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月別アーカイブ:2017年05月

誤嚥性肺炎を予防するためにできること2017年05月31日 

訪問診療を受けている患者さんは、寝たきり状態であったり、認知症、脳梗塞の既往があったりで、誤嚥性肺炎を起こしやすい方が多いです。実際、高齢者の肺炎の大部分が誤嚥性肺炎であるといわれています。誤嚥性肺炎を予防するためにできることを以下に書いていきます。

誤嚥性肺炎はサブスタンスP(嚥下反射に関与する神経伝達物質)の減少が本態です。
サブスタンスPがキーワードになります。

大脳基底核(脳梗塞を起こしやすい部位)に脳梗塞がおこる

大脳基底核にある黒質線条体から産生されるドーパミンが減少

迷走神経から咽頭、喉頭、気管の粘膜に放出されるサブスタンスPが減少

嚥下反射、咳反射の低下

誤嚥する

つまり、誤嚥性肺炎を起こしやすい人は大脳基底核に脳梗塞などの障害がある方で、誤嚥性肺炎を予防するためには、脳梗塞を予防すること、またサブスタンスPを増加させればよいことが分かります。

①口腔ケア

口腔ケアは、口腔内の細菌を減らすといういうよりも、口腔内の刺激でサブスタンスPを放出させることで、嚥下反射、咳反射を改善させるようです。
施設入所中の高齢者で、口腔ケアによって2年間の肺炎発生率を40%減少させることができたという報告があります。歯のない患者さんでも効果があるようです。

②薬剤 

ACE阻害薬(ARBでは×)はサブスタンスPの分解を阻害し咳嗽の閾値を下げることで誤嚥性肺炎を予防します。脳血管障害の既往がある高血圧患者に3年間ACE阻害薬を投与し、肺炎が1/3に低下したという報告があります。
アマンタジン(シンメトリル®)は大脳基底核からドーパミンを遊離させることで、誤嚥性肺炎を予防します。アマンダジンの投与で脳血管障害の既往がある患者で、肺炎が1/5に低下したという報告があります。
シロスタゾール(プレタール®)は抗血小板作用で脳梗塞を予防し、さらにサブスタンスPを増加させることで、誤嚥性肺炎を予防します。シロスタゾールの投与で脳血管障害の既往がある患者で肺炎発症率が40%に低下したという報告があります。
漢方薬の半夏厚朴湯もサブスタンスPを増加させることで誤嚥性肺炎を予防します。

これらの薬剤は、誤嚥性肺炎の予防のために処方するというよりは、副次的な効果をねらって処方します。

胃ろう増設患者は胃液逆流改善効果があるモサプリドクエン酸塩(ガスモチン®)の食前投与により肺炎が予防できるという報告もあります。

逆に、抗精神病薬、抗コリン薬は嚥下機能を低下させるため、できだけ処方を控えることも重要です。またPPIも肺炎を増加させると言われています。

③ワクチン

肺炎球菌ワクチン+インフルエンザワクチン接種

④食事

水や汁物は誤嚥しやすいのでとろみをつけるのが基本。
食事の温度が体温に近いと誤嚥しやすいです。熱い食物は熱いなりに,冷たい食物は冷たいなりに食べることによってサブスタンスPが口腔から放出されて,嚥下反射は改善されます。
また、カプサイシン(赤唐辛子に含まれる成分、カプサイシンプラス®)は強力にサブスタンスPを放出させます。メンソール(ミント)、黒コショウ臭覚刺激(黒コショウのアロマパッチ)を利用するのもいいかもしれません。

⑤摂食嚥下リハビリテーション

嚥下体操(パタカラ体操など)。

⑥体勢

胃食道逆流を防ぐために、食後2時間臥位にならない、30°ギャッチアップする、頸部前屈にするなどが言われています。

(投稿者:斉藤 揚三)

呼吸評価のまとめ2017年05月30日 

5月19日から6回にわたってバイタルサインと呼吸のことについて書いてきました。

丁寧に説明したつもりですが、多少くどかったかもしれませんので、一度、簡単にまとめてみます。

①バイタルサインとは「 生命兆候 」のことであり、「生きているのか?」「死んでいるのか?」「死にそうなのか?」の指標です。具体的には「呼吸数、呼吸様式、動脈血酸素飽和度(SpO2)、チアノーゼ所見、血圧、脈拍、不整脈の有無、意識レベル、尿量、体温」のことです。

②その中で一番大切なバイタルサインは呼吸数と呼吸様式です。

③呼吸はパルスオキシメーターで判断するものではなく、「規則正しく呼吸をしているか?」「呼吸は正常(速くも遅くもない)か?」「唇や指先が紫がかっていないか?」という「身体所見」で評価します。

④呼吸を評価するときは、まず患者の脈(橈骨動脈)を触って「いかにも脈をみています」をいう雰囲気をだしつつ、実は呼吸をみるという方法がおすすめです。

⑤10秒くらい呼吸を観察し、規則正しい呼吸になっていることを確認。「1回の呼吸が何秒かかっているか」を判断します(仮にx秒/回とします)。60(秒/分)をx(秒/回)で割れば呼吸数(回/分)となります。

(投稿者:斉藤 群大)

呼吸を数える方法②2017年05月29日 

ではいよいろ私が実践している呼吸の数え方を公開いたします。

以下①~④の通りです。

①10秒くらい呼吸を観察します。

②規則正しい呼吸になっていることを確認します。

「1回の呼吸が何秒かかっているか」を判断します(仮にx秒/回とします)。

④60(秒/分)をx(秒/回)で割れば、あら不思議(?)。 60/x=呼吸数(回/分)となります。

 

この式に当てはめれば約10秒で、時計も使わずに、呼吸数を評価することができます。

 1回の呼吸が2秒 → 30回/分(かなりの頻呼吸 → 死にそう?)

 1回の呼吸が3秒 → 20回/分(頻呼吸 → 危機意識をもって診察する)

 1回の呼吸が4秒 → 15回/分(速めの呼吸)

 1回の呼吸が5秒 → 12回/分(正常な呼吸)

 1回の呼吸が6秒 → 10回/分(ゆっくりめな呼吸 穏やかな呼吸)

 1回の呼吸が10秒 → 6回/分(徐呼吸 → 止まるかも?)

 っていう感じです。

ちなみに1回の呼吸が2秒以上3秒未満であれば、24回/分でも、25回/分でも、26回/分でもいいです。

そこにこだわることに何の意味もないからです。

 

(投稿者:斉藤 群大)

レントゲンに頼りすぎない超音波診療2017年05月27日 

引き続き、第90回 日本整形外科学会学術集会(仙台)の報告です。

「レントゲンに頼りすぎない超音波診療 皆川洋至先生」

今、まさに整形外科診療がレントゲンからエコーにパラダイムシフトしていることが良く分かりました。さらに今後は、エコーガイド下の手術が行われるようになっていくと皆川先生は予想しています。また、今後AIが発達したときに、診断はAIにはかなわなくなり、医者が生き残る道は、患者さんに侵襲を伴う行為(注射や手術など)しかないとのお話がありましたが、その通りだと思いました。

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江戸時代に作られた五十肩という俗称に異をとなえ、1947年に「疼痛性肩関節制動症」とした三木威勇治先生(岩手医専教授→東北大教授→東大教授)、2012年に「凍結肩」を提唱した井樋栄二先生(現東北大教授)、超音波の医学への応用に多大な貢献をした和賀井敏夫先生(石巻生まれ、仙台二中出身、順天堂大教授)。ともに仙台にゆかりのある先生方のお話がまずありました。

次に、HR(Hydro-Release、生食リリース)をした症例を映像で見せていただきました。筋膜リリースに加え、頚部神経根症のブロックも超音波ガイド下に行っているようです(超音波では頚椎の横突起をランドマークにしているとのこと)。また、神経麻痺に対してもHRをして効果をあげているというのには驚きました。

最後に伊達政宗の五条訓は医師の心得にも通じるとして、その紹介がありました。非常に示唆に富んでいて考えさせられました。

仁に過ぐれば弱くなる 
 人を大切にし過ぎれば、相手のためにならない

義に過ぐれば固くなる
 正義を振りかざすと融通が利かなくなる

礼に過ぐれば諂(へつら)いとなる
 礼儀正し過ぎると、相手に対する厭味となる

智に過ぐれば嘘を吐く
 頭が良過ぎると平気で嘘をつく

信に過ぐれば損をする
 他人を信じ過ぎると損をすることになる

↓コニカミノルタ社のレポートです。
https://www.konicaminolta.jp/healthcare/report/us/20170521/index.html

(投稿者:斉藤 揚三)

呼吸を数える方法①2017年05月26日 

 

呼吸数とは1分間の呼吸回数のことです(単位は 回/分 )。

生体情報モニターの中には呼吸数を表示するものもあります。

モニター

呼気中の二酸化炭素や心電図の電気抵抗の変動から呼吸数を解析して表示しているのです。

ところが、そのようなモニターを装着している患者はICU(集中治療室)の患者など、ごく一部です。

つまり、多くの場面では測定機器を用いずに呼吸数を評価しなくてはなりません。

ではどのようにして呼吸回数を数えればいいのでしょうか?

 まず基本的なことですが、呼吸をしているかどうかは、前頸部~前胸部の動き(上がり下がり)で判断することが多いです。

救急医療では「見て、聞いて、感じて」という標語が有名で、口元に耳を近づけつつ胸の動きを目で見るという方法が推奨されていますが、一般診療の場面ではそこまでしなくてもいいと思います。

次にいよいよ呼吸数(1分間に何回呼吸をしているのか)をカウントすることになります。

「 時計で1分間を計測しその間に何回呼吸をしているか数える」というのは、間違いではありませんが、時間がかかりすぎて現実的ではありません。

時間短縮のために30秒の呼吸数を2倍したり、20秒の呼吸数を3倍したり、15秒の呼吸数を4倍したり、10秒の呼吸数を6倍したり・・・、というのが一般的な方法かもしれません。

しかし私の方法は少し違います。

次回、私の方法をご説明しますが、それまでにそれがどういう方法か、余裕がある方は考えてみてください。

(投稿者:斉藤 群大)

カモシカに遭遇!2017年05月25日 

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本日訪問診療中に野生のカモシカに遭遇しました。
場所は、若柳有賀の山の近くでした。
もっと至近距離にいたのですが、カメラを向けると逃げて行ってしまい、写真は後ろ姿です。
現場付近では、2か月くらい前にもキツネに遭遇しましたし、野生動物の宝庫?なのかもしれません。
また、珍しい動物に遭遇したら載せていきたいと思います。

(投稿者:斉藤 揚三)

呼吸を評価する前の準備2017年05月25日 

呼吸数や呼吸様式をみるために、患者に向かって「これから呼吸状態をみます」とか「呼吸数を数えるのでふつうに呼吸していてください」とか説明するのはおかしなことです。

患者さんが呼吸を意識すると、変に速くなったり遅くなったりして「不自然な呼吸」になってしまうからです。

かと言って、何も言わずにじっと患者の息遣いをみていると、「この人はいきなり黙りこんで何をしているのだろう?」と患者に不信感を抱かせることになります。

また、その沈黙に耐えられず、患者が何かを話し始めるかもしれません。

それでも呼吸の評価はできなくなります。

では呼吸を評価するにはどうすればよいのでしょうか?

私の実践している方法は、まず患者の脈(橈骨動脈)を触って「いかにも脈をみています」をいう雰囲気をだしつつ、実は呼吸をみるというものです。

同時に、本当に脈の診察も行うことができ、一石二鳥です。

さらに、手指の皮膚温や指先の色合い、冷や汗の有無、皮膚の張りなどもさりげなく確認できれば、さらに「所見とり名人」に近づけます。

「脈をみられているんだな」と患者が思えば、沈黙も不自然ではありませんし、患者がしゃべりだすということもまずありません。

 この事前準備により、スムーズに落ち着いて呼吸を評価することができます。

次回は、呼吸の数え方について説明する予定です。

(投稿者:斉藤 群大)

「 呼吸 」 をどう評価するか?2017年05月24日 

看護師に「呼吸状態はどうですか?」と聞くと、「サーチ(SpO2)は98%です」のような回答が返ってくることが多いです。

しかし、もし測定機器(パルスオキシメータ―)がなかったら、呼吸状態をどのように評価するのでしょうか?

ちなみにパルスオキシメータ―は指先の皮膚を流れる動脈血酸素飽和度を測定するものなので、指先の血の巡り(末しょう循環)が悪い患者さんではしばしば「 測定不能 」となります。

パルスオキシメータ―は確かに便利で素晴らしいものですが、そのような欠点(末しょう循環が悪いと信頼できない)もあるわけですし、機器に頼り切った呼吸の評価法はプロとしてふさわしいものではありません。

私からすると、パルスオキシメーターの数字はあくまでも参考データという認識です。

呼吸は

「規則正しく呼吸をしているか?」という呼吸様式

「呼吸は正常(速くも遅くもない)か?」という呼吸数

「唇や指先が紫がかっていないか?」というチアノーゼ所見

という「身体所見」で評価します。

測定機器からではなく、「 生の患者 」から所見を取るクセをつけるようにしましょう。

 次回は、実際に所見を取る方法を詳しく説明する予定です。

(投稿者:斉藤 群大)

「 呼吸数・呼吸様式 」というバイタルサイン2017年05月23日 

5月19日のブログでは「バイタルサインとはなにか?」について書きました。

そこでは「バイタルサインとは、呼吸数、呼吸様式、動脈血酸素飽和度(SpO2)、チアノーゼ所見、血圧、脈拍、不整脈の有無、意識レベル、尿量、体温のことだ」とやや断定的に書きました。

バイタルサインについての明確な定義というのはありませんので、異論のある方もいると思います。

「尿量はバイタルサインじゃないでしょ!」とか、「血糖値もバイタルサインじゃないの?」とか・・・。

ただ、「○○はバイタルサインか?××は違うか?」などというのは、はっきり言ってどうでもいいと思っています。

大切なことは「患者が死にそうなのか、死ななそうなのかを判断するためには何をみるべきなのか?」「なにが一番重要なバイタルサインか?」ということです。

いきなり結論を言うと

「一番大切なバイタルサインは呼吸数・呼吸様式」

です。

なぜならば

「生命が危機的な状況なのに穏やかに普通に呼吸をしているなどということは考えられない」

からです。

しかも

「呼吸数や呼吸様式を診るのに、特別な測定機器などは一切不要」

です。

慣れてくれば時計すら不要で、約10秒で判断できます(その方法は後日説明する予定です)。

 

私は医師という立場上、患者の容体について報告を受けることが非常に多いです。特に、患者の緊急性を示す指標としてバイタルサインは極めて重要ですので、真っ先に報告されます。

しかし、その報告の中で「呼吸数」が報告されることは極めてまれです。

カルテ、報告書、紹介状などにバイタルサインの記録をよくみますが、そこにも呼吸数が記録されていることはほとんどありません。

いかに「呼吸数」というバイタルサインがないがしろにされているかがわかるかと思います。

 

(投稿者:斉藤 群大)

サッカー日本代表チームにおけるリスク管理2017年05月22日 

昨日からの続きで、日本整形外科学会学術集会の報告です。

「サッカー日本代表チームにおけるリスク管理 」

2010年からの4年間(ザックジャパン時代)、サッカー日本代表のチームドクターを務めた順天堂大学 池田 浩先生の講演です。

サッカー日本代表は表向きは華やかなイメージがありますが、チームドクターが見た裏側の話を聞けました。日本代表に限らず、プロサッカー選手は痛みがない人がいないくらいの過酷な状態で身を削るようにしてプレーしているようです。うろ覚えですが以下のような内容でした。

南アフリカ大会では海外組が4人しかいなかったが、ザックジャパンでは23人のうち半数以上が海外組となった。海外組の選手、所属チームのチームドクターと怪我の状況などを電話でやり取りするため、携帯の時刻はヨーロッパの時刻も登録していた。時差の関係で夜中に電話でやり取りすることもたびたびあった。海外のリーグは日本よりもレベルが高いため、また休むと試合に出られなくなるため、長距離の移動の影響などのため、過密スケジュールになりやすく、海外組に怪我人が多かった。怪我は肉離れが多く、同一選手の同一個所に複数回の怪我が起こっていた。選手の疲労度などを把握するために、自己評価シートや血液検査などで評価し、そのデータを監督に報告し、監督が練習メニューを決めていた。

脳震盪は非常に危険なため、試合中に脳震盪を起こした場合は、その後プレーは続行させてはならないそうです。PRP(多血小板血漿療法)はエビデンスがあるという報告やないという報告もあり、所属チームによって方針が異なっているようです(長友選手の所属するインテルではするし、吉田麻也選手が所属するサウサンプトンではしない)。半月板損傷は、縫合したほうが長期成績が良いが復帰まで4-6か月かかり、再発のリスクもあるのが難点。治療よりも予防の方がはるかに大切で、ハムストリングのエキセントリックトレーニングなどが重要とのこと。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

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