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在宅医療を始めるにあたって読んでおきたい本5冊2019年02月18日 

在宅医療を始めるにあたって読んでおきたい本5冊を独断と偏見であげてみます。

在宅医療の対象患者さんは高齢者が主で、また対象となる科は全科に及んでいるため、必然的に老年医学や総合診療の本になります。

『高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス 上田剛士 Signe』 

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在宅医療では、病院と違って、当然のことながら検査をしづらい環境にあります。また、認知症の方が多く、病歴を聴取できないことも多いです。そのため、在宅医療では余計、身体診察が重要になってきます。この本は、どのような身体所見があれば、どのくらいの確率で、どのような疾患が疑われるのかをエビデンスとともに示してくれます。身体診察を武器にできるようになります。

『科学的認知症診療 5Lessons 小田陽彦 Signe』

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在宅医療では認知症の方を診る機会が多いので、認知症に対する薬物治療もできなければなりません。河野和彦先生が提唱する「コウノメソッド」は、非専門医が処方をするうえで、分かりやすい指標を与えてくれます。しかし、ベンゾジアゼピン系受容体作動薬の問題などは、コウノメソッドでは取り上げられていないので、この本で補う必要があります。

『緩和治療薬の考え方、使い方 ver.2 森田達也 中外医学社』

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在宅医療では、癌患者さんの緩和ケアもします。この本は、緩和ケアの現場で遭遇するあらゆる症状(痛み、呼吸困難、悪心嘔吐、食欲不振、便秘、倦怠感、眠気、不安、不眠など)に対する、薬物治療について書かれています。個人的には、抗精神病薬と作用する受容体について書かれた項目が特に勉強になりました。この本に沿って処方をすれば、まず間違いはないです。

『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015 日本老年医学会』

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日本老年医学会から出されているガイドラインです。高齢者に「特に慎重な投与を要する薬物」、「開始を考慮するべき薬物」のリストが領域別に載っています。根拠をもって、薬を中止したり開始したりすることができるようになります。

『トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第2版 仲田和正 CBR』

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あらゆる領域の最重要論文が取りあげられ、解説し、まとめられています。論文とは全く関係のない文章もありますが、そこを息抜きとして読んでもいいですし、時間がなければ最重要点のまとめを読むたけでも勉強になります。筆者は「とくにこれから僻地離島に赴任される先生方はこの1冊を持っていけば日常診療にさほど困らないと確信しております。」と書かれていますが、まさにそのとおりの本だと言えます。

(投稿者:斉藤 揚三)

大腿骨近位部骨折の手術に対する整形外科医のジレンマ2019年02月12日 

大腿骨近位部骨折は高齢者によく起こる骨折の一つですが、高齢化に伴って、大腿骨近位部骨折を起こす方の人数も年々増えてきています(2012年約18万例)。

大腿骨近位部骨折は、手術をしないと歩行ができず、多くが寝たきり状態になってしまうので、手術をすることが原則です。手術自体は、整形外科の手術の中では「簡単」といわれている部類に入ります。

手術は簡単であっても、高齢者は疾病を多く持っている方が多いので、麻酔や手術に全身が耐えられるのかどうかの判断をしなければなりません。

整形外科医自ら麻酔をかける病院もあるとは思いますが、多くの病院では麻酔は麻酔科に依頼されます。

しかし、麻酔科から「麻酔をかけるのは危険だ」と判断されれば、手術はできません。

麻酔が危険だと判断される背景には、患者の全身状態や術後合併症が出現した際に対応ができるのかどうかなども考慮されていると思います。しかし、麻酔がかけられるのか、かけられないかの基準は病院や麻酔科によっても異なり、非常にあいまいなものです。

「麻酔がかけられない=手術ができない」とどうなるかと言うと、保存治療ということになり、そのまま放置されることになります。

そうなると、ほとんどの方が寝たきりになります。保存治療は手術治療と比べ1年後の死亡率が4倍になるという報告もあります。

このようなデータをみると、手術にリスクがある方でも、(死亡する可能性も了解してもらえれば)リスクを覚悟で手術をするという選択肢もあると思います。「座して死を待つよりも、出て活路を見いださん」というわけです。

