月別アーカイブ

在宅医療専門
くりはら訪問クリニック

スタッフブログ

月別アーカイブ:2018年09月

痛い在宅医2018年09月25日 

『痛い在宅医 長尾和宏 ブックマン社』

 51yVIogffTL._SX338_BO1,204,203,200_

今までの在宅医療の本と言えば、「住み慣れた我が家で穏やかな最期を迎える」といったような、在宅医療を賛美するような内容の本ばかりでしたが、本書は在宅医療の闇に触れた本と言えます。

この本に登場するのは、在宅医療を受けながら、末期がんの父親を自宅で看取ったある娘の話です。そして担当した在宅医の対応に様々な問題のあったケースだったのです。

その娘との対話を通して、在宅看取りとは、アドバンス・ケア・プランニングとは、鎮静とは、平穏死とはなど、様々なことを考察し、問題提起をしています。

どういった症例だったのかは本書を読んでいただきたいのですが、我々在宅医は、この症例を反面教師として、本書のタイトルのような「痛い在宅医」にならないように、自らの診療を見つめなおさなければならないと思いました。その意味で、この本は、これから在宅医療を申し込もうとしている患者さんやご家族だけでなく、在宅医こそ読むべき本だと思います。

筆者の長尾先生は、本の最後で、「この症例の在宅医の対応は確かに悪かったが、それでも平穏死を迎えられたのではないか」と考察しています。この言葉で、残された家族が少しでも救われるのではないかと思いましたし、長尾先生の優しさが感じられました。

(投稿者:斉藤 揚三)

薬剤性パーキンソン2018年09月24日 

パーキンソン病は、中脳黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性の疾患です。

パーキンソン病の4大症状としては、振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害があります。

具体的な症状を上げると、「動作が遅くなった」、「声が小さくなった」、「表情が少なくなった」、「歩き方がふらふらする」、「転倒しやすくなった」、「歩幅が狭くなった(小刻み歩行)」、「歩行開始時に足が出にくい」、「手が震える」、「止まれず走り出すことがある」、「手足が固い」などです。

このようなパーキンソン病でみられる症状が、薬の副作用でも起こってしまう(薬剤性パーキンソニズムと呼ばれます)というのが今回の話です。薬剤性パーキンソニズムは特に高齢の女性に起こりやすいと言われています。

パーキンソニズムを起こす薬は様々ありますが、ドパミン拮抗作用を持つ薬がほとんどで、なかでも抗精神病薬が有名です。

気をつけなければならないのは、思わぬ薬にパーキンソニズムを起こす薬があることです。これを知らないと、漫然と処方され続けたり、薬剤性パーキンソニズムに対して抗パーキンソン病薬が処方されれば、薬の副作用を薬で抑えることになり、さらに別の副作用がでるということにもなりかねません(これは処方カスケードと呼ばれます)。

一般医がよく処方し、薬剤性パーキンソニズムの原因となりうる薬剤は、

制吐薬のプリンペランナウゼリンカルシウム拮抗薬のワソランヘルベッサー、抗ヒスタミン薬のアタラックスP、コリンエステラーゼ阻害薬のアリセプトなどです。

抗精神病薬の中では、せん妄時によく処方されるセレネースリスパダール、食欲がないときに処方されるドグマチール、悪心嘔吐時に処方されるノバミンが薬剤性パーキンソニズムを起こしやすいので注意が必要です。

上記の薬を処方している場合は、診察の度に、肘に筋固縮がでていないかをみることが重要です。

薬剤性パーキンソニズムの症状の特徴としては、以下があります。

進行が速い

突進現象は少ない

症状は左右差が少なく、対称性のことが多い(薬は全身に回るため)

姿勢時、動作時振戦が生じやすい(パーキンソン病は安静時振戦)

アカシジア(じっとしていられない)やジスキネジア(体が勝手に動いてしまう)を伴うことが多い

抗パーキンソン病薬は効きづらい

薬剤性パーキンソニズムが疑われる場合は、当然のことながら、原因と思われる薬剤の中止が必要です。

参考資料:重度副作用疾患別対応マニュアル(薬剤性パーキンソニズム) 厚生労働省 

(投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療におけるPTH製剤の使い方2018年09月19日 

当院ではPTH製剤を在宅医療でも使っています。在宅医療におけるPTH製剤の使い方について書いていきます。

PTH製剤とは、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone;PTH)を間欠的に注射することで、骨形成が促進され、骨密度を上昇させる薬です。現在の骨粗鬆症治療においては、一番効果の高い治療法と言われています。

