臨床に応用した点がとても革新的です。外科系の医師であれば、ぜひとも受けておきたい講演です。

以前のブログで小川先生の日整会の教育研修講演をまとめましたが、今回の講演もまとめてみます。

『手外科における創傷・瘢痕治療の最新理論と実践』

肥厚性瘢痕・ケロイドの原因は皮膚の真皮の深いところ、真皮網状層で続く慢性炎症で、皮膚が引っ張られることで、傷に物理的な力がかかっているところに起こる。皮膚がよく動く、胸部、肩、腹部はケロイドの好発部位となる。一方、皮膚が動かない、頭頂部、前脛骨部、皮膚がゆるい上眼瞼はケロイドができにくい部位である。整形外科は関節という動く場所を切るので常にケロイドのリスクがある。また、早期リハビリで炎症が続いてしまうこともリスクとなる。

このケロイドの発生の仕組みを逆手に取ったのが陰圧閉鎖療法。陰圧閉鎖療法は、湿潤療法と過量の浸出液を吸収する以外に、創面に加わる物理的な刺激で活動性が上がることで早く治るのではないかと考えられる。

高血圧がある、若い女性(ホルモンの関係)、体に目立つ傷痕がある方はケロイドのリスクが高く特に注意する。

手術部位感染(SSI)、肥厚性瘢痕・ケロイドの予防するためには傷にかかる力を最小限にすればよい。

 ①皮膚表面、真皮に過剰な力がかからないように縫合する

肥厚性瘢痕・ケロイドは真皮の網状層から発生するので、表皮を減張するのではなく、真皮の網状層を減張するようにしなければならない。そのためには、深いところをしっかり縫い(深筋膜は0PDS、浅筋膜は2-0,3-0PDSで縫合)、真皮縫合をしなくても創縁が勝手に密着する状況を作ることが大切。真皮縫合で寄せたらダメ。その後、軽く創面を合わせるように、4-0,5-0PDSで真皮縫合、5-0,6-0ナイロンで表面縫合をする。

膜構造は横方向の血流で強く縫っても壊死しないが、脂肪層は縦方向の血流で縫うと簡単に壊死する。膜構造を意識して縫合することが大事。

②切開の向きを考える

切開の向きは皮膚の動きと直交するようにすればよい。方向を変えられない場合は力の分散を考え、Z型に切開し、傷にかかる力を分散する。

腹部 腹直筋は上下の動きなので、横切開が良い。帝王切開は横切開なので理にかなっている。

胸部 大胸筋で横方向に引っ張られるので縦の切開が良い。胸部正中切開はケロイドのリスクが少ない。

膝 関節は上下に動くので横切開がよい。縦切開の場合は1か所でいいからZ切開とする。

顔 RSTL(Relaxed Skin Tension Line) 、皺に沿った切開をする。皺は引っ張られる方向と直交する線。

前腕 回内・回外の動きを考え「雑巾絞りの法則」に沿った、斜めの切開が良い。手関節を屈曲尺屈すると斜めの皺が見えるので皺のラインで切開する。

③十分なテープ固定

術後や外傷後、1週間程度で表面は治っても、真皮は3か月経過して80%治る。創を安静に保ち肥厚性瘢痕・ケロイドを予防するため、テープ固定は3~6ヶ月間行うことが勧められる。

傷にテープを張る向きは、傷が開かないように貼るのではなく、皮膚が引っ張られる方向に貼ると良い。例えば、腹部は縦に切っても縦に貼る。胸は横に貼る。膝は縦切開でも縦に貼る。

しかしテープの貼る向きをいちいち考えるのは大変なので、360°動かない1枚の大きなテープで貼ってしまえばよい。

テープの種類
アトファイン®(ニチバン)700円 かぶれにくく使いやすい
シリコーンジェルシート 4000円 高いのが欠点
ポリエチレンジェルシート(傷あとケアシート®)2000円 洗って何回も使える
シリコーンテープ 3000円 1番良い かぶれない
サージカルテープ 250円 いい点は軟膏もクリームも浸透するのでテープをはがさず、テープの上から軟膏やクリームを塗ることができる

④早期から副腎皮質ホルモンのテープ剤を用いる

肥厚性瘢痕・ケロイドが生じたらすぐにステロイドのテープを使用する。炎症をとるために皮膚の表面からステロイドを投与する感覚。リハビリをしながらでも使える。

現在使えるテープは2種類。
ドレニゾンテープは弱いステロイドでかぶれやすい。小児に使う。
エクラープラスターはストロングで効果が高い。テープによる接触性皮膚炎も抑えてしまう。大人で関節など力がかかるところは全てエクラープラスターにしているとのこと。

⑤適切な縫合糸を使用する

術後2年以降に起こる晩期感染は、体調を崩した時に細菌が血中を回って縫合糸についてしまうことで起こる。できるだけ異物は体に残したくないので、吸収糸を使う。縫いづらくても、バイクリルよりPDS(3か月間張力を維持する)を選ぶと良い。抗菌薬でコーティングされた糸を使うことも考慮する。

(投稿者:斉藤 揚三)

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