しかし、いくら患者の家族と整形外科医のなかで合意が得られていたとしても、麻酔科から麻酔をかけられないと言われたら手術はできないのです。

また、手術はできるだけ早く行うのが理想です。手術は24時間(できれば48時間)以内に行うと良いのです。3日以降の手術と比較して、早期の手術で死亡率が低下したという報告もあります。

整形外科の視点から言えば、待機してから手術を行うメリットは何一つありません(術前に内科的合併症の治療をする場合を除く)。手術が遅くなれば、それだけリハビリが遅れ、1日寝ているだけで筋力は1~3%低下します。寝ていれば、深部静脈血栓症や誤嚥性肺炎、褥瘡のリスクも上がります。

しかし、骨折は命に関わらないと思われていますし、早期にリハビリを行うことの意義も、整形外科医以外や一般の方は分からないので、骨折を早く手術した方がいいとは認識されていません。

確かに骨折が直接命に関わることはあまりありませんが、大腿骨近位部骨折の1年後の死亡率は約10%です。間接的には命に関わっているのです。

早期に手術ができる体制になっている病院は稀です。手術枠にも限りがあり、日本では、手術までに長い期間待機しているのが現状です。

整形外科医は手っ取り早く手術をしてしまいたいのです。病院の体制の問題だったり、麻酔科から麻酔を拒否されたり、早期手術のメリットが認識がされていないなどで、手術ができないだけなのです。

手術自体は簡単ですが、手術のマネジメントだったり、合併症の治療に頭を悩ませているのが整形外科医なのです。

まとめると、

・大腿骨近位部骨折は高齢者によく起こる骨折。高齢になればなるほど疾病を多く抱えているため、整形外科医は、手術よりも合併症の管理が大変になっている。

・麻酔科から麻酔を拒否されれば手術ができない。そしてその基準が不明確。手術をしないと、寝たきりになり、手術した群と比べ1年後の死亡率は4倍になるなど、不利益が大きい。

・手術はできるだけ早く(24~48時間以内)行った方がいいが、骨折は命に関わらないとのことで後回しにされたり、手術枠の関係などがあり、日本では不必要に待機されることが多い。

解決策があるとすれば、地域に一カ所、骨折患者を集めて治療をする外傷センターを作り、整形外科医が手術だけに集中できる環境を作ることですが、国の方針としてそうはなっていません。

いろいろな制限がある中で、地域の整形外科医は使える医療資源で何とか奮闘しているというのが現状なのです。

(投稿者:斉藤 揚三)

表皮剥離創の治療例2019年01月28日 

症例:98歳 女性 グループホーム入所中 高度認知症あり ADL全介助車イスレベル

引っ掻いたのかぶつけたのか、右前腕の表皮剥離を受傷。OLYMPUS DIGITAL CAMERA

攝子を用いて可及的に皮膚を戻します。この症例は受傷から2日経っていましたが、何とか戻せました。傷の角ばったところを目印にして、剥離した皮膚をパズルのように合わせます。ポイントは血液や浸出液を利用して剥離した皮膚を伸ばすことだと考えています。室内で受傷した傷で汚くなければ、必ずしも洗浄は必要ありません。この症例でもそうですが、洗浄すると痛みで暴れることが予想されます。
受傷から時間が経っていて、剥離した皮膚が乾燥している場合は戻せないことがあります。その場合は、皮膚を切除しなければなりません。

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ステリストリップを貼り、その上から大きめの絆創膏でドレッシングします。ステリストリップは傷が治ってもはがさず、自然にはがれるのを待つように指導します。

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受傷後2週。傷を引っ掻かないようにフィルムが貼られていました。

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受傷後4週。ほぼ治癒しています。

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 (投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療におけるゾフルーザの使用について2019年01月21日 

当地域でも、インフルエンザが流行し始めてきています。

2018年3月に新規インフルエンザ治療薬の「ゾフルーザ」が発売され、実質的には今シーズンから使われています。

今までのインフルエンザ治療薬としては、ノイラミニダーゼ阻害薬が主流で、内服薬のタミフル、吸入薬のイナビル、リレンザ、点滴薬のラピアクタがあります。

ノイラミニダーゼ阻害薬は、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に出るのを妨げる作用があります。一方、ゾフルーザは、細胞内でウイルスが増量しないようにする作用(抗ウイルス作用)があり、より根本的な治療ができることになります。また、ゾフルーザは1回の内服で良いというのも特徴です。

