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未来年表 人口減少危機論のウソ2018年12月10日 

『未来年表 人口減少危機論のウソ 髙橋洋一  扶桑社新書』

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この本は、ベストセラーとなった、「未来の年表(講談社現代新書)」を意識して書かれていると思われます。「未来の年表」は、将来の日本の人口を予想し、未来に起こりうることが年表として書かれており、どちらかというと将来の人口減少に対して不安をあおるような内容でした。一方、本書では「未来の年表」に書かれている事態は想定内のことで、特に問題はないと述べています。

人口減少は必ずしも不幸な事ではないといった根拠として、人口増減率と経済成長率は相関がない、デフレと人口減少も無関係、人口減少で社会保障は破綻しない、といえるデータを示しています。

興味深かったのは、出生率は政府がコントロールできないというところです。政府が出生率をコントロールできるとしたら、中国の「一人っ子政策」のように強制的に減らすことだが、それも民主主義の日本では無理。増やすようにするには、婚外子を認めるか、人工中絶を禁止するなどの政策が考えられるが、そこまでする必要があるのかというのが筆者の考えです。

確かに、人口が減ればそれだけ需要が減りますが、供給側も同じように減るので(つまりライバルが減るということ)、生き残っていけるというわけです。そもそも人口が増えようが減ろうが、駄目なサービスは駄目なわけで、人口減少危機論に惑わされず、今の自分の仕事に集中するほうがベターです。

本書を読んで、将来の人口減少をことさら不安視しなくてよいと分かり、少し明るい気持ちになりました。

(投稿者:斉藤 揚三)

風邪に総合感冒薬やうがい薬を使ってよいのか?2018年12月03日 

風邪のシーズンがやってきました。

患者さんから「総合感冒薬を使ってよいか?」と聞かれることがよくあります。

結論から言うと、使うことはオススメしません。

というのは、総合感冒薬の中には、鼻汁を減らすことを目的としてなのか、抗ヒスタミン薬が入っていることがほとんどだからです。

抗ヒスタミン薬には抗コリン作用があり、抗コリン作用によって、眠気が強くなったり(傾眠)、ふらついて転倒したり、おかしな行動をとったり(せん妄)、尿がでなくなったり(尿閉)することがあります。

特に高齢者では上記の副作用がでやすいので注意が必要です。

そのため当院では風邪の方には、主に漢方薬を処方しています。

また、「イソジンなどのうがい薬を使ってもよいか?」という質問もよくありますが、これは以下の点からオススメしていません。

うがい薬は消毒薬と同じですが、病原菌を殺すだけではなく、常在菌も殺してしまいます。そうすると、消毒薬に耐性のあるさらに強力な病原菌がはびこることになります。

また、うがい薬自体には組織障害性があり、正常な組織を傷めてしまいます。

つまり、うがい薬を使うことは、せっせと喉を傷めつけているようなものなのです。

そもそも、うがいが風邪の治療や予防にどの程度効果的なのかは議論のあるところです。それでもうがいをしたいという人は、うがい薬を使用せずただの水道水で行った方がいいとは言えるでしょう。

(投稿者:斉藤 揚三)

認知症 一般病院で拘束45%の記事2018年11月27日 

<45%、身体拘束経験 一般病院に入院時 がんセンター調査>

認知症の人が病気やけがで一般の病院に入院した際、45%の人が自由に体を動かせないようにされる身体拘束を受けていたとの調査結果を、国立がん研究センターと東京都医学総合研究所の研究チームがまとめた。転倒などのリスク回避が主な理由だが、研究チームは「拘束が習慣化している可能性があり、身体機能の低下や認知症の進行などデメリットを検討して不必要な拘束を減らす取り組みが必要だ」としている。

 身体拘束は、介護施設では原則禁止。精神科病院については法律上も限定的に容認されているが、一般病院では医師や看護師らの判断に委ねられている。

 昨年2~3月、100床以上ある全国の一般病院3446カ所に調査票を送り、937カ所が回答。認知症かその疑いのある入院患者2万3539人のうち、45%の1万480人が身体拘束を受けていた。

 拘束方法を複数回答可で尋ねると、最多は「ベッドから下りられないように柵で囲む」で69%。「車椅子にベルトなどで固定する」(28%)、「点滴などのチューブを抜かないようミトン型の手袋を着ける」(26%)が続いた。拘束理由は「転倒・転落のリスク」(47%)、「チューブを抜くリスク」(14%)、「チューブを抜いたから」(10%)の順。職員の配置数や専門性に関係なく行われていた。

