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月別アーカイブ:2018年02月

厚生労働省によるポリファーマシーの指針2018年02月21日 

薬剤の多剤併用により薬剤有害事象が起きていることをポリファーマーシーといい、社会問題にもなっています。当院ではできるだけ、薬を減らせないかを考えて診療しています。

今日のニュースで、厚生労働省によるポリファーマシーの指針がでていました。

今後は「厚生労働省の指導で薬を減らすようにしているのです」と患者さんには説明しようと思います。

記事にもあるように、薬の副作用を薬でカバーしていくと訳の分からないことになってしまいます。これを「処方カスケード」と言います。

例として挙げると…

高齢者が食欲不振となる

→食欲増進効果があるスルピリド(ドグマチール®)が処方される

→ドグマチールの副作用である薬剤性パーキンソニズムが出現する(50mg/日以上だと出現しやすいです)

→抗パーキンソン病薬が処方される

→抗パーキンソン病薬によってドーパミンが増えると相対的にアセチルコリンが減り認知機能が低下する

→コリンエステラーゼ阻害薬が処方される

→コリンエステラーゼ阻害薬の副作用である食欲不振が生じ、ますます食欲不振に

このように、食欲不振のために処方したはずなのに、真逆の結果となってしまっているのです。

厚労省「高齢者の薬、減らして」 医師ら向け使用指針

2/21(水) 20:06配信

朝日新聞デジタル

 薬はなるべく減らして――。厚生労働省は21日、高齢者に適正に医薬品を使うための指針案を有識者会議に示し、おおむね了承された。お年寄りは複数の病気を持つことが多く、多くの薬を使いがちだ。指針案は医師や薬剤師向け。主な副作用を示し、薬の減量や中止で症状が改善することもあると指摘して減薬を促す。厚労省によるこうした指針は初めて。

 厚労省によると、薬局で薬をもらっている75歳以上の4割が1カ月間で5種類以上、25%は7種以上を一つの薬局で受けている。65~74歳でも3割弱は5種類以上という。複数の薬局を利用する人もいて、1人あたりの薬の数はさらに多いとみられる。その一方、高齢になると体内で薬の濃度が上がりやすくなり、成分が体外に排出されるまでにかかる時間も延びる。薬の副作用に薬で対処する悪循環もみられる。

 指針案は、のんでいる薬による治療が有効なのか、薬以外の方法はないか、検討することを勧める。さらに、複数の医療機関・薬局を利用して1人が同じ種類の薬を複数のんでいないかを確認することを求めている。ただし機械的に薬を減らすと、持病が悪化する恐れがあるので減量や中止は慎重に行い、経過観察することを推奨する。

 主な副作用とその原因とみられる薬の例示もした=表。ふらつきや転倒は降圧薬によることがある。食欲の低下は非ステロイド性抗炎症薬、便秘は睡眠薬が原因になりうるという。案の作成に関わる秋下雅弘・東京大教授(老年病学)は「3種類以上の薬ののみ合わせに関するデータはなく、どんな相互作用があるのかがわからない。薬はなるべく少ないほうが副作用は少ない。ただし患者の自己判断で薬を減らすのは危険なので、医師や薬剤師に相談してほしい」と話した。

 一般の意見を聞いたうえで、4月以降に指針を正式に決める。厚労省の担当者は「これまでも各学会のガイドラインはあったが、それぞれの内容を横断的にまとめ、使いやすい指針をめざした。医療現場に浸透させたい」と話す。(福地慶太郎)

■副作用症状と原因となる主な薬

【症状】原因となる主な薬の種類

【ふらつき・転倒】中枢性などの降圧薬、睡眠薬、抗不安薬

【記憶障害】中枢性などの降圧薬、睡眠薬、抗不安薬

【抑うつ】中枢性降圧薬、抗ヒスタミン薬、抗精神病薬

【食欲低下】非ステロイド性抗炎症薬、緩下剤、抗不安薬

【便秘】睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬

※厚労省の指針案から

寝たきりにならないための食事2018年02月12日 

中年期までは食べすぎによるメタボリックシンドロームが問題になりますが、高齢者では食べなさすぎによる低栄養が問題になります。

そのため、中年者と高齢者では栄養指導の内容が異なってきます。

栄養状態を評価する上で指標になるのが、血清アルブミンという血液中のたんぱく質の量です。

人間総合科学大学の熊谷修教授の調査では、血清アルブミン値が4.3以上の人たちは、4.2以下の人たちに比べて筋力が衰える程度(調査では最大歩行速度で評価)が統計学的に明らかに低かったそうです。