ということで、インフルエンザ治療薬がタミフルからゾフルーザに変わる流れができるのかと思いきや、調べてみるとそうでもなさそうです。

ネットの記事で、亀田総合病院でゾフルーザが不採用になったことが取りあげられていました。その理由をまとめると…

・実臨床での使用実績が不十分。
・論文では、安全性・有効性ともタミフルと比較して非劣性が示された(つまり劣っていないというだけで優位ではない)。
・耐性化の問題。ゾフルーザ投与後にアミノ酸変異のあるウイルスが小児の約2割、成人の約1割で検出された。
・薬価が高い。

とのことです。

在宅医療においては、タミフルの内服管理もできないような方、イナビルの吸入もうまくできないような方に、ゾフルーザを1回だけ目の前で内服してもらうという使い方はできると思います。

しかし新薬なので、今後思わぬ副作用が報告される可能性もありますし、もう少し様子見をしたいところです。

というわけで、当院では今シーズン、主にタミフルを処方していく方針にしました。

(投稿者:斉藤 揚三)

在宅医療における糖尿病治療2019年01月07日 

2016年5月に日本糖尿病学会と日本老年医学会で示された「高齢糖尿病患者の血糖コントロール目標」で画期的だったのは、HbA1cの下限が設定されたことです。

合併症予防のためのコントロール目標はHbA1c 7.0%未満ですが、合併症予防の効果が表れるのは10~15年後なので、余命が15年以内なら意味がなく、逆に厳密な血糖コントロールは低血糖を起こし死亡リスクを上げてしまいます。

患者さんの背景にもよりますが、訪問診療を受けているような患者さんはHbA1c 7~9%くらいのコントロールでちょうどよいのではないかと考えています。7%以下にはしないのがポイントです。

そして薬剤は低血糖のリスクの少ない薬が選択されます。

①ビグアナイド薬
まず、第一選択となるのはメトホルミンです。メトホルミンは、血糖降下作用が高く、心血管イベントを減らし、体重を減らし、低血糖リスクが少なく、食欲抑制効果があり、安価で、癌発生抑制効果も期待されています。副作用としては乳酸アシドーシスが有名ですが、禁忌例(腎機能低下者、高齢者など)にさえ使わなければ、安全と言われています。eGFR30未満では禁忌、eGFR30~45では注意深く使う必要があります。高齢者は腎機能、肝機能の予備能が低下している方が多いので、75歳(あるいは80歳)以上では新規で処方しない方が良いと言われています。下痢の副作用もあります(15.3%)。

②SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬
第二選択となるのは、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬と考えています。SGLT2阻害薬は、尿に糖を捨てる薬です。腎機能が低下している(eGFR45以下)と効果が発揮できません。尿量が増えるため、脱水→脳梗塞に注意が必要です。処方の場合は、もともとの利尿薬を減らすなども必要です。また、尿路感染症の増加にも注意が必要です。利尿効果によるものか心血管イベント予防効果や、さらに腎保護効果も報告されてきているので、エビデンスの集積が待たれます。
DPP-4阻害薬は胆汁排泄型(トラゼンタ、テネリア)の薬剤もあるので、腎機能が悪くても使えます。1日1回の内服薬もあり、副作用が少なく使いやすいですが、血糖を下げる以外の効果が期待できないことが欠点です。

③α-GI
炭水化物の摂取が多い方には、α-GIの追加が考えられます。この薬は糖の吸収を穏やかにし、食後高血糖を改善させる薬です。そのため、食「直前」投与なのが注意点です。服薬アドヒアランスが不良になるのが欠点ですが、これは全ての薬を食直前にまとめてしまえば解決します。

④GLP-1受容体作動薬 
皮下注射製剤です。トルリシティという週1回の製剤があるので、自己注射ができない患者さんに、週1回在宅医療で注射するという方法で使えると思います(当院ではまだ使用経験はありません)。DPP-4阻害薬と併用できないのが注意点です。

⑤BOT(Basal supported Oral Therapy)
経口血糖降下薬でコントロールが不良な場合、経口血糖降下薬の内服を続けながら、持効型インスリン製剤(トレシーバ、ランタスXRなど)を1日1回自己注射してもらう方法です。低血糖のリスクが少なく、安全にインスリンを導入できます。