 2016年度の診療報酬改定で新設された「認知症ケア加算」では、身体拘束すると報酬上乗せ額が低くなる。しかし、この加算を取得した病院でも42%の人が拘束を受けており、効果は限定的だった。

 研究チームの小川朝生・国立がん研究センター東病院精神腫瘍科長は「病院側には治療のために身体拘束は当然必要だという意識があり、さらに転倒に対する家族からのクレームを恐れるあまり、過剰な拘束をしている可能性がある。拘束が退院後の生活に与える影響について、医療者や患者家族が正しく理解した上で必要な対処を議論すべきだ」と話す。

毎日新聞

こういった記事をみて、過剰な拘束をしていると病院を責めることはナンセンスです。以下の記事をご覧ください。

<病院に2770万賠償命令 熊本、入院中転倒で後遺症>

熊本市で2013年、認知症で入院中に転倒し、全身まひの障害を負った熊本県菊陽町の男性(95)と親族が、病院を経営する医療法人佐藤会(同市)に約3890万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は17日、約2770万円の支払いを命じた。

 判決によると、男性は13年5月、認知症の投薬治療のため入院した際、車いすに乗って1人でトイレに行き転倒。頭を打ち、全身まひの障害が残り、寝たきりの状態となった。

 小野寺優子(おのでら・ゆうこ)裁判長は判決理由で、男性は歩く際にふらつきが見られ、転倒する危険性は十分予測できたと指摘。その上で、病院では看護師数が足りない状況が常態化していたとし「今回の事故でも速やかに介助できるよう見守る義務を怠った」と述べた。

共同通信2018年10月17日

こういった判例もあるので、事故を起こさないようにするために過剰な拘束をせざる得ないのは当然です。

それでも身体拘束が人道的に問題で、減らすようにしたいのであれば、「拘束の同意書」をとるのではなく、逆に、「拘束をしない同意書」をとるしかないと思います。これは、拘束をしないことで事故(転倒、転落、チューブの抜去など)が起きたとしても、病院は責任を取らないという同意書です。

つまり、縛り付けたとしても事故を起こさないようにするのか、人間らしく生きるために事故を許容するのか、の2択から選択してもらうのです。

さて、判例では、95歳の認知症の方が自分でトイレに行き、不幸にも転倒してしまい、打ちどころが悪くて麻痺が残ったという経過でした。判決では、「見守る義務を怠った」とありますが、24時間転倒しないように見守ることなど不可能です。医療現場の感覚とはあまりにもかけ離れた判決だと思います。

転倒しないようにベッドに縛り付けられ、排せつはオムツに行い、廃用が進み寝たきりになる。一方、自分でトイレに行き、転倒して麻痺が起こり寝たきりになる。寝たきりという結果は同じでも、後者では人間の尊厳は保たれているのです!

このような判決がまかり通るのであれば、今後、認知症で転倒リスクの高い患者は全員拘束される、あるいは入院を拒否される、ということになってもおかしくありません。

(投稿者:斉藤 揚三)

食生活と身体の退化2018年11月06日 

『食生活と身体の退化-先住民の伝統食と近代食 その身体への驚くべき影響ー W.A.PRICE 恒志会』

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この本は、歯科医師のプライス博士が、世界中の先住民の口腔内の状態を調べて報告した本で、1939年にアメリカで出版されました。今から約80年も前に出されたというのが驚きです。

以前このブログで、日本中の村の食生活を実地調査した「日本の長寿村・短命村」という本を紹介しました。一方、これとほぼ同時代の交通機関が発達していなかった時代に、イヌイット、インディアン、メラネシア人、アフリカの部族、アボリジニーなど、世界中の先住民族の食生活と口腔内の関係を実地調査していた方がいたのです。伝統食を続けている先住民が少なくなっている現代では、非常に貴重な資料にもなっていると思われます。

本書によると、世界中のあらゆる先住民は例外なく、近代商業食品(精白小麦粉、砂糖、精白米、植物油、缶詰食品)が入ってくると、虫歯が蔓延し、歯列弓の不正から乱杭歯、鼻孔の狭小化から口呼吸になり、また、結核などの伝染病、関節炎にかかる人が多くなります。一方で、伝統食を守って食べている先住民には虫歯はほとんどなく、いたって健康なのです。