つまり、血清アルブミン値が低いと、寝たきりになりやすいと言うことができます。

また、東京都健康長寿医療センターの新開省二先生の調査(東京都小金井市と秋田県南外村、合わせて約1,150人の高齢者を対象した20年にわたる追跡調査)では、血清アルブミン値が低いと、生存率が低下し、認知症・脳卒中・心臓病のリスクが上がると報告しています。

当院では、主に高齢者の診療をしていますが、採血をしてみても血清アルブミン値が4.3を超えている方はまずいません。

血清アルブミン値を上げるためには、動物性のたんぱく質(肉、魚、卵、乳製品)を積極的にとる必要があります。それには、ご飯よりおかずを、さっぱりしたものよりこってりしたものを摂るように心がければよいです。

しかし、好きではないものを無理に強制することもストレスとなり良くないので、診療では「できれば上記のものを食べるといいですよ」というアドバイス程度にしています。

高齢者の方の血液検査の結果をもらったら、血清アルブミン値に注目してみて下さい。

(投稿者:斉藤 揚三)

「高齢者の薬物療法」の講演2018年02月01日 

薬剤の多剤併用により薬剤有害事象が起きていることをポリファーマーシーといい、社会問題にもなっています。当院ではできるだけ、薬を減らせないかを考えて診療しています。ポリファーマシーの問題で最も有名な東京大学 秋下雅弘先生の講演をまとめてみました。

第19回 日本在宅医学会大会 名古屋 2017.6.17

『高齢者の薬物療法 東京大学 秋下雅弘先生』の講演のまとめ

〇高齢者の薬物有害事象発生頻度
年齢が高くなればなるほど副作用がでやすい傾向
後期高齢者(75歳以上)では15%超に発生
高齢者の緊急入院の3~6%は薬物が原因

〇高齢者で薬物有害事象が増加する要因
複数の疾患を有する→多剤服用
臓器予備能の低下(薬物動態の加齢変化)→過量投与
認知機能・視力・聴力の低下→アドヒアランス(服薬率)低下、誤服用、症状発現の遅れ

〇薬物動態に関連した生理機能の加齢変化
消化管の機能は低下するのに、薬物吸収は変化しないのがポイント!つまり、血中濃度が上がりやすい。

〇薬物動態からみた対処法
少量投与から開始する(急性期疾患は例外)
長期的には減量も考慮

〇ポリファーマシーの定義
薬物有害事象、アドヒアランス不良など多剤に伴う諸問題を指すだけでなく、最近では、不要な処方、あるいは必要な薬が処方されない、過量・重複投与など薬剤のあらゆる不適切問題を含む概念へ発展。

〇何剤からポリファーマシー?
単純に数だけで決まるわけではないが…
薬物有害事象の頻度↑ 6剤以上
転倒の発生頻度↑ 5剤以上
5~6剤をカットオフとしてもよい

ポリファーマシーは栄養・ADL・認知機能低下に寄与するという報告あり

〇年齢階層別にみた処方薬剤数
75歳以上 5剤以上40%超える、7剤以上25%
ポリファーマシーのピークが80~85歳のところにあるのが驚き!

〇多疾患併存がポリファーマシーの主因
疾患数が増えれば増えるほど薬剤数が増える
複数科受診もポリファーマシーの要因→在宅医療を導入するメリット

〇ポリファーマシーを避けるために
予防薬のエビデンスは妥当か?高齢者に当てはめてよいか
対症療法は有効か?
薬物療法以外の手段は?
優先順位は?

〇要介護高齢者は管理目標が違う?
低血糖は認知症のリスク
逆に認知症は低血糖の発生リスク
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標はゆるくなっている

JSH2014 75歳以上の降圧目標 150/90mmHg未満
血圧が低すぎると認知機能が低下する

〇特に慎重に投与を要する薬物は
認知機能低下を理由とした「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」の代表的薬剤
抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系、抗コリン作用のある薬剤(三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬、オキシブチニン、H1受容体拮抗薬、H2受容体拮抗薬)

抗コリン系薬剤の累積投与により認知症発症リスクが増える

〇アドヒアランス(服薬率)をよくするための工夫
介護者が管理しやすい服用法 出勤前、帰宅後などにまとめる
秋下先生は高齢者には昼の薬はほとんど出していない

〇医師以外の職種だからできること
1薬を飲む様子から、服薬に困難がある状況が分かる
2飲むと体調が悪い、本当は飲みたくない、実際に飲んでいないといった訴えは医師以外の職種に伝えられることが多い
3医療環境の変化に伴い処方調剤の誤りが起きやすい
4疑問を感じたらとにかく確認を。医師以外のメディカルスタッフがエラーを防ぐ最後の砦

(投稿者:斉藤 揚三)

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