当院では、骨粗鬆症がひどく圧迫骨折を繰り返している方、または、転倒を繰り返しており骨折リスクが非常に高い方に使っています。

PTH製剤には、連日皮下注射製剤のフォルテオと週1回皮下注射製剤のテリボンがあります。どちらも、使えるのは、一生のうちの2年間という制限があります。

フォルテオとテリボンの選択ですが、まずは、フォルテオができないかを考えています。しかし、フォルテオは自己注射のため、かなりしっかりとした人でないとできません。在宅医療を受けているような患者さんには、自己注射ができるような人はなかなかいません。

そこで、介護者がしっかりしていれば介護者に注射してもらうか、看護師がいる施設に入所している方は看護師に注射してもらいます。

また、フォルテオの話をすると、注射時に痛みがあるのではないかと不安になる方がいますが、針は非常に細いため、痛みで脱落する方はまずいません(自分でも、製剤見本を注射してみましたが、痛みはほとんどありませんでした)。

フォルテオが難しい方には、テリボンを選択します。

テリボンにする場合は、毎週訪問診療にして、こちらで注射します(訪問看護では点滴はできても皮下注射はできません)。

テリボンの注意点としては、週1回の注射製剤のため、1回あたりの製剤の量が単純にフォルテオよりも多いので、より副作用がでやすいことがあげられます。

よく経験するのは、注射後の一過性の血圧低下です。これを予防するためには、注射前にコップ1杯の水を飲んでもらうと良いです。

また、PTH製剤には、どちらも高カルシウム血症の副作用があります。活性型ビタミンD3製剤と併用しないように注意しなければなりません。

※算定に関して
フォルテオの場合、在宅自己注射指導管理料 月28回以上の場合 750点が算定できます。これには、「在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定する。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること。」という条件があります。また、導入初期加算580点は3か月間算定できます。

(投稿者:斉藤 揚三)

訪問看護が医療保険になる条件2018年09月14日 

要介護認定を受けている方は、原則として、医療保険ではなく介護保険が優先され、訪問看護も介護保険で行われることになります。

しかし、例外的に医療保険で訪問看護が行われることがあります。

ケアマネージャーさんも、なかなかこのことを知らない方が多いようなので、どういう時に医療保険の訪問看護になるのか、書いていきたいと思います。

たんぽぽクリニックの永井先生は、著書の中で、訪問看護が医療保険の適応になる条件を、「3つの呪文」として書いています。

3つの呪文

①介護保険の認定を受けていない訪問看護の対象者

②要介護認定者のうち、末期の悪性腫瘍など「厚生労働大臣が定める疾病等」に該当する場合

③要介護認定者のうち、急性増悪などのケース

ひとつひとつ見ていきたいと思います。

①に関してですが、要介護認定を受けていなければ、当然のことながら介護保険を使うことはできません。これは、年齢的に介護保険を受けられない方と、該当はしているが申請していない方の二つのケースに分かれます。

40歳未満:どの方でも介護保険は使えません。
40歳以上65歳未満:特定疾患(16疾患)によっては介護保険を使えます。
65歳以上:どの方でも要介護認定を受ければ、介護保険は使えます。

②に関して「厚生労働大臣が定める疾病等」は、以下の疾病になります。
末期の悪性腫瘍
多発性硬化症
重症筋無力症
スモン
筋萎縮性側索硬化症
脊髄小脳変性症
ハンチントン病
進行性筋ジストロフィー症
パーキンソン病関連疾患…進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類Ⅲ度以上かつ生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度)
多系統萎縮症…線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症、シャイ・ドレーガー症候群
プリオン病
亜急性硬化性全脳炎
ライソゾーム病
副腎皮質ジストロフィー
脊髄性筋萎縮症
球脊髄性筋萎縮症
慢性炎症性脱髄性多発神経炎
後天性免疫不全症候群
頸髄損傷
人工呼吸器を使用している状態