このことが、豊富な写真によって、一目瞭然で分かるようになっています。

先住民の伝統食と近代食を比較すると、近代食ではビタミンやミネラルが圧倒的に不足しています。これが、身体の退化に関係しているのではないかと本書では考察しています。身体の退化には、目に見える形で現れる虫歯や乱杭歯だけではなく、目に見えない脳の障害=精神障害も含まれます。

逆に言えば、虫歯、伝染病、慢性関節炎、精神障害などは、栄養状態を改善させることで治る可能性があるということです。私たちは、最新の栄養学ではなく、先住民の知恵から学ぶ必要があるのではないかと思います。

本を買う余裕がない方は要約がpdfで公開されていますので、こちらを見てみて下さい。

(投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療におけるエコーガイド下膝関節穿刺2018年10月30日 

訪問診療の際に、左膝を痛がり、左膝関節が腫れている患者さんがいました。

エコーを見ながら、膝関節穿刺をしました。

プローブは膝蓋骨の頭側に置きます。膝蓋上嚢に貯留した関節液である低エコーのスペースがみえます。平行法で穿刺します。

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ポケットエコー(Vscan)であっても、針の先端のべベルの向きまで分かります。

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エコーを使わなくても穿刺くらいできるじゃないかという意見もあると思いますが、エコーを使うメリットとしては、

①針の先端が見えるので安心感がある。大腿骨や大腿四頭筋腱に当てずに確実に針を進めることができる。
②関節液がどこにどのぐらい溜まっていて、関節液が抜けていく様子が視覚的に分かります。

この症例では15mlくらいの淡黄色透明の関節液を採取しました。

(投稿者:斉藤 揚三)

ガッテン!「認知症の人が劇的変化!”アイコンタクト”パワー全開SP」2018年10月27日 

10/24(水)、NHK『ガッテン!』で当院でも取り組んでいるユマニチュードが取り上げられていました。

ユマニチュードとは認知症の方に対するケアの技法です。

ユマニチュードは4つの柱に、「見る、話す、触れる、立つ」があり、これらを使って認知症の方をケアするのですが、番組では主に「見る」ことに焦点を当てていました。

番組では、ユマニチュードによって劇的に変化した患者さんが取り上げられており、スタジオでは驚きの声が上がっていました。

京都大学の研究で、ユマニチュードの創設者である、イヴ・ジネストさんの視線を解析するというのも出ていましたが、ジネストさんは、あらゆる状況でも視線が患者さんの目をとらえていた点が印象的でした。

こういった番組を通して、ユマニチュードが広く一般の方にも知られることはとても良いことだと思います。

ちなみに先日、寝たきりで暴力的な患者さんにユマニチュードを使って接したのですが、顔を近づけて診察しようとしたら、マスクを引きちぎられ、胸を引っかかれました。自分はまだまだ、研鑽が必要なようです。

(投稿者:斉藤 揚三)

訪問診療における医師と患者の位置関係2018年10月24日 

訪問診療では、患者さんが暮らしているところに出向いて診察するため、あらゆる場所で診察することになります。

その際には、患者さんとの位置関係に注意する必要があります。

心理学において、真正面に対面して視線が合うと、緊張や圧迫感を与えてしまうと言われています。一方、横や斜めからだと、直接的に視線が合いにくいため、緊張や圧迫感を与えにくく、親密な関係を築くことができます。

外来の診察室では、最初から患者さんと真正面に対面しないように設計されているので、このようなことは考えなくてもいいのですが、訪問診療では気をつけなければなりません。

これはとある有料老人ホームの診察前にセッティングされたイスと机の位置関係を示しています。左が患者さんのイス。手前が医師の机とイスになります。この位置関係は正しい位置関係となります。

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万が一、下のようにセッティングされていた場合、上のようにイスと机の位置を直さなければなりません。

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診察スペースの関係で、なかなか難しいこともありますが、できるだけ真正面にならないように、横や斜めからの診察を心がけています。ただし、認知機能が低下している患者さんでは、視界が狭くなっていて、正面しか認識できないため、正面から近づいていく場合もあります。

(投稿者:斉藤 揚三)