⑥使うべきでない薬
SU薬は低血糖を起こすリスクが高く使うべきではないと考えます。チアゾリジン薬(アクトス)は、インスリン抵抗性を改善させる薬剤ですが、副作用が多く(心不全、浮腫、骨粗鬆症)使うべきではないと考えます。

(投稿者:斉藤 揚三)

あけましておめでとうございます2019年01月01日 

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年末年始も臨時の往診や少ないながらも定期の訪問診療を行っています。

新年早々、本日も定期の訪問診療に行ってきました。

今年も「患者さんを第一に考えた医療」を実践していきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(投稿者:斉藤 揚三)

硫黄島の遺骨探索を本格着手 来春から新型レーダー投入2018年12月31日 

先の大戦で激戦地となった硫黄島(いおうとう、東京都小笠原村)で、政府が来年4月から新型の高性能レーダーを使った遺骨探索調査に着手することが30日、分かった。硫黄島では遺骨収集が難航しており、戦没者約2万1900人のうち、今も1万柱を超える遺骨が眠ったまま。島内に敷設された滑走路の地下に遺骨が多く埋まっているとみられ、新型レーダーを使って本格的に調査する方針だ。

 政府関係者によると、これまでは地下10メートル程度しか探索できないレーダーを使用していたが、防衛省が15メートル以上探索できる新型レーダーを開発、完成させた。1月からテストを始め、4月から現地に投入する。レーダーで遺骨があるとみられる地下壕(ごう)が確認されれば、ボーリングでさらに調査する。

硫黄島では、日本軍が多くの地下壕を築いて戦いを展開。面積22平方キロの島内に総延長18キロもの地下壕を構築して米軍を迎え撃った。米軍による砲撃で多くの壕は埋没している。

 平成22年度に当時の民主党政権が硫黄島での「事業強化」を表明し、収集数は一時伸びた。28年に遺骨収集を「国の責務」と記した戦没者遺骨収集推進法が成立したものの、近年の収集数は年数十柱程度にとどまっている。硫黄島の戦いで指揮を執った栗林忠道(ただみち)陸軍中将や、ロサンゼルス五輪馬術金メダリストの「バロン西」こと西竹一中佐の遺骨も見つかっていないとされる。

 遺骨収集が難航している理由の一つに、島に敷設された自衛隊機発着用の滑走路(昭和43年運用開始)の地下探索・調査が進んでいなかったことがある。

旧型レーダーでは滑走路の地下で約100カ所の反応があったが、深度や精度の点で不十分で、さらに奥深くに多くの遺骨が埋まっている可能性がある。平成29年12月に厚生労働省の職員らが、滑走路の地下約5メートルの壕から探索を実施し、地下約16メートル付近で2柱の遺骨を発見したことも新型レーダーの開発を促した。

 ただ、本格的な遺骨の発見・収集には、滑走路の移設が必要になる。移設には10年間で500億円の予算が必要なこともあり、政府は新型レーダー調査などを経て、今後数年間で移設の可否を探る。

2018.12.30 産経ニュース

戦後70年以上経ち、ようやくここまでこぎつけたのかというのがこのニュースを読んだ率直な感想です。しかしここまでこぎつけたのも、青山繁晴議員の問題提起があったからだと思います。硫黄島の戦いについては、以下の動画をご覧ください。

今、我々が平和に暮らしていけているのは、日本のために戦ってくれた先人がいたからです。どんなに費用がかかろうとも、滑走路を引きはがし、できうる限り遺骨を帰していただきたいです。

(投稿者:斉藤 揚三)

フェントステープ0.5mg2018年12月28日 

無題2フフェントステープの新用量「0.5mg」が2018年12月17日に発売されたようです。

発売されるのは分かってましたが、いつなのかは分かりませんでした。

最近、当院にご紹介された患者さんに、フェントステープ0.5mgが処方されていて、発売されていたことに気が付きました。

今まではフェントステープは1mgが最小規格でした。これは経口モルヒネに換算すると30mgになり、初回投与量としては多すぎることが問題でした。

そこで、半面貼付などの方法があったわけですが、フェントステープに0.5mgがでたことで、半面貼付は不要になり、より細かい調整ができるようになります。

とくに在宅医療では、フェントステープは使いやすい薬剤なので、これから当院でも処方する機会が増えそうです。

※フェントステープの添付文書には、「他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する」と書かれているので、フェントステープをオピオイドの導入として使うのは保険適応外とはなります。

