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うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった (光文社新書)

2018年06月07日 

『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった 藤川徳美 光文社新書』

無題

○イライラしやすい。集中力低下。神経過敏。些細なことが気になる。
○立ちくらみ、めまい、耳鳴り。偏頭痛。
○節々の痛み(関節、筋肉)。腰痛。
○喉の違和感(喉が詰まる)。
○冷え性。
○朝なかなか起きられない。疲れ。
○出血(アザ)。コラーゲン劣化(肌、髪、爪、シミ)。ニキビ、肌荒れ。
○不妊。
○レストレスレッグス症候群(RLS=ムズムズ足症候群)。
○やたらと氷を食べる。
本書p96、97より抜粋

上記のような症状はみられませんか?これらは女性の不定愁訴でよくみられます。もしかしたらそれは鉄不足の症状かもしれません。

筆者は精神科医なのですが、精神疾患に栄養療法を取り入れた治療を行っています。実際に、鉄剤の投与と、高タンパク・低糖質の食事指導によって、劇的に改善した症例が本書に何例もあげられています。精神疾患の中でも、特にうつやパニック障害の方に著効しています。これは、鉄が神経伝達物資であるセロトニン、ドーパミン作成の際の補因子になることが関係していると思われます。

さて、現在の日本人の食生活を一言で言えば、糖質過多+鉄・タンパク質・脂肪酸・ビタミン・ミネラル不足になっています。生きていく上でのカロリーは足りていても、必要な栄養素が足りていない状態で、これを「質的な栄養失調」と呼んでいます。これは、精製された穀物(米や小麦粉)や加工食品の偏った摂取によって起こっています。特に鉄に関しては、日本人の15~50歳の女性の99%が鉄不足になっているというデータが示されています。この年齢の女性に鉄不足が多いのは、第二次性徴期に鉄需要が増大すること、1回の月経によって20~30mgの鉄が失われること、1回の妊娠・出産でフェリチン値で50に相当する鉄が胎児に移行すること(これが産後うつの発生に関係しているのではと考えられています)などによります。世界各国では、小麦粉に鉄が添加されるなどの鉄補給対策がなされていますが、日本では国民の鉄不足に対して何一つ対策がとられていません。

そのため、鉄不足は「自衛」するしかありません。まずは血液検査でフェリチン(鉄を貯蔵するタンパク質)値を測定することから始まります。50以下であれば、鉄剤投与の適応になります。

多くの医師は、鉄欠乏=貧血と考えていて、鉄欠乏性貧血に対しては鉄剤を投与しますが、貧血のない鉄不足に関しては関心がありません。しかし、鉄は赤血球を作る材料としての役割だけではなく、エネルギー代謝の最終段階において不可欠(ミトコンドリアにおける電子伝達系に鉄が必須)という、生命活動の根幹に関わる重要な役割があるのです。鉄が不足するとエネルギー不足に陥ります。これを無視したあらゆる疾病の治療は、本末転倒なものになります。

藤川先生の示している基準を以下に載せておきます。

BUN 目標15~20mg/dl(一般的には8~20mg/dl) 10以下が重度のタンパク質不足

MCV 目標95~98fl(一般的には80~100fl)

フェリチン 目標100ng/ml(一般的には男性21~282ng/ml、女性5~157ng/ml)

フェリチン30以下(重篤な鉄不足)でMCV90以下は鉄剤投与の適応

フェリチン31~50 50越えを目標として鉄剤投与

尚、当院では数年前から隠れた鉄不足に着目し、フェリチン値を測定の上、積極的に鉄剤を処方しています。そして、不定愁訴とも思われる症状が改善した症例を数多く経験しています。しかし、このような基準で治療しているクリニックはほとんどないと思われます。そういったクリニックにかかれない方が「自衛」する手段も本書には載っていますので、詳しくは本書を参考にしてみてください。

(投稿者:斉藤 揚三)

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