バイタルサインの勉強会2018年10月19日 

本日はとあるグループホームからの依頼で、「バイタルサインの見方や考え方」についての勉強会をしてきました。

昨年度、当院が主催して行った勉強会とほぼ同じ内容です。明日からの仕事に少しでも役立つ事があればと思い、話してきました。

さて、本日の救急対応についての話を一つ。

本日夕方、当院で訪問診療していて、施設に入居している80歳台の患者さんについての報告がありました。今朝から頭痛があり、昼食後に嘔吐。夕方になって38.1℃の発熱と寒気がみられるとのことでした。

至急往診して、まずはバイタルサインを確認しました。
バイタルサインは、意識清明、呼吸数30回/分、血圧144/70mmHg、脈拍118回/分、SpO2 94%、体温38.6℃でした。悪寒戦慄もみられました。

SIRSの診断基準より、①38℃以上②呼吸数20回/分以上③脈拍90回/分以上に当てはまっているため敗血症が疑われました。

敗血症では、頑張り切れなくなってくると血圧低下や意識障害がみられます。この症例ではその症候はなく、むしろ、頑張っている症候である頻脈や高熱がみられました。

しかし、この状態を放置していると、いずれ頑張り切れなくなってきて、血圧低下や意識障害をきたしてきます。その時点で対応すると後手後手に回ってしまいます。

また、80歳以上で悪寒戦慄があると菌血症を強く示唆します。有名な格言に「患者が震えていれば、医師も震えなければならない」というものがあります。

私も震えるような気持ちで、感染源を検索しました。右上腹部に圧痛があり、エコーで胆のうや総胆管に拡張がみられたことから、急性胆管炎を疑いました。

胆道ドレナージなどの治療が必要になる可能性も考え、病院へ連絡し紹介状を作成、救急車を手配しました。

敗血症が疑われるため、また勉強会の時間も迫っていたため、ここまでを20分くらいの超高速で終わらせました。

しかし、週末の仕事終わりの時間帯に紹介してしまい、病院の先生には大変なご迷惑をおかけしたことと思います。もう少し早い段階で施設から連絡があれば、もっと落ち着いた対応ができたのではないかと思います。

熱が上がる前の早い段階で異常に気付くには、呼吸数を測らなければなりません。

本日の勉強会でもさんざん言いましたが、バイタルサインの中では呼吸数が最も重要!なのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

インフルエンザの予防接種2018年10月17日 

本日はとある介護施設に訪問して、職員の方40名ちかくに一斉に、インフルエンザの予防接種を行いました。

インフルエンザの予防接種には、インフルエンザの発症を防ぐ効果と、発症したとしても肺炎などの重症化や入院、死亡を防ぐ効果があります。

インフルエンザに罹った際に重症化するリスクが高い人は、高齢者、妊婦、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息、心不全、腎不全、糖尿病、免疫不全の方などがあげられます。

つまり、これら重症化するリスクが高い方、また、リスクが高い方と一緒に生活している家族や接触する頻度が高い医療・介護職の方は、特にインフルエンザの予防接種をお勧めします。

(投稿者:斉藤 揚三)

ショートステイ先への訪問診療2018年10月12日 

ショートステイ(短期入所生活介護)先に訪問診療に行ってよいのかどうか、ケアマネージャーさんも分からない方が多いようなので、まとめてみました。

2016年度の診療報酬改定でショートステイ先にも訪問診療ができるようになりましたが、それには条件があります。

それは、「サービス利用前の30日以内に患家を訪問し、在宅患者訪問診療料、在宅時医学総合管理料(在総管)、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)、在宅がん医療総合診療料を算定した医療機関の医師(配置医師を除く)が診察した場合に限り、サービス利用開始後30日までに訪問診療料や施設総管を算定できる」というものです。

つまり、自宅で定期的に訪問診療をしていた場合、ショートステイ利用開始後30日までは、ショートステイ先に訪問診療に行くことができます。ただしその場合は、在総管ではなく施設総管での算定になります。

また、ショートステイ中に体調不良になった場合などは、ショートステイ先に往診することもでき、往診料も算定できます。

しかし介護保険と医療保険を同時請求できないからなのか、施設の決まりなのか、上記を説明しても、ショートステイ先に診察に来てもらっては困ると言われ、ショートステイから自宅に戻って診察することもよくあります。

当院としては、患者さんが診察のためにいちいち自宅に戻るというのは不便だと思うので、施設がよければ、ショートステイ先にも診察に行っています。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

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