(投稿者:斉藤 揚三)

科学的認知症診療 5Lessons2018年12月24日 

『科学的認知症診療 5Lessons 小田陽彦 Signe』

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この本は、一般臨床医に向けて書かれている認知症診療の本です。非常に読みやすく、実臨床で役立ちそうな記載がたくさんありました。特に良いのが、具体的な数字が載っていること(レビー小体型認知症に幻視が現れる確率は70%など)と、論文が明記されていることです。引用している論文はかなりの数です。私見ではなく、科学的根拠から結論を導いているので、説得力があります。

認知症診療に関して、様々な事に言及していますが、筆者が最も言いたいところは、「一般臨床医は抗認知症薬を使わないのが基本」だと思います。抗認知症薬を使っても、臨床的に意味のある認知機能改善は期待できず、副作用も懸念されるからです。抗認知症薬が日本で承認された際の非科学的な過程も考慮すべきだと分かりました。

他にも、抗コリン薬の問題、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の問題、アルコールの問題、ポリファーマシーの問題なども取り上げられています。

同じ出版社からは、『高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス』という素晴らしい本が出ていますが、本書の構成やコンセプトはそれに近く、タイトルを変えるのであれば、『認知症診療で強力な武器を持つためのエビデンス』になるでしょうか?

少しでも認知症診療に携わっている方であれば、是非とも読んでおくべき本だと思います。私もこれから何度も読み返していきたいと思っています。

(投稿者:斉藤 揚三)

減薬の一例2018年12月17日 

症例:82歳 女性

既往歴:認知症、高血圧、便秘症、不眠症

当院初診までの経過:
グループホームに入所しながら、近医に通院していた。
H30.8中旬頃~急激にADLが低下(それまでは排泄が一部介助、食事は自立、手引き歩行できていたのが寝たきり状態になり食欲も低下)した。H30.9初めに総合病院の脳外科に紹介され、慢性硬膜下血腫がみつかったが、治療を要しないとの判断となった。また、H30.8中旬(ADLが低下するのと同時期)から微熱が続いており、近医から抗生剤が処方されたが、解熱していない。寝たきり状態で通院も難しくなったため、H30.9中旬に当院に訪問診療の依頼があった。

<近医の処方内容>
メマリーOD錠 20mg 1錠
エビスタ錠60mg 1錠
アムロジン錠5mg 1錠
フェロミア錠50mg 1錠 分1 朝食後
酸化マグネシウム2g 分3 毎食後
リバスタッチパッチ18mg

以下は施設の判断で中止となっていた。
レンドルミンOD錠0.25mg 1錠
リスパダール内用液1mg 0.1% 1ml 分1 就寝前
メイアクトMS錠100mg 3錠 分3 毎食後
アドナ錠30mg 3錠 分3 毎食後

当院初診時からの経過:

経過からPMR(リウマチ性多発筋痛症)も疑われましたが、肩関節・股関節周囲に圧痛なく否定的でした。施設の判断で中止されていた、レンドルミン、リスペリドンは、内服しなくても夜は眠れているとのことだったので中止のままとしました。メイアクトも効果がないようなので、中止のままとしました。アドナも中止のままとしました。

認知症は高度で、意思疎通がわずかにできる程度だったので、抗認知症薬のメマリー、リバスタッチパッチは中止。寝たきり状態で骨粗鬆症治療の必要性も低いためエビスタは中止。血圧は低めだったので、アムロジンは中止。血液検査では、フェリチンは100以上あり、炎症に伴う上昇は否定できませんが、フェロミアは中止しました。

結果的に、酸化マグネシウムのみの処方となりました。酸化マグネシウムは便の性状をみながら、施設で調節してもらうこととしました。

ご家族には、老衰状態と考えられ、徐々に食事摂取量が少なくなる可能性を話しました。その場合は、中心静脈栄養や胃瘻造設の希望はなく、少量の点滴で見守る方針としました。

結果的に、10剤から1剤への減薬となったわけですが、H30.12現在、よく話をするようになり、食事摂取量も良好で、寝たきり状態ではありますが、体の動きも良くなっています。

将来的には、食事が摂れなくなり衰弱していくと思われますが、減薬するだけでも、元気でいる期間を伸ばすことができました。

(投稿者:斉藤 揚三)

 

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