③に関しては、医師が特別訪問看護指示を出した場合に当たります。病状の急性増悪時(肺炎になった場合など)、終末期、退院直後に月1回出すことができます。指示日を含めて14日間までの制限があります。気管カニューレ使用と真皮を越える褥瘡(NPUAP分類Ⅲ、Ⅳ度)がある場合は、月2回指示を出せます。この場合は、1か月のうちほとんどが医療保険の訪問看護となります。また、特別訪問看護指示期間中は、原則として週4日以上の訪問看護が必要になります。

まとめると、要介護認定を受けていない、末期がんや難病がある、急性増悪時や重度褥瘡で特別訪問看護指示がでている場合は、医療保険による訪問看護になります。

参考資料:たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル(日経BP社)

(投稿者:斉藤 揚三)

レビー小体型認知症2018年09月10日 

厚生労働省の推計では、2025年に認知症の人の数は700万人に増え、高齢者の5人に1人は認知症になると言われています。そういった時代においては、どの科の医師であっても、認知症に対する理解が必要です。

今回は、日本の認知症占有率第2位(約20%)を占める、レビー小体型認知症についてまとめてみました。

レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)は意識障害系の認知症で、記憶障害より意識レベル低下による幻視や妄想、せん妄が問題化しやすくなります。また、パーキンソニズムによる転倒、誤嚥で介護が難しくなります。

診察時の様子

パーキンソン病のように足を閉じての小刻みではなく、ゆっくり緩慢に腕を振らずに歩く。
振戦はあまりみらない。
座位で体幹が左右に傾斜する。
非常に暗く硬い顔。声が小さい。弱々しい。
性格はまじめで誠実。

問診

生々しい幻視が特徴的!60~70%の患者にみられる。幻視は人、子供、動物が多い。

DLBは抗精神病薬、コリンエステラーゼ阻害薬、パーキンソン病治療薬、抗ヒスタミン薬に対して薬剤過敏性が強く出るので、これらの薬で副作用が強く出たことがないか聞く。具体的には、「風邪薬のせいで昼間から寝てしまった、睡眠薬が効きすぎて起きられなかった、パーキンソン病治療薬のせいで食べられなくなった、アリセプトで歩行できなくなった」などがなかったか。

夜間の寝言(=REM睡眠行動異常)、日中の眠気はないか。

原因不明の意識消失発作がある。救急搬送されたが、問題なく帰されたというエピソードがあるか。

嚥下障害があるか。食事中にムセるか。

認知機能が毎日変動していないか。

診察

肘関節に歯車様筋固縮あり(=ドパミン不足を示す)。

改訂長谷川式簡易知能評価スケールにおいて、計算や数字の逆唱が不得意で遅延再生が得意。

治療

リバスタッチパッチ、ドパコール、抑肝散がDLB治療の3種の神器。DLBでは脳内でアセチルコリンとドパミンが低下しているため、それを少量のリバスタッチパッチとドパコールで補い、抑肝散で幻視を消す(ドパコールは後発品の薬剤だが、50㎎錠があるので少量投与に向いている)。

処方例:

リバスタッチパッチ4.5mg 1日1枚
ドパコール50mg 2錠 分2 朝夕食後
抑肝散5g 分2 朝夕食前
(フェルガード100M 2包 朝夕食後 余裕があれば服用を勧める)

DLBの治療において最も重要なことは、アリセプトを規定量で処方しないこと。
DLBの場合、薬剤過敏性があることから、アリセプトを処方するとしたら、かなり少ない量を処方しないと容易に症状が悪化します(2016年6月1日に少量投与が認められました)。DLBに対して、添付文書どおりにアリセプトを処方すると効きすぎて、歩けなくなったり、食事が摂れなくなることもあります。嚥下機能が低下することで誤嚥し肺炎を起こせば、死に至ることすらあります。前医でDLBに対してアリセプトが処方されていた場合、まずは中止するところから始めます。抗精神病薬も同様に、使うとしたら少量を注意深く処方します。

参考資料:コウノメソッド流臨床認知症学(日本医事新報社)

(投稿者:斉藤 揚三)

傷口にラップっていいの?の記事について2018年09月07日 

【傷口にラップっていいの? 熱傷・褥瘡、専門家の見解は】

この記事の中で、日本熱傷学会は傷口にラップは「絶対に使ってはならない」、日本褥創学会は「やむ得ない場合は考慮してもよい」との見解を出しています。

では、実際に傷口にラップを使っていいのかについて私見を書いていきます。

まずは傷が治る仕組みから解説します。

怪我や火傷をして傷ができると、傷から浸出液がでてきます。

この浸出液は、傷を治す培養液のようなものだと思ってください。

この浸出液をうまく利用して、傷を湿った状態にして傷を早く治す治療法が、湿潤療法と呼ばれています。湿潤療法は、夏井睦先生が2001年にホームページ上で提唱した治療法で、消毒とガーゼの撲滅をうたっており、現在では広く一般にも知られています。

傷にガーゼを当てることがなぜいけないのかというと、ガーゼが浸出液(=傷を治す培養液)を吸収してしまうからです。また、ガーゼと傷がくっついてしまい、カーゼを剥がす度に出血し痛みがでます。

さて、傷に食品用のラップを当てるとどうなるかというと、傷は浸出液で湿った環境となり傷の治癒にはいい環境となります。また、ラップはガーゼと違って傷にくっつくこともありません。

しかし、ラップの欠点は、浸出液を一切吸収しないため、蒸れてくることです。

蒸れると、健常な皮膚がふやけてしまったり、細菌が繁殖する温床になり、感染の原因となります。

感染というのは、ラップが医療用ではなく汚いから起こるのではなく、浸出液が留まるから起こるのです。

つまり、浸出液を適度に吸収することができれば感染は起こらないはずです。

現在使用できる創傷被覆材には、様々な種類がありますが、基本的に傷を湿潤環境に保ちながら、浸出液を吸収するという点ではどれも同じです。創傷被覆材の種類によって、浸出液の吸収力に差があるため、傷によって使い分けるのです。

まとめると、ラップは浸出液を一切吸収しないため、傷口に積極的にラップを使用する理由はありません。しかしラップは手に入りやすいので、創傷被覆材がない時に、応急処置として短時間使用することはできます。

ラップだけを使って治すのであれば、浸出液のコントロールが重要になってきます。こまめにラップを取り換えて浸出液を拭いたり、ラップに小さい穴を多くあけて、その上からガーゼやオムツなどを当てて浸出液を吸収するなどといった手間が必要です。

 (投稿者:斉藤 揚三)

お菓子を食べなくする方法2018年09月03日 

当院では訪問診療時に食事指導もおこなっており、その中で、できるだけお菓子を食べないように指導しています。

しかし、どうしてもお菓子が止められない、また、「甘いものを我慢してまで長生きしなくていい」という患者さんもいます。

お菓子の誘惑にあらがえないのは、それに強い中毒性があるためで、誘惑に負けた患者さんを責めることはできません。

そういった方がどうやってお菓子を止められるのかと言えば、まずはお菓子自体を買わなければよいのではないかと思っています。

家にお菓子がなければ、いくら食べたくても食べられません。

もちろん、買い物に行けばお菓子は手に入りますが、「買い物に行くのも面倒なので食べなくてもいいか」となることをねらいます。つまり、お菓子を食べることにハードルを設け、簡単に食べることができない環境を作ればいいのです。

例えば、勉強部屋にスマホや漫画本を持ち込まないことで勉強に集中できるといったように、何事も、自分の意志でコントロールするよりは、環境を整えたほうがうまくいくことが多いです。

さらに、ナッツ、チーズ、小魚、ゆで卵などを常備しておいて、お菓子を食べたくなったら代わりに食べるというのもお勧めです。

一方、病院では、退院時などに患者さんやご家族からお菓子の差し入れがよくあります。私が勤めてきた病院でも、休憩室やナースステーションなどには常にお菓子がありました。

ですから、医療従事者ほど、環境を整えることが難しい職場にいるといえるのかもしません。

(投稿者:斉藤 揚三)

このページの先頭へ

お気軽にお問い合わせください 在宅医療専門 くりはら訪